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通販EC企業が初めての海外進出先を選ぶときにチェックしたい、5つのポイント

日本の通販・EC企業の海外展開が加速しています。
中国や東南アジア、あるいは米国など、企業によって進出先もさまざまです。

初めて海外に進出する企業は、どのような基準で進出先の国を決めればよいのでしょうか?
進出先選びの5つのチェックポイントを、台湾を選ぶ企業が最近増えている理由とともにお伝えします。

海外進出が加速するウラには、通販市場の構造変化

はじめに、海外進出をする通販・EC企業が増えている理由をお話ししましょう。

 

私たちスタートアジアも、これまでで通販企業約30社の台湾進出をお手伝いしてきましたが、なぜ海外への進出を決断する企業が増えているのでしょうか?
化粧品・健康食品通販を中心に、経営者や通販事業責任者の方100人以上とお話しするなかで共通していたのが、「国内市場の競争激化」です。

 

化粧品・健康食品など「単品リピート通販」市場は、1990年代から2000年代中盤にかけて、規模を急激に拡大しました。
市場の成長とともに、競合の参入も激化。
その結果、たとえば広告の費用対効果も、特に2010年代に入ってから悪化する企業が増えました。

 

「これまではCPO10,000円で新規顧客を獲得できていたところ、5年間で25,000円まで高騰した」「広告投資の回収に、2年近くかかるようになってしまった・・」といった声も伺います。

 

「このままでは、事業の成長は厳しい」と判断した企業は、どのような打開策を模索するのでしょうか?

 

1つ目は、M&A。

広告の効率が悪いなか新規顧客を獲得するのではなく、既に既存顧客のリストを持っている通販会社を買収するという方法です。
ただし、この業界では企業売買のマーケットはまだ未開拓ですし、模索する企業は多いものの成立した案件はまだ多くはありません。

 

2つ目は、ECへのシフト。

まだまだ成長率の高いネット通販市場に、リソースを投入するという方法です。
ただし、競合の多くも同様にデジタルシフトを進めているため、WEB広告のCPAも高騰するなど、長期的には均衡していくと考えられます。

 

そして3つ目が海外展開。
中国や東南アジアなど、経済が成長している市場に新たな活路を求める、という方法です。

 

 

初めての進出する国を選ぶときの、5つのチェックポイント

 

このように海外進出が加速するなかで、はじめての進出先として選ばれることが多いのが、台湾です。
私たちは、これまでで約30社の進出をサポートしてきましたが、これらの企業は進出先を意思決定するために、どのような論点を押さえていたのでしょうか?

 

 

1.日本と同程度の販売価格で売れるか?

 

ほとんどの通販企業は、現地生産・現地販売ではなく、日本からの輸入販売です。
したがって、「日本で販売しているのと近い価格で売れるか?」が収益モデルを左右する変数となります。

 

台湾の物価は、通貨レートや商品にもよりますが日本よりやや安い程度で、大きくは変わりません。
商品によっては、日本の方が安く買えることも少なくありません。

 

日本製品は付加価値も認められやすく、値段が高くても売れる傾向もあります。

 

 

2.一定の市場規模はあるか?

 

不特定多数のお客様に販売する通販ビジネスでは、商品を買えるだけの購買力を持っている顧客層が、一定以上の規模で存在しないと事業が成立しません。
せっかく売れる広告ができても、拡大をするだけの市場規模がないと、初期投資が回収できないからです。

 

台湾の人口は約2,312万人と日本の5分の1程度。 ※1
1人あたりGDPも16,914米$(1$=100円で換算すると約169万円)と日本の約半分です。
平均給与は約42,500元(約15万円)ですが、共働き世帯がほとんどのため、1世帯あたりの年間所得は110万元(約400万円)にも。
購買力のある消費者が、一定の規模で存在しているのが魅力です。

 

※1 統計データはいずれも、2016年3月時点の数値

 

 

3.物流・決済・通信などのインフラは整っているか?

 

通販ビジネスは、物流や決済などのインフラが整っていないと成立しません。
広告で商品が売れたとしても、商品を届けて代金を支払ってもらうまでがきちんと行えるかは、その国の物流・決済の仕組みがスムーズに使えるかに大きく依存するのです。
また、通信環境が整備されていないと、特にECでは大きなハンデとなります。

 

台湾では、郵便局が台湾全土に運送網を敷いているほか、ヤマトや佐川、日本通運などの日系企業も現地パートナーと組んで、宅配網を整備しています。
また、決済は、現在は代引きとクレジットカードが主流です。後払い決済も、GMOなど日系企業が決済網を広げている途中で、今後は期待できるでしょう。

 

通信環境も、総人口2,312万人に対して、携帯電話利用者は2,830万人と100%以上。
ブロードバンドも538万世帯(1,600万人)が加入と普及が進んでいます。

 

インフラ面では、他のアジア諸国と比べても高いレベルで整備されています。

 

 

4.通販というチャネルが普及・成長しているか?

 

通販やECという販売チャネルが、日本ほどは一般的ではない国もなかにはあります。
通販・ECが国民生活のなかで普及していること、今後のの成長が見込めることも、進出がうまくいきやすい条件の1つです。

 

台湾では、「通販」チャネルは昨対比106%で成長。
「ドラッグストア」「百貨店」「便利商店」といった他の小売業よりも、高い成長率を記録しています。

 

EC市場は、約1兆元(=3.7兆円)。
ただしECでも、「楽天」「Yahoo」などモール型の通販が主流で、独自ドメインは多くはありません。
その分、参入の余地があるとも言えるでしょう。

 

 

5. 日本との親和性は高いか?

 

最後に、「日本への好感度は高いか?」「日本語を話せる人材はいるか?」などの日本との親和性もポイントです。
反日感情が強い国では商品が売れにくいこともありますし、日本企業がほとんど進出していなかった地域ではビジネスが円滑に進みにくいこともあります。

 

台湾には、歴史的な背景もあって、日本語を話せるお年寄りが多くいますし、戦後生まれでも約200 万人が何らかの形で日本語を学んでいます。
そのためか台湾人が3人集まれば8割の確率で誰か日本語を話す人がいるという状況で、街にも日本語の看板や商品をよく見かけます。(出典:やさしい日本語ツーリズム研究会
 
世代を問わず、日本人や日本製品への親しみや好感度も高い傾向があります。

 

「日本製」は売れ行きにプラスになっている実感がありますし、現地採用スタッフも日本語を使えるため、日本から異動した社員とのコミュニケーションもスムーズに行えています。
私も5年間、日本にいる頃と変わらないように、ほぼストレスなく生活できており、日本との親和性の高さを感じています。
これまで見てきたように、日系企業にとって通販事業を始めやすい環境が、台湾では揃っていると言えるでしょう。
 
 

補足:中国大陸への足がかりにも

 

2の市場規模について補足すると、さらに魅力的なのは、中国大陸への布石が打てることです。
中国本土への進出は一般的になってきましたが、言語はもちろん商慣習や顧客ニーズ、法令規制などの違いから、不採算や事業撤退などに苦しむ企業も少なくありません。
一方、中国大陸の市場規模の大きさは魅力です。

 

購買動機や特性は、中華圏の人たちは近いので、台湾で売れた場合は、中国でも展開しやすいので、中国大陸やシンガポールや香港などその他の中華圏への進出の足がかりにできます。
私たちが台湾で提携しているパートナー企業も、中国でも事業を展開しているので、進出時にパートナーシップを組めるのもメリットです。

 

 

台湾に進出した化粧品・健康食品企業は、収益を上げられているのか?

 

では、進出した日本企業は収益をあげられているのでしょうか?

私たちは、これまでで日本の通販企業約30社の台湾進出を手がけてきました。
内訳としては、50%は化粧品、40%は健康食品、10%はその他です。

 

化粧品A社:4年間で年商約10億円へ。定期モデルも確立して、急成長

 

化粧品A社は、1年目は7,000万円、2年目・2.3億円、3年目・4.5億円、4年目は10億円と4年間で約14倍へと急成長を遂げています。


・1年目:オフライン媒体を中心に年間7000名を獲得。MR(費用対効果)は平均1.3で推移。

・2年目:さらにWEBチャネルを強化し、年間30,000名の新規獲得。複数本購入モデルから、定期コースによるモデルを構築。

・3年目:定期コースの入会率は平均70%、定期継続率は60%で推移。年間4.5億円を達成。インフォマーシャルなど映像を強化。

・4年目 : 定期コースの入会率は98%を超え、売上の約70%近くが既存顧客による売上となりストック型ビジネス作りが成功。年間10億円を超えて、20億円に向けて芸能人キャスティングやテレビなど映像媒体を強化。
 
 

健康食品B社:2年目で一気に年商3.5億円。原動力は、MR平均2.0と驚異の広告のレスポンス

 

また健康食品B社は、2年目で一気に年商3.5億円へと成長しました。

・1年目:健康食品(衛生商品)を2015年4月から販売開始。WEBを中心としたプロモーションを行い、MR(費用対効果)は平均2.0で推移。

・2年目:WEBにおける初回定期コース施策等、定期入会比率アップの施策と同時に、CRM強化。メディアの拡大。
 
 

化粧品C社:WEBとテレビの連動施策で、売上7.5 億円を達成

 
WEBを中心に順調に新規を獲得していましたが、テレビとの連動施策に勢いを得て2年目の売上は初年度の倍以上となりました。
 

・1年目 : 化粧品(美白美容液)を2016年から販売を開始。WEBを中心にプロモーションを行い、順調に新規顧客を獲得して売上約3億円。

・2年目 : 台湾ならではのテレビ施策とWEBとの連動施策が功を奏し、前年の倍以上の7.5億円の売上を達成。現在は新規獲得とともにCRMにも注力。

 

いまだ台湾が成長市場の中に身を置いている背景から、日本と比べて広告の費用対効果が圧倒的に高いのが特長です。さらに、DMやアウトバウンドなどテストをくり返した結果、リピートによって収益が見込めるようになってきました。
最近では、日本と同様に「定期コース」の事業モデルも確立した企業が現れています。

 

日本の通販・EC企業では先行事例が多くはないなか、思い切って海外へ飛び出すという決断をしたことによって、競合が少ないなか「先行者利益」を得ていると言えるでしょう。

もしあなたの企業が海外進出に関心があるなら、一度台湾を訪れてみてください。
一緒に海外市場へ飛び立つことができるのを、楽しみにしています。

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