店舗を持たないECビジネスでは、カスタマーサポートの重要性は誰もがご存知でしょう。
しかし広告やCRMとは異なり、カスタマーサポートは売上と直結した影響が数字では見られないので、「どこまでコストをかけてよいのか?」とお悩みの経営者の方もいらっしゃるのでは?
売上を伸ばしている企業が、カスタマーサポートに力を入れる理由をお伝えします。
お客様が離脱する理由Top5、把握してますか?
なぜカスタマーサポートを強化すれば、売上が上がるのか?
この問いに答えるために、カスタマーサポートを大事にしていない企業が売上を逃している理由を説明しましょう。
「顧客が逃げる理由」トップは「大切にされていないと感じたから」
2011年にアメリカで発表された調査では、「顧客が逃げる理由」のTOP5が明らかになりました。
1位 自分が企業に相手にされていない、大切にされていないと感じたから(68%)
2位 競争相手に取られた(14%)
2位 商品・サービスに飽きた・不満を感じた(14%)
4位 顧客が引っ越した(3%)
5位 顧客の死去(1%)
離脱理由は「競合」でも「商品」でもなく、「大切にされていないと感じたから」なのですね。
顧客対応が悪かったとき、「他のネットショップで購入を検討する」が91%
続いて、日本のネットショップ利用者へのアンケート調査です。
お客様への「対応が悪かった時、どうしますか?」という質問に「気にせずにショップで購入する」が9%。
対して、「他のショップで購入を検討する」が91%にものぼりました。
お客様が購入前に問い合わせをしたとき、もしカスタマーサポートからメールの返信が遅かったり、電話での会話がぞんざいに感じられてしまったりしたら、その時点でお客様は離れていってしまっているのです。
顧客対応の良い会社の売上が伸びる、3つの理由
これに対して、顧客対応により力を入れている企業では、競合から離れたお客様を吸収して売上を伸ばしていきます。
カスタマーサポートが具体的にどのような局面で、売上アップに貢献しているのか?
3つの理由をみていきましょう。
理由1:定期購入の解約を防止できる
毎月に商品をお届けする定期コース。
導入している企業では、安定した収益源となっていることが多いでしょう。
「定期購入をやめたい」と連絡をくださったお客様に対して、カスタマーサポートが適切な提案をすれば、一定割合で解約を防げることが知られています。
(ある化粧品会社では、1割前後は退会を防止できるとのこと)
健康食品を販売するネットショップでは、定期コースのお客様から解約依頼のメールをもらいました。
海外転勤になるので、その分の数ヶ月間は発送を止めてほしいとのこと。
そこで、このショップでは過去の応対履歴やメール履歴を参照し、定期の中止を承ったうえで、「3本まとめてお送りすることもできます。いかがですか?」という提案の返信をしました。
解約希望のメールに対して、なぜ複数袋のまとめ買いのご提案をしたのか?
それは、過去のコミュニケーション履歴を見たうえで
・商品は好きであるということ
・しばらく海外に行ってしまうこと
の2つを把握していたので、「このままだと途中で足りなくなってしまうのでは?」と仮説立ててお客様にご提案していたのです。
その結果、このお客様はまとめ買いを選択してくださいました。
理由2:CRMが効果的に機能する、土台をつくる
売上を支えてくれる、リピーターのお客様。
リピート購入を促すため商品にチラシを同梱したり、メールやDMを送ったりしているネットショップも多いと思います。
たとえ同じようなメールやDMを送っても、ショップによってレスポンスが大きく異なること、ご存知ですか?
お客様が「また買ってみよう」と思ってくれるかどうか?は、ショップに抱いている「信頼」や「好意」といった感情に左右されます。
米国の心理学者デニス・リーガン博士による実験では、小さな親切(=休憩時間にコーラをあげる)によってあらかじめ被験者に好意を抱いてもらったうえで、ある商品(=チケット)の営業を始めると、販売成績が通常の2倍にアップしたという結果が出ました。
お客様にポジティブな感情を抱いてもらっていれば、販売がしやすくなることが分かりますね。
逆に言えば、どんなに秀逸なメールを送っても、売れる要素を詰め込んだDMを送っても、お客様との関係性ができていなければ反応が獲れないのです。
お客様との関係性づくりと言うと、難しく聞こえるかもしれませんが、日々の地道な活動の積み重ねです。
ステップメールや同梱物、会報誌といった施策によっても影響が与えられますが、CRMで最も強力なのが1対1のコミュニケーション。
先ほど例に挙げた健康食品会社のように、自分のことを分かってくれた提案をされたらいかがでしょうか?
「大切にしてくれている」と感じて、ショップのことを好きになりませんか?
もしメールや電話の対応などで人の温かさや手際の良さを感じたら、お客様はきっとファンになってくれるはずです。
理由3:レビューの評価が高くなる
お客様が購入にあたって参考にするのは、既に購入した他のお客様の「レビュー」や「体験談」。
これらお客様の声が売上にとって重要であることは、マーケティングを緻密に行っている企業ほど理解しているでしょう。
ここに書かれる内容が、実はカスタマーサポートの対応によって変わってきます。
ある化粧品通販企業は、「楽天市場のショップでは、顧客対応一つでレビューの評価が分かりやすく変わる」と明言してくれました。
良い顧客対応すれば、レビュー上がりますが(=信頼性)悪ければ直接クレームを言うのではなく、レビューに書かれたりしますから。
そしてレビューをみてお客様は買うので、それが売上に直結してきます
質が高いカスタマーサポートを実践している会社では、その他にも次のような副次的な効果が現れています。
・顧客アンケートの戻り率が高い
・お友達紹介からの新規購入が多い
・良い口コミが生まれやすい
アメリカの靴のEC企業ザッポスは、カスタマーサポートに力を入れていることで有名ですが、顧客対応に感動したお客様が口コミで広めてくれるので、広告費をかけないで売上を伸ばしてきました。
カスタマーサポートを充実させれば、お客様が良い評判を広めてくれるのです
まとめ:コストセンターではなく投資機会に。課題はシステムや指標管理
これまで見てきたデータ・事例から、カスタマーサポートを充実させている企業には、売上アップのチャンスが生まれることが分かります。
カスタマーサポートを「コストセンター」ととらえる会社が多いかもしれませんが、売上アップのための投資機会ととらえてはいかがでしょうか?
最後に、カスタマーサポートを強化しようとする企業がぶつかる課題、「システム」と「指標(KPI)」について簡単に解説します。
お客様とのやりとりの履歴は、システムで一元管理を
例に挙げた健康食品会社のように、1対1でニーズに合った提案ができるのも、過去の購入履歴や対応履歴がシステム上に蓄積されて、オペレーターにとって分かりやすく確認できるからです。
もしお客様とのやりとりが、問い合わせ管理ツールや各スタッフのメーラーに散在してしまっているなら、一元化して管理できるようにしましょう。
指標(KPI)を設定して、スタッフの対応状況を“見える化”
カスタマーサポートには、レスポンス率やLTVなど売上に直結する一般的な指標がありません。
しかし、問い合わせへの対応漏れが発生してしまえばお客様の印象は悪くなりますし、返信までのスピードが早いほど顧客満足が高まるでしょう。
日々の業務レベルで、「対応時間」や「件数」などを管理していきましょう。
スタッフごとに対応時間を記録
「またこのショップで買いたい」とお客様に思ってもらえるよう、お客様と強いつながりを持つカスタマーサポートを目指してください。