行動経済学・心理学をマーケティングに活かしたい方へ、お薦め本3冊

人の行動に影響を与える要因を、科学的に実証している「行動経済学」や「心理学」。マーケティングにおいても、「LPのコンバージョン率アップ」や「定期顧客の離脱率改善」などに応用され、注目が集まっています。初心者の方のために、お薦めの本を3冊ご紹介します。

「経済は感情で動く : はじめての行動経済学」

 

トップバッターは、「経済は感情で動く : はじめての行動経済学」。
行動経済学を基礎から学びたい方に、まずお薦めの1冊です。

 

 

「損失回避の原則」や「アンカリング」、「保有効果」に「自己一貫性」、「フレーミング」など、定番として挙げられることが多いトピックをひととおり押さえ、事例や実験結果とともに基礎から解説しています。

 

同書を貫くテーマは、人間が非合理な意思決定をしてしまうプロセスを、解き明かすこと。
初めて読んだ時、私が衝撃を受けたのは次の実験結果でした。

 

あなたはMP3 プレーヤーを買おうとしている。
ある店の前を通ると、人気のあるソニーのプレーヤーがバーゲンで16,000円の安値になっていることがわかった。
それなら定価よりかなり安い。さてどうしますか?

 

選択肢は、「ソニーを買う」と「他のモデルについても知ろうとする」の2つ。
アメリカの大学生を対象とした実験では、3分の2の学生がソニーを買うと答えました。

 

 

しかし今度は、ソニーだけでなく別のブランドも店頭に並びました。
サムスン製で品質も上々なモデルが、26,000円で安売りされています。

 

選択肢は、「ソニーを買う」と「他のモデルについても知ろうとする」「サムスンを買う」の3つに増えます。
このケースでは、「ソニーを買う」は4分の1にとどまり、「サムスンを買う」も同じく4分の1。
残りの2分の1が、どちらも購入をしないと回答
しました。
(個人的には、ソニー製品が相対的に安く見られているのが残念ですが)

 

 

この実験から確かめられたのは、うまいチャンスが1つではなく2つになると、判断を先延ばしにしてしまう場合があるということ。
すなわち“迷い”によって、結局は購入に至らないケースが増えてしまうのです。

 

「さらに実験を重ねた結果、選択肢の数が増えるにつれて、判断を先延ばしにする傾向が強まることがわかった」とのこと。
判断するときの葛藤が深まると、しまいに判断力が衰えると結論付けています。

 

 

このように実験結果を交えて、行動経済学の基礎をできるだけ易しく解説しています。
難解な単語や学術的な表現などはほとんど使わずに、とにかく気軽に読めるように工夫されているのもお薦めなポイントです。

 

 

「影響力の武器 実践編―「イエス!」を引き出す50の秘訣」

 

続いて紹介するのは、有名な「影響力の武器」シリーズ。
2作目の、「影響力の武器 実践編―「イエス!」を引き出す50の秘訣」です。

 

 

 

シリーズ1作目「影響力の武器」では、“人や組織から同意と承諾を得る方法”を6つの原理から紹介されていて、古典とも言えるくらい、難点は全496ページと分量が多く、初心者には“とっつきにくい”こと。

 

2作目の本書は、全288ページとコンパクトに。
1つのトピックにつき数ページずつ、50の章に分けて初心者にも読みやすい
のが特長です。

 

 

個人的にもっとも面白く、蛍光ペンで引いた線がたくさん残っていたのが、「一貫性」を扱った第14〜19章。
特に、「安全運転の看板を、家の庭に立てさせてほしい」という無茶な依頼を承諾してもらうための実験結果には驚きました。

 

ある日、地元の交通安全協会の人が訪ねてきて、「安全運転で安心な町作り」キャンペーンのために、「安全運転」と書かれた大きな看板をあなたの家の前庭に立てさせてほしいと頼んできました。
こちらの作業員が支柱の穴掘り作業などを全部やるので心配無用と言われたものの、あなたは不安です。

 

社会心理学者たちの実験結果では、高級住宅街では要請を受け入れた世帯は17%としかなかった、とのこと。
ところが、1つだけある行為をこの要請に追加しただけで、依頼への承諾率が76%と4倍以上にもはね上がったのです。

 

実は、承諾率が高かったグループには看板のお願いをする2週間前に、研究助手が別のお願いをしに同じ家庭を訪問していました。
それは、「安全運転しよう」と書かれた小さくて目立たない紙を窓に貼らせてほしい、という簡単な依頼

 

ほとんどの住民は同意してくれたのですが、その2週間後に別のスタッフが立て看板の依頼をしに再度訪れたのです。

 

なぜそんな簡単な要請を加えただけで、それよりはるかに面倒な要請に同意してくれる人が格段に増えたのでしょうか。
それは、住民は一度要請を受け入れると、自分は安全運転キャンペーンのような有意義な運動には熱心にコミット(かかわる)する人間なのだと考えるようになるからなのです。

 

そのため2週間後の訪問時には、「問題意識が高い市民」という自己イメージと一貫性のある行動を取るようになった、ということ。

 

 

このような「一貫性」や「コミットメント」の原理にもとづいたアクションが、「選挙の投票を促す」や「ボランティアへの参加率を上げる」といったさまざまな局面で結果を出した実験結果が述べられています。

 

他にも、「社会的証明の落とし穴」や「恐怖を呼び起こす説得の有効な条件」「名前の類似性がもたらす思わぬ効果」など、興味深い話題をカバー。
私はこの記事を書くために同書を再読しながら、広告やCRMの施策アイデアがたくさん浮かんできました

 

 

「シュガーマンのマーケティング30の法則 お客がモノを買ってしまう心理的トリガーとは」

 

3冊目が、米国のダイレクトマーケティングの大家、ジョセフ・シュガーマン氏が書いた本。
シュガーマンのマーケティング30の法則 お客がモノを買ってしまう心理的トリガーとは」です。

 

 

副題からも分かるとおり、本書はこれまでの2冊とは異なり、マーケティングやセールスの実践的なノウハウが書かれた本。
学問的な裏づけや実験による厳密な検証などはありませんが、著者の実体験をもとに「売る」という観点から、即行動に結びつくヒントを紹介しています。

 

 

たとえば興味深かったのが、自動車のディーラーが「ついで買い」を促す方法について。

 

2冊目でも紹介されていた一貫性の原理が、販売現場で当たり前のように活用されている事例です。

 

セールスマンは本体やオプションの総額を計算し、上司の承認を得て発注書にお客のサインをもらう。
自動車の引き渡し準備のために席を立ちながら、お客に問い掛けるのだ。
「えーと、足回りのコーティングはしときますよね?」
お客は反射的にうなずき、その費用が請求書に書き加えられる。
「それと、お車が汚れないように、フロアマットもお付けしたほうがいいですかね?」

 

このような順番でオプションを薦めると、高い確率で買ってもらえると言います。

 

いったん見込み客が「買う」と決めると、人はその決定に沿った行動を取ろうとします
「その決断を維持しようとする心理が、売り手に有利に働く」というのが、著者の主張です。

 

他にも、「欠点の告知」や「収集欲求」、「理屈による正当化」など、30の“心理的トリガー”を紹介。
カタログ販売やテレビのショッピング番組など通信販売で培ったテクニックを、人間心理から紐解いていきます。

 

 

この記事では、行動経済学や心理学をマーケティングに活かすために有用な本について、3つの異なるタイプを紹介しました。

 

一番興味を惹かれた1冊から、ぜひ読んでみてください。
本で出てきた原理や事例を、あなたが直面している課題に置き換えて考えながら読んでいくと、得るものがいっそう増えるでしょう。