化粧品通販企業の顧客ランクとポイント制度を調べたところ、興味深い工夫が見つかりました。
既存顧客がついつい買い続けてしまう鍵は、「累積購入金額によるランクの決定」と「期限による切迫感」。
ある大手通販企業の事例を、行動経済学の観点から考察してレポートします。
300社以上の支援実績からロイヤル顧客を育てる方法をわかりやすくまとめました。
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目次
化粧品会社のポイント還元、お客様の心理は?
さて、前編「「コンコルドの誤謬」行動経済学をマーケティングに応用した、ポイント制度の仕組み」にてご紹介したのは、ポイント制度です。
・1年ごとの購入金額により、顧客のランクが分けられる
・ランクにもとづいて、ポイント率が決まる
・1年間の買い物で、ポイント還元が受けられる
このような仕組みが、化粧品会社などでよく採られています。
たくさんのお金を使って買い物をしたお客様ほど、「その分を取り戻そう」と、ポイント分を使って買い物するインセンティブが働きそうですね。
実はこの傾向、行動経済学という学問によっても裏付けられています。
過去の記事にも載せた、
「経済は感情で動く」(マッテオ・モッテルリーニ)
という本からエピソードを紹介します。
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スキー旅行、払い込んだからには…
あなががスキー旅行の予約をしたとします。
馬鹿にならない金額を既に払いこんでいる。
しかし当日は寒くて風も強く、雪が降っていた。
家を一歩も出たくないのに、もうお金は払ってしまっている。
「さてどうしますか?スキーに行きますか。それとも温かい家で過ごしますか?」
こう聞かれても、スキーに行きますよね。
「せっかくお金を払ったのだから…」
という気持ちが働くと思います。
ここで、1つだけ条件を変えます。
スキー旅行の予約はプレゼントだったとします。
このとき、答えに変化があるかというと…
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これまでの「対価」としての特典の見せ方
多くの人が、家で温かくしているほうを選ぶそうです。
今までお金を払ったかどうかは、その時点では関係ないはずなのに、冷静に考えると奇妙なことですね。
ここで通販に話を戻しまして。
割引やポイントなどをつける際にキーになるのは、その特典を単にもらえるというのではなく、
「自分がお金をかけたからこそ、その対価として特典を受けられるのだ」
と意識してもらうことかもしれません。
となると、冒頭の制度で気になるのが、
「昔はたくさん買っていたけど、今はあまり…」という、
休眠してしまいそうなお客様。
直近1年間をあまり購入せずに、代価を支払っていない彼女たちをつなぎとめておくための仕組みは?
と考えながら調べていたときに、見つけた事例を紹介します。
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「累積購入金額」によってポイント還元が決まる
ある化粧品会社が定めているのは、5つの「会員様クラス」。
「初回ご購入時からのお買い上げ累積金額」で、そのクラスが決まります。
初めは一番下のクラスでも、買い物を重ねるていくとクラスが上がり、ポイント還元のパーセンテージが上がる、という制度です。
これまで20万円以上を使った、最高ランクのお客様にとっては、
「今まで買い続けたから、これだけのポイント還元を受けられる。それなら、この特典を使い続けないともったいない」
という気持ちになってくれそうです!
一方、これだと還元期限がないので、
「○○までにポイントを使わなければ、なくなってしまう!」
という切迫感はありません。
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○○までに買わないと、ランクが落ちる!?
そんなとき、前編の記事で「ついつい買ってしまった」と語っていた女性が、上顧客だった会社のホームページを検索すると…
累積の購入金額でランクが決まるのは、上と同じなのですが、細かい文字で示されるのは、以下のただし書きです。
「※有効期限6ヵ月の間に1度も1回につき税込総額6,000円以上のご注文がなかった場合、1ランク戻ります。」
これなら、半年近く買い物をお休みしていて期限が迫ると、
「せっかく今までたくさん買って割引を受けられるようになったのに、ランクが戻ると、今までみたいな割引額が受けられない。
もったいないから、今買っておこう」
と、決断したくなりますね。
このように、「累積購入金額によるランクの決定」と「期限による切迫感」を両立させる仕組み、考えられた方はとても頭が良いなぁと思いました。
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ポイントが消えるのはもったいない!
ポイントの期限を知らせるため、以下のような販促メールやDMも届きます。
△△様がお持ちの○○ハッピーポイント(□□ポイント)
の期限が、2011年3月31日までとなっております。※有効期限を過ぎると、現在お持ちのポイントが無効に
なってしまいます。ただし、有効期限前までに、
□□で一度でもご購入いただきますと、ポイントの
有効期限が、さらに2012年3月31日まで延長されます。
これまで見てきたように、人間は自分が既に支払ったもの、起こした行動の代償については、「しっかり逃さないように」「使いきろう」という意識が、働いてしまうもの。
ポイント制度以外でも、たとえば電話受注時のアップセルでは、
「このお電話でご注文いただいた限り特別に」
と特典を案内しています。
それぞれ、「ここで特典を受けないともったいない」と感じさせる設計が上手ですね。
(深読みしすぎでしょうか?)
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