21世紀初頭、テレビ通販で一世を風靡した「ビリーズブートキャンプ」。
そんな大ヒット商品を輩出した通販企業(ショップジャパン)ですが、ブームの終焉後には売上が伸び悩んでいた時期もあったそうです。
売れ筋の商品をカタログに載せて送っても、売上が思ったようには伸びない。
そんなとき、販売データを分析してカタログのリニューアルを断行することにしました。
300社以上の支援実績からロイヤル顧客を育てる方法をわかりやすくまとめました。
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目次
あの大ヒット商品から数年後・・販売会社で起こっていたこと
今から約8年前、ある商品がテレビ通販を席巻した一大ブームとなっていたのを覚えていらっしゃるでしょうか。
「ビリーズブートキャンプ」
その大ヒットで有名な「ショップ・ジャパン」を舞台にした本があります。
「ロングセラーを呼ぶマーケティング」(ハリー・A・ヒル、幻冬舎)
この本には、「ビリー以後」に同社がヒット商品を継続的に企画・開発して、売上を高めていった軌跡が描かれていて面白かったのですが、そのなかの事例を一つ。
ショップジャパンでは、テレビショッピングで販売するほかに、売れ筋の商品をカタログに掲載して、会員顧客に郵送していました。
そのカタログが、お客様からのご要望に応えていくうちに、リニューアルを重ねて、ページ数も増えていきます。
カタログが厚くなるのに比例して売上も伸びていく一方で、1ページ当たりの売上はそれほど伸びてはいなかったそうです。
■ カタログの掲載商品を4分の1まで減らしたら、売上は? ■
ページが増える分だけ、企画・制作や印刷・発送、問合せやクレーム対応などのコストも増えていったのでしょう。
では、どうしたか?
カタログのページ数を減らしたのです。
根拠となったのは、販売データを分析して分かった“売れ筋”の傾向でした。
・よく売れているのは、他社でも取り扱っている商品ではなく、ショップジャパンだけが販売している商品だったこと
・また商品説明に多くの誌面を割いている商品の売上が高い傾向にあったこと
「お客さまが本当に求めている商品は、ショップジャパンでしか買えないものであり、またその商品紹介もストーリーをもってきちんと伝えることができればお客さまの共感を生み、割引価格でご購入いただけるので満足していただけるのではないか。」(同書69ページより)
そんな仮説をもとに、掲載アイテム数を134から32へと思い切って減らすことにしました。
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1商品当たりの売上が、約4倍に!
すると、商品のストーリーを一つひとつ丁寧にお伝えしたのもあり、1商品当たりの売上が約4倍に伸びたそうです。
もちろん商品数も約4分の1に減っているので、単純計算で推測すると、売上はほぼ横ばいです。
一方、商品数を減らしてカタログが薄くなるとその分制作費や印刷費なども削減できて、また商品ごとの問合せ対応などのコストも減ります。
つまり、商品の掲載数を減らすというそれだけの工夫で、カタログの収益性アップを実現できたのです。
売る商品を減らすと、お客様も買いたいと思う商品が減るので、
「その分、売上は下がってしまうのではないか?」
という怖さもあると思います。
では、商品数の減少を1商品あたりの売上アップでカバーできたのは、どうしてでしょうか?
■ 「選択肢が多すぎると、売れなくなる」を裏付ける、心理学実験 ■
このブログの長い読者の方なら、覚えていらっしゃるかもしれません。
心理学の世界では有名な、「ジャム実験」です。
高級スーパーマーケットのなかに、2箇所の試食コーナーを設けて、そのうち1ヶ所には6種類のジャム、もう1ヶ所には24種類のジャムを並べました。
それぞれジャムを買ってくれたお客様の比率(=店舗における「レスポンス率」と読み替えてもよいかもしれません)は、どのように変化したでしょうか?
・24種類:3%
・6種類:30%
と6種類しか置かなかった方が、購入者の比率が大幅に増えたのです。
(出典:Iyenger&Lepper(2000))
お客様の頭の中で選択肢が多くなりすぎると、何を選べばよいのか迷ったり、考えるのが煩わしくなったりして、結果的に選べなくなってしまうのです。
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化粧品・健康食品のクロスセルの設計に応用すると・・?
今回ご紹介した事例は、多品種を取り扱うテレビ&カタログ通販の事例なので、もちろん単品リピート通販に、そのまま当てはまらないでしょう。
一方、単品で伸びた会社も規模が大きくなると、たとえば健康食品なら、複数の成分や原料など使って、いくつかの商品を展開されていると思います。
また化粧品を販売されている会社なら、洗顔や化粧水、美容液、ファンデーションへと、ラインアップを展開している会社も多いでしょう。
各社の商品を購入して、郵送やメールなどで送られている販促物を見ていると、
・メインで販売している商品と、その他商品一覧とのバランス
・どこまでの商品を、DMやカタログで紹介するか?
・初回購入の顧客と、休眠顧客でコミュニケーションを変えるか?
など、商品点数が増えるにつれて、クロスセルの設計を工夫されているのが分かります。
そんなときに、お客様の脳内で「選択肢を増やしすぎない」ことを思い出していただけたら、有益なヒントになるかもしれません。
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通販黎明期の伝説の仕掛人から学ぶ、「小売の説得術」
では、どんな考え方で紹介する商品を絞り込んで決めればよいのか?
最後に、こちらも数々の伝説的なヒット商品の仕掛け人、「通販生活」の創業者のカタログづくりへの考え方を、紹介して締めさせていただきます。
「一人ひとりの消費者の微妙な好みの差異にはこたえられないかわりに、商品の本質的な価値において、
『私が消費者ならこれを選ぶ』と思える1機種を推薦する。
紹介するのではない、推薦するのである。
陳列するのではない、説得するのである。」
(出典:「通信販売は小売を変える 」斉藤駿、自由國民社)
「あなたにかわってこれを選んであげたぞ、その理由はかくかくしかじかだ」
というメッセージを編集するカタログ。
昔々のよろず雑貨店の店主に、 なじみのお客が「どれがいいかね」と選択権をあずけるような信頼関係をたとえに、販売者と顧客の関係を説明しています。
(ちなみに↑の本も面白いので、お時間あるときに読まれるとよいかもしれません。)
長くなりましたが、少しでもご参考になりましたら幸いです!
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