普段と変わった行動をとることを避ける“現状維持バイアス”。
他に魅力的な選択肢があっても、人は惰性で同じ行動をとり続ける傾向があります。
通信販売の「定期コース」では、そんな現状維持バイアスが活用されています。
定期顧客を新規獲得してリピートしてもらう仕組みについて、具体的な事例を調べました。
通販事業の現場で使われているKPIを新任担当者でも分かるようにまとめました。
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広告でいきなり!「一発定期」のオファーとは?
「定期コースへの転換率を上げるためには?」
今回は↑のテーマのもと見つけた事例を紹介します。
お客様に定期コースに入ってもらうまでで一般的なのは、
「広告」→「初回購入」→「販促」→「定期コース」
というような流れでしょう。
ところが、初回の通常購入(本商品/トライアル)をスキップして、広告からいきなり定期コースに入ってもらう、というパターンが最近よく見られます。
3ヶ月ほど前に弊社のメンバーで図書館に通い、ある地方紙の通販広告を1年分収集・分析する、
という作業を行ったのですが、そこでも定期コースをオファーとする広告が多く見つかりました。
通販事業の現場で使われているKPIを新任担当者でも分かるようにまとめました。
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定期コースのお得感を演出
たとえば、ある健康食品の全5段広告で価格に目をやると、、「1512円」が大きく目に飛び込んできます。
よく読んでみると・・・
通常の価格は1512円ではなく、2000円弱。
そこを、定期購入ならこのお値段。
さらに初回限定で別のサプリをプレゼント。
と、おトク感を感じられるようにして、定期コースに誘導する設計になっています。
また、別の美容サプリでは、↓の表示が。
「8割以上の方がこちらでお申し込みされています!
はじめからおトクな ボーナスコースがオススメです」
ボーナスコースとは、定期コースのこと。
・通常販売価格 :約9000円
・ボーナスコース :約8000円
→ なんと○○円もおトク!(14%引き)
これも割引をインセンティブに定期コースに誘導しています。
広告では大きく表示しなくても、インバウンドで電話を受けたとき、割引や送料無料、特典などをつけて、オペレーターから薦める会社もありますね。
さらにこんなオファーのチラシも見つけました。
通販事業の現場で使われているKPIを新任担当者でも分かるようにまとめました。
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「初回無料!」のカラクリは?
「大好評!なんと今なら 1 箱 7350 円が無料でお試しいただけます。」
「えっ、本商品がタダ!?」とこれもよくよく読んでみると、以下のただし書きが。
「今なら一旦、定期購入のお申し込みをいただくと、初回 1 ヶ月分 1 箱を無料でお届けしております。」
・それ以降は有料だが、キャンセルがない場合は、無料お届けの 1 ヵ月後から、自動的に毎月 1 箱をお届け
・ただし、お試し中に次からは必要ないと思った場合は、定期購入のキャンセルが簡単にできる
という仕組みです。
このオファー、初めてみたとき浮かんできたのは、
「初回にタダでもらうだけもらってすぐにやめてしまうお客様も多いのでは?」
という心配。
でもこの広告、新聞掲載、チラシと最近よく見かけるなかで、私が見たときは、オファーはいつも同じ。
ということは・・・?
通販事業の現場で使われているKPIを新任担当者でも分かるようにまとめました。
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人間の惰性、“現状維持バイアス”を利用
このときに、「あっ!」と一人納得して思い浮かべたのは、人間が生来的に持つ、「現状維持バイアス」です。
「現状維持バイアス」とは、今がとりわけ嫌な状態でない限り、あえて普段と変わった行動をとるのを回避する、という傾向のこと。
ランチを迷っても、結局いつもと同じ店に行ったり、携帯電話も、別の会社が安いと知りつつ、乗り換えなかったり…
皆さんも思い当たるかもしれませんね。
↑のように日常の些細な出来事だけではなく、たとえば損害保険の契約のように非常に大事な場面でも、この“惰性”が働くことが知られています。
米国の「RCオート」という会社で実際にあった話なのですが、保険料や割戻金について、A州では規定a、B州では規定b、と別々の規定が、初期条件では設定されていました。
ただし、一度契約した後は、規定a・bの切り替えは自由。
A州でも、規定bが有利に働く人はたくさんいるはずなのに…
大多数の人たちが切り替え要求は出さないで、デフォルトの規定のままでいた、というのです。
(「経済は感情で動く」 マッテオ・モッテルリーニより)
通販事業の現場で使われているKPIを新任担当者でも分かるようにまとめました。
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定期コースの心理的ハードルを下げる
今までの話を逆の角度から見ると…
知らない会社の広告から、新しい商品にお金を出すという行動をとってもらうためには、この「現状維持バイアス」を打破しなければいけません。
ましてや、定期コースとなると、自分に合うか分からないものを、買い続けなければいけない、という高いハードルが。
そのときに有効になるのが、心理的なハードルをできるだけ低くすることでしょう。
先のチラシでは、リスクがないことを強調する文言が、随所に散りばめられています。
「ご負担なしで 1 ヶ月お試しいただけるチャンスです」
「回数の制限はありませんので、ご安心ください」
「購入を促す営業電話など当社は一切いたしません」
広告から定期コースに入ってもらう「一発定期」。
そのためには、お客様に心理的ハードルを感じられない工夫が大事になるのかもしれないですね。
通販事業の現場で使われているKPIを新任担当者でも分かるようにまとめました。
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