BtoCビジネスでも、近年導入が進んでいるマーケティングオートメーション(MA)。化粧品通販・金融サービス・食材宅配ECといった、サブスクリプション・月額課金モデルでの活用事例をまとめました。
化粧品通販:メール配信の生産性がアップ
マーケティングオートメーション(以後MA)の導入によって、効率的に実現できるのが“顧客起点”のコミュニケーション。
“顧客起点”で代表的なのが、単品リピート通販(定期通販)業界ではMAの普及前から取り組まれている「ステップメール」です。
たとえば、化粧品のトライアルセットを購入したお客様に、「初回購入から3日後」にメールを送ります。
「商品は無事お手元に届きましたか?」「●●な使い方で、ぜひ試してみてください」など、商品の使用を促し定期購入を働きかけます。
MAツール「カスタマーリングス」の導入によって、ステップメールなどの配信業務やテスト改善作業の生産性を改善したのが、「マナラ化粧品」で有名な株式会社ランクアップの事例です。
手作業に頼っていた配信作業の自動化が進み、その結果、PDCAを回していけるようになりました。
(MAの)導入以前はWEBまわりの仕組み化が遅れていました。
メール配信にしてもシステム部で対象者の条件を作って抽出、配信ソフトに登録し、担当者がコンテンツを入れ込んでからテスト配信。
最後に震える指で送信ボタンを押す(笑)すべて手作業の世界でした。
「1本のメールを送るのに、1日かかっていた」という作業量がゼロになった結果、テストする施策の回数を増やせるように。
導入前は十分に行えていなかった効果測定についても、開封率やクリック率、コンバージョン率などの数値も、ダッシュボードで自動的に共有できるようになりました。
化粧品や健康食品など定期通販では、ほとんどの企業がステップメールを実施しています。
しかし、テストをして継続的にPDCAを回したり、複数商品やフェーズに合わせて設定したりなどは、工数もかかり難しいもの。
メールの配信設定やテストにかかる工数を削減しながら、短いスパンで効率的にPDCAを回していくために、MAツールが貢献しました。
金融サービス:会員登録時の離脱率が5分の1に
2つ目が金融サービスでの導入事例、「オンライン登録のCV率をMAでグッと上げたコツって何ですか?/お金のデザインの森山裕之さんに聞いてきた」です。
「ロボアドバイザー」(AI?)を活用した資産運用サービスを提供する同社は、WEBでの申し込みから会員登録まで「4つのハードル」に悩んでいたと言います。
1つ目は、本人確認書類等のWEB上での申し込み。
住所が違ったり免許の住所が更新されていなかったりなど、20%の記入ミスがあります。
2つ目は、書類の郵送。
書留を受け取ってもらえずに、10%くらいが落ちます。
3つ目は、マイナンバー。
マイナンバーがどこにあるのか分からないなどの理由で、50%が離脱。
4つ目は、入金。
「そのうち」と振り込みをしないままで、30%が離脱していました。
このように4つのプロセスで、WEB申し込みをした顧客も落ちていってしまい、最終的に会員登録まで至る割合が低くなってしまっていました。
そこで離脱率を改善するために、MAツール「Marketo(マルケト)」を導入。
たとえば資料を郵便で送ると、発送日に「今日送りましたよ」、その2日後に「到着します。郵便追跡サービスがあります」とメール。
さらに、「そろそろ届きましたか?」「もし受け取っていないようでしたら、不在票はありませんでしたか?」と再びメールします。
これらのきめ細かな施策の結果、郵便の受け取りで10%あった離脱率が、2%にまで下がりました。
「会員登録時の離脱を防ぐ」という地味ながらも売上に直結する課題に、MAツールを導入して成功した事例です。
食材宅配EC:定期購入の解約率が改善
3つ目の事例は、食材宅配EC事業を展開するオイシックス。
「オイシックス流MAレシピを大公開 「顧客視点」のコミュニケーションを実現するための施策デザインとは」をご覧ください。
MAツール「Cross-Channel Marketing Platform」(以下、CCMP)を導入しての、分かりやすい施策として取り上げられていたのは「変更し忘れ通知」でした。
有機野菜などが毎週届く定期宅配サービスを利用している定期会員向けに、毎週木曜日に季節のおすすめ商品や人気商品の提案を行っています。
会員は提案された商品から吟味して、締切り期限までに注文を確定させます。
(参考)「オイシックスが語る、真の顧客視点に基づいたコミュニケーション設計~カスタマージャーニーに潜む落とし穴」
ただ、このプロセスが顧客満足度の低下につながっていました。
うっかり注文を変更し忘れた会員には、そのまま提案した商品が届くため、苦手なものが入っていたり、すでに購入済みのものと重複したりとミスマッチが生じてしまうからです。
これまでオイシックスはこの事態を防ぐため、締切り前にPCでのメールやSMSを利用して通知を行っていたが、開封したときにはすでに締切りをすぎていたり、そもそも開封されなかったりといった課題があった。
そこで、MAツールを活用して、変更期日の2日前までに変更やキャンセルがないサービス利用者に対してLINEで知らせるサービスを開始。
メッセージへの反応率が高まり、解約率の高さという課題を解決できたそうです。
過剰なおもてなしをMAで自動化するのではなく、お客様が『困った』と感じる状況を打開することに重点を置きました。
企業がMAを通じて目指すべきは「お客様の『困った』と『会社の課題』を同時に解決するコミュニケーションなのです。
今回は、化粧品通販・金融サービス・食材宅配ECと3つの業種でのMA活用事例をご紹介しました。
BtoCビジネスでも、商品点数の多いカタログ通販のような業態と、同じ商品をくり返し購入する定期通販・サブスクリプションモデルとでは、CRMの成功パターンも異なります。
(参考)単品通販で、MA(マーケティングオートメーション)を導入する前に、要チェック!3つの視点
MAツールの導入を、あなたのビジネスの重要なKPIの改善に直結させるため、ご紹介した事例が役立つように願っております。