自分の行動を一貫したものにしたいと思う、「一貫性の原理」。
この心理学の法則を、販売やマーケティングに応用して成果を挙げる事例が増えています。
古典的名著「影響力の武器」にも掲載されている実験や、現代の日本のECでLTVが高まった事例などレポートします。
目次
訪問販売で、クーリングオフを激減させた工夫
米国にあった、訪問販売の会社の話です。
訪問販売業界では、お客様による“契約破棄”に悩まされていました。
「クーリングオフ」の制度が、訪問販売には適用されます。
お客様がある商品を購入しても、そのあと数日間は契約を破棄して代金を全額返却してもらえることが認められていたのです。
そこで、この問題を見事に解決する、ある方法が考え出されました。
それは・・・
「契約書を、販売員ではなく、お客様自身に書いてもらう」
という、ほんの小さな単純な工夫でした。
たったそれだけで・・・
契約破棄の割合が劇的に減ったというのです。
なぜ、このようなことが起こるのでしょうか?
これには、人間心理に潜む「一貫性の原理」が影響しています。
自分で言ったことに縛られてしまう、という不思議
「一貫性の原理」とは、 自分の言葉や態度、行動などを一貫したものにしたいという欲求にしたがって、人が行動する傾向のことです。
「一度言い出したので、引っ込みがつかなくなってしまった…」
という経験はないでしょうか?
人は、自分で言ったことには、一貫性を保とうとして、知らず知らずに縛られてしまう傾向があります。
これを利用した例として、たとえば投票日前に市民に電話をかけて、自分が投票に行くかを予測させることによって、選挙の投票率を高めることに成功した、などの実験もあります。
(出典:「影響力の武器」 ロバート・R・チャルディーニ)
この心理法則は、行動を含むコミットメントをしてしまうと、より強力に機能します。
自分の考えを書いたり、行動に移したりしたときに、人間はそれに見合うような振る舞いをしてしまうのです。
○○してくれたお客様は、LTVが2.5倍に!
この「一貫性の原理」、通販でも利用できる局面はないか…?
と考えていたときに、ある会社様から興味深い事例を伺ったので、許可をいただいて共有させていただきます。
その会社様では、お客様へのアンケートをECサイト上で回答してもらえるようにしています。
このアンケート自体はお客様のナマの声を集めるために実施していますが、思わぬ副産物が生まれました。
アンケートに回答してくれたお客様のLTVが、高くなっていたのです。
通常のお客様のLTVが約1万2千円だったところ、アンケートに記入したお客様の場合、約3万円にも。
ここからは私の推測ですが、お礼つきとなれば特に、アンケートには、商品や会社について良い側面、好きなところにより焦点を当てて書くもの。
書くという行為が“コミットメント”となり、知らず知らずに、その商品を「これからも使おう」という信念が強化されてしまったのかもしれません。
“お友達紹介”が、商品への愛着を高めるきっかけに!?
とここまで考えを進めて気づいたのですが…
この“一貫性”と“コミットメント”。
意識されてはいないかもしれませんが、多くの通販会社で実行されていますね。
たとえば、お友達紹介キャンペーン。
これはもちろん、新規顧客獲得のための施策という意味合いが主だと思いますが、逆に、お友達に商品を紹介するお客様にも、プラスの影響がありそうです。
商品をお友達に勧める際には、商品の良さを言葉にして、お客様自身の口から言うことになるでしょう。
これによって、「自分はこの商品を好きなんだ」という信念がますます強化されます。
紹介したお客様自身が、より商品に愛着を持ってくれるきっかけとしての役割を果たしているのかもしれません。
35人分の“お客様の声”が登場する、基礎化粧品の会報誌
また、「お客様の声」を集めるのも、同様に当てはまります。
これも、広告やカタログ等の反応を上げるのに使うのが主な目的でしょうが、商品への思い入れを書いてもらうことが、コミットメントを高めるのにも、一役買っているでしょう。
ある基礎化粧品の会社様の会報誌をめくっていると、お客様に登場してもらうコーナーが随所に。
「おたより掲示板」と題して、お客様から届いた商品への感想が、私の調べた号では35人分も並んでいます。
このように自分の商品への愛着をアピールできる場を用意しておくことも、熱心なファンを生まれやすくするひいてはロイヤル顧客を増やす仕掛けと言えます。
よくここまで沢山のお客様から声が集まるなと感心していたら、お便りを継続的に集める仕組みが…
「体験談大募集!」と大きく告知しているほか、写真付きの体験談の掲載許可をもらえるお客様には、2万円分近くの商品をプレゼントするまでの力の入れようです。
(余談ですが、「○○キッズ」や「愛されペットたち」と題して、自分の子どもやペットの写真を投稿できるページまでありました。。)
と、最後はいつにも増して(?)私の推測となってしまいましたが、、
皆様のご経験からは、いかが思われましたか?
何らかの考えるヒントとしてご活用いただければ幸いです!