「やずや」や「オイシックス」など、現在では通販・EC業界で有名な売上上位企業にも、スタートアップの時期はありました。
これらの企業は、どうやって事業を成功させたのでしょうか?
立ち上げから成長への軌跡が生々しく描かれているオススメの本を5冊選んで、ご紹介します。
これから通販・EC分野で起業や新規事業を考えている方など、ぜひ参考にしていただけると嬉しいです。
通販事業の現場で使われているKPIを新任担当者でも分かるようにまとめました。
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目次
あの「やずや」も、夫婦2人で自宅兼事務所からスタート
「香醋」や「にんにく卵黄」など数々のヒット商品を世に出した、株式会社やずや(本社:福岡県福岡市)。
健康食品通販の代名詞のようにも言われる伝説の企業も、初期の従業員は夫婦2人、自宅兼事務所からのスタートでした。
事業立ち上げ時の苦労から成長の秘訣を、創業者ご夫妻へのインタビューから解き明かしているのが、「創業者夫婦が初めて語る『やずや』の秘密」です。
元々は健康食品の訪問販売なども手がけていた同社ですが、1980年代後半に広告宣伝を本格的に開始。
通信販売へと事業の舵を切っていきます。
・健康食品ビジネスが今よりも「うさんくさい」と見られていたなかで、フォーカスすることにした迷いと決断。
・顧客ターゲットを、「不健康派」(=薬を飲んだり病院に行ったりするほどではないけど、40代を超えて健康診断に引っかかるような方)に定めたこと。
薬と競合する「虚弱派」や、医者と競合する「闘病派」には手を出さなかったこと。
・折込チラシの費用とレスポンス率をテスト。経費と回収のバランスなど、商売のコツが走りながら分かってきたこと。
売上が1年間で3倍!1億8千万円に成長。
など、通販事業の成長初期のエピソードや経営者の心境がありありと描かれていて、敬服しながら読みました。
本の最後には、往年の「にんにく卵黄」の広告コピーまで載っていて、こちらもコピーライターとして勉強になりました。
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「女優肌」が大ヒットするまでの、“生みの苦しみ”
2000年代中頃に「女優肌」で一世を風靡した化粧品ブランド、エクスボーテ。
800万人が体験したという大ヒット商品が売れ始めるまでの、“生みの苦しみ”を描いているのが、「通販ビジネスはなぜ資金(おかね)がないほど成功するのか」(北野泰良、ぱる出版)
株式会社マードゥレクス(本社:東京都渋谷区)の創業者が、化粧品通販にたどり着くまでの苦労と、商品開発や広告宣伝などビジネスの拡大法を語っています。
テレビ通販番組への卸売りを主力事業としていた同社が、直販ビジネスを軌道に乗せるまでの試行錯誤が描かれていますが、なかでも参考になったのが、「女優肌」という強力なキャッチコピーが生まれるまでの道のりでした。
著者がファンデーションの広告を作ったとき、初めて書いたキャッチコピーが、①「ハイビジョン撮影用に開発!乳液・下地不要のリキッドファンデーション」。
そこから、②「女優やアナウンサーの愛用ファンデ 小じわ、シミ、毛穴を高カバーするのにナチュラルな仕上がり」へと変化。
さらに、③「凛とした美しさ、魅せたくなる肌へ ハイビジョン撮影用に開発された『女優肌』ファンデーション」へとコピーを改良することで、レスポンスが上がっていったそうです。
カメラのアップにも耐える女優のようにキレイになれる、という“女優肌”のコンセプト。
「女優」というモチーフを出すことで、広告を読む人の潜在イメージに訴えかけられたのでしょう。
「自分が伝えたい意味は、相手の心情・感情・記憶・経験といったものを呼び起こすほうが、よりリアルに伝わるんだ。」
著者が先輩から教わったという売れるコピーを書くうえでの心構えが、印象に残りました。
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「金なし、学なし、人脈なし」の起業から、健食通販売上全国2位へ。えがお経営
「肝油」や「黒酢」など人気商品を売り出し、「健康食品の通信販売業で売上高全国第2位」(2015年当時)の実績を誇る、株式会社えがお(本社:熊本県熊本市)。
母子家庭で育ったという創業者が、「金なし、学なし、人脈なし」から1989年に起業。
年商200億円超えまで成長するまでの泥臭い道のりが描かれているのが、「えがお経営」(北野忠男、幻冬舎 )です。
電話でのセールストークや広告の出し方など、具体的なマーケティングの方法論もつづられていますが、私にとって特に学びになったのが人材マネジメント。
「組織マネジメントの根幹にあるのは『価値観』」という言葉でした。
同社のコールセンターでは、通電時間に関する基準を設けず、営業目標の数字も課していないそうです。
それでも高いリピート率を実現し、収益に貢献している柱にあるのは、「全ての人々に健康と笑顔を創造し、幸せな社会づくりへ貢献する」という価値観。
“社長室の額ぶち”に飾られているのではなく、評価の仕組みなどを通じて社員一人ひとりに浸透しているから、というのです。
広告表現はじめ“売り方”だけでは、競合と圧倒的な差をつけるのが難しくなってきた今だからこそ、競争優位となるのはお客様と接する「人」、そして人を育てる組織文化や風土なのかもしれません。
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事業の成長とワークライフバランスを両立させた、マナラ化粧品
“ホットクレンジングゲル”などでおなじみの、マナラ化粧品。
販売する株式会社ランクアップ(本社:東京都中央区)は、「10年連続売上アップ」「年商75億円達成(2015年9月期)」という成長を成し遂げました。
その創業社長が、主に人材・マネジメント面での試行錯誤をつづったのが、「ほとんどの社員が17時に帰る10年連続右肩上がりの会社」(岩崎裕美子、クロスメディア・パブリッシング)です。
「『離職率100%、定時は終電』の 元超ブラック企業の取締役がつくった超ホワイト企業」という強烈な売り文句とともに明かされるのが、同社の創業からの内幕。
「産休・育休を取得した社員の職場復帰率は100%」「ここ3年間の離職率はゼロ」という同社。
短時間で成果を挙げるための業務の工夫や、ワークライフバランス推進のための補助制度なども勉強になったのですが、私が心に残ったのは、そんな“社員に優しい”会社を実現するまでの泥臭い道のりでした。
強い商品力。そして広告表現。
これら成長の原動力の強化に集中するため、コア業務以外をアウトソーシングしていったこと。
パートナー企業にも理念を共有して、仕事を細切れではなく目的単位で任せていったこと。
煩雑な事務作業をシステム化するため、思い切って開発投資をしたこと。
ワークライフバランスと収益を両立させるまでの、並々ならぬ苦労や試行錯誤が書かれています。「社員の離職に悩んでいる」「良い人材を集めたい」といった経営者やマネージャーの方、お薦めです。
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オイシックス創業期の、「問題を楽しみながら解決する」姿勢
有機野菜などのECで、利用者数100万人突破。
新しい市場をゼロから切り開き、年約202億円(2016年3月期)へと約15年間で急成長したオイシックス株式会社(本社:東京都品川区)。
創業者の生い立ちから仲間との起業、苦しい創業期を乗り越え成長エンジンを創り出した道のりを描くのが、「ライフ・イズ・ベジタブル―オイシックス創業で学んだ仕事に夢中になる8つのヒント」(高島宏平、日本経済新聞出版社)です。
ライフ・イズ・ベジタブル―オイシックス創業で学んだ仕事に夢中になる8つのヒント
創業期は、「売れない・買えない・お金ない」と三重苦。
インターネットからの注文が1日2件しか入らない、農家から信用してもらえず仕入れ先が開拓できない、資金ショートが目前に迫りベンチャーキャピタルを回る。
そんな綱渡りの日々を乗り越えた、問題解決の考え方や姿勢に心を打たれました。
・単純な作業の積み重ねを、イベントで楽しむ
:広告費をかけずに集客するため、相互リンクを増やす。そのために、「相互リンクデイ」を設けて、社内コンペで優勝商品(吉野家3,000円分豪遊)を出す。
・トラブルが発生するたび、テーマソングを決める
:配送センターの突然の廃業。対策ミーティングでは、まずお菓子を買い込んで机の上に広げ、テンションの上がる音楽をかける。長く過酷な状況にそなえ、メンバーが明るくなる仕掛け。
立ち上げ当初、降り掛かる問題だらけの状況で、つらいだけの日々をすごすのはもったいない。
そこで、楽しみながら問題を解いていくことを工夫した、と言います。
真骨頂は、資金調達がうまくいかずに倒産の危機を迎えたとき、著者自身が落ち込み動けなったときの描写。
落ち込んでいる時間はつらいだけで何も生み出さないと気づき、「落ち込む」時間を生活からカットすると決めたそうです。
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市場環境が異なる今でも参考になるのが、問題解決への心構え
やずやにマードゥレクス、えがおやランクアップ、オイシックス。
創業経営者が1代で築き上げた、単品通販・ECの代表的企業の成長エピソードを、この記事では紹介しました。
いずれの本も舞台となっているのは、主に1990年代から2000年代。
通販市場が飛躍的に伸びた、成長期です。
この本に書かれている内容を単純に模倣したとしても、市場環境の異なる現在では、短期的な成功には結びつかないかもしれません。
しかし、参考になるのは問題解決にあたっての考え方。
「商品が売れない」「人がやめていく」「資金が不足する」。
そんな苦境に立ったときに、経営者がどのような心構えで、何にフォーカスして戦略を立て行動するか?
疑似体験ができる教材として、これからECで起業される方、通販事業を伸ばしていきたい方などにはきっと役立つでしょう。
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