化粧品のチラシで、テストによってレスポンスを継続的に高めていった方法を紹介します。1回目のテストでハガキのアンケートや電話でのヒアリングを行い、そこで得たデータを2回目のテストにおける改善に活かしました。
2013年の事例です。
目次
通販限定1,980円トライアルセットの売り方は?
初回の広告テストで、チラシのレスポンスが目標値に及ばない場合もあります。
そんなときに大切なのが、お客様の声を取り入れてクリエイティブを改善していくこと。
1回目のテストでハガキのアンケートや電話でのヒアリングを行い、そこで得たデータを2回目のテストにおける改善に活かして、レスポンスをアップした方法を紹介します。
今回の事例で取り上げるのは、ハリウッドで活躍し、日本のヘアメイクアップアーティストの先駆けとなったT氏が主催するコスメブランド。
広告のオファーは、そのコスメブランドがこだわってつくった、通信販売限定のトライアルキットです。
○商品内容:クレンジングオイル、オールインワンジェル、クリームファンデーション
○価格:初回トライアル価格1,980円
○特長:T氏が主催するプロのアーティスト集団が開発。特にファンデーションは、プロがメイクしたかのような仕上がりに
当初、テレビ出演などでターゲットである40代以上の女性に認知度の高いT氏が主催する会社が開発した商品ということで、「同氏の名前を載せたブランド訴求が強いのでは?」と仮説を立てました。
1回目はビジュアルを「赤」と「白」で比較テスト
2パターンでクリエイティブテスト実施という背景もあり、訴求はこの「T氏ブランド」1つに絞りました。
キーカラーとしていた赤のビジュアルと、識字率の高い白のビジュアルで、広告紙面を作成。ビジュアルテストを行いました。
この2種類の広告紙面を、婦人服系通販カタログに同封して広告実施を行ったところ、A:ビジュアル「赤」:レスポンス率0.26%、B:ビジュアル「白」:レスポンス率0.28%というレスポンスの差が出ました。
どちらも初回クリエイティブテストの目安となる、目標値の80%達成を超えていました。
したがって、よりレスポンスの良い「B」の広告紙面を改善して、2回目のテストを行うことになりました。
ハガキのアンケート欄で、コスメブランドの仮説を検証
ここでポイントになるのは、当初の仮説どおり「T氏」というブランド力で訴求できていたのか?ということです。
この仮説を検証するために、「ハガキのアンケート欄」を付けていました。
2回目以降のテストで紙面改善をより精度高く行うためには、消費者が広告紙面のどの部分に惹かれて購入したのかを知ることが、大きなヒントになります。
そのためにできる1つ目の工夫が、チラシについている注文用ハガキの中に「チラシのどこが気になって注文されましたか?」というアンケートを載せて、消費者の購入理由を探る方法です。
仮説どおりなら、このアンケートの「T氏ブランド」の欄にチェックが入るはずです。
しかし結果は、ほとんどのハガキで「簡単にプロの仕上げ」にチェックが入っており、「当初の仮説が間違っていたのでは?」ということが分かりました。
注文の入電時にコールセンターでヒアリング
そこで、より顧客の生の声を集めるために、注文の入電時にいくつかの質問をさせていただくことに。
「今のお肌の悩みは何ですか?」「チラシのどの部分が気になりましたか?」「商品のお値段はどう思いましたか?」というような質問をしました。
その結果分かったのは、消費者はこのブランドの商品が欲しいということは大前提で、プロのメイクアップアーティストが顧客の視点で開発した化粧品だからこそ「簡単にプロが仕上げたようなメイクができる」ことに、より魅力を感じて購入している、ということでした。
また調べてみると購入層も当初想定していたよりも10歳ほど高い50〜60代でした。
この年代は、シミやシワなどの肌悩みを、ファンデーションでしっかりカバーしたい層だと判明しました。
2回目のテストでは、キャッチコピーと広告表現を改善
そこで2回目のテストでは、ハガキのアンケートや電話のヒアリングからわかったことを反映し、広告紙面を改善しました。
キャッチコピーを「C:キャッチコピー変更版」のように変更し、Bをコントロール版としてクリエイティブテストを行いました。
キャッチコピーのなかで、より消費者に響いているキャッチコピーを大きく出し、強調するという改善を行いました。
すると、B(前回と同じ広告紙面)<C(改善した広告紙面)という結果になり、レスポンスを比較すると、なんと148%まで差が付きました。
つまり、ハガキのアンケートや電話でのヒアリングで得た消費者の声を取り入れて、コピーを変更しただけで、約1.5倍のレスポンスの差が出たのです。
「消費者が何を求めて商品を購入しているのか」を知ることが、効率よく広告紙面を改善していくヒントになるという事例です。
※本記事は、「通販マーケティング-売れるチラシ入門-」(木村真子、東洋経済新報社)の一部を編集・抜粋のうえ掲載しています。