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なぜAirbnbは「お友達紹介」や「レビュー」など口コミで、ユーザーを増やせたのか?心理効果やNPSの活用事例

“民泊”のシェアリングサービスで知られる、「Airbnb」(エアビーアンドビー)。
これまで世の中になかった業態が「2008年の創設以来、累計利用者は 2億人」と急速に広まった原動力として、「お友達紹介」や「レビュー」など口コミが機能したのは、知られています。
その背景に、心理学の法則や新しいKPIがどのように組み込まれているか?を調べました。

通販事業の現場で使われているKPIを新任担当者でも分かるようにまとめました。
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時価総額3兆円超!急成長の原動力は「お友達紹介」や「レビュー」

 

Airbnb(エアビーアンドビー)とは、「部屋や家を貸したい人」と「借りたい人」をWEBやアプリ上でマッチングするサービスです。

 

その業態は「民泊」とも呼ばれ、シェアリングエコノミーの代表例として、この数年間で急速に普及してきました。
旅行や出張で、ホテルではなくAribnbで借りた部屋に宿泊した経験がある方も、いらっしゃるかもしれません。

 

 

このAirbnb、2008年のサービス開始から「累計利用者は 2億人」「登録物件数が400万件」「世界中で毎晩約200万人がAirbnbに滞在」と、10年以内に「世界最大のホテル企業」と称されるくらいまで事業規模を拡大してきました。

 

私が意外に感じたのは、短期間でグロースしたにもかかわらず、広告をメインにした集客ではなかったこと。
ユーザーによる「友人紹介」に力を入れてユーザー数を増やして」きたそうです。

 

 

紹介や口コミと言うと、「広告」や「CRM」といった分野と比べると、成功のための体系的な方法論やノウハウが、あまり蓄積されていないように思えます。

 

そこで、Airbnbがどのような方法論をとってきたのか?を心理学などの観点から調べてみました

 

通販事業の現場で使われているKPIを新任担当者でも分かるようにまとめました。
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紹介や口コミが広まるために、心理効果をいかに活用しているか?

 

私がユーザーとして部屋に泊まったり、同社について書いた記事を調べたりするなかで、浮かび上がってきたポイントが3つありました。

 

 

事例1:紹介特典クーポンのインセンティブ設計

 

1つ目が、紹介特典として贈られるクーポン。

 

「初めてご利用の方限定」で、サービスを利用するとあなた(紹介した方)とお友達(紹介された方)の両方が、割引やクーポンなど特典を受け取るという仕組みです。

 

お友達紹介の促進メールをクリックすると表示されるページ

 

「旅ゴコロを広めよう」友達をAirbnbに招待しよう。新規登録でお友達に¥ 3,500分、初回旅行完了であなたに¥ 1,800分の旅行クーポンをそれぞれプレゼントします。Airbnbを初めてご利用の方限定!

 

Airbnbの紹介プログラムを紹介した記事は多くありますが、私が注目したのは、クーポンの金額がご自身よりお友達の方が、現時点では高くなっていること。
※過去には、ご自身にも同じ3500円分のクーポンをプレゼントしていたようです。

 

もしお客様の心に、景品につられて“お友達を売る”という意識が浮かんでしまうと、それが自然な紹介を生みにくくすることがある」という知見を、かつてご紹介しました。
(参考:「紹介が生まれにくくなる、“お友達紹介”キャンペーン」)

 

このような「賄賂提供型」キャンペーンに対して、薦められるのが「十字軍結成型」。
「お友達を救ってあげる」という訴求をメインにすることで、景品を渡すにしても「友達を売った」という感覚になりにくい、と言います。

 

Airbnbのケースでは、特典の金額がお友達と同じ、もしくはお友達の方が高いことが、紹介しやすい要因として働いているのでしょう。
「旅ゴコロを広めよう」というキャッチコピーも、広告的な観点からは抽象的で分かりにくく思えますが、「旅行の楽しかった思い出を、お友達にも味わってほしい」という、利他的な感情を喚起するのかもしれません。

 

「同じ景品をつけるにしても、景品をもらうのが目的か、お友達を救ってあげるのをメインにするのかで、お客様もモチベーションが変わってくる」(同記事)という原理が、インセンティブの設計や訴求するメッセージに組み込まれているように考えました。

 

 

事例2:良質なレビューを数多く集める仕掛け

 

2つ目が、ユーザーが宿泊する部屋を決めるときに、参考にするレビュー。

 

「いかに数多くのレビューを、そして品質を高く書いてもらうか?」が事業の生命線であることは、「Uber」や「食べログ」など他のマッチングサイトの事例からも、分かるでしょう。

 

私自身も宿泊が終わった後に、Airbnbからメールが届いたのですが、秀逸だったのがその投稿を促す仕掛け
私は普段はマッチングサイトを利用しても、レビューは書かないタイプなのですが、Airbnbでは欠かさずに投稿しています。

 

Airbnbから届いた、レビューの依頼メール

 

最初の“とっかかり”をクリアする、「フットインザドア」効果

 

「●●さん宅の滞在はいかがでしたか?」という質問に、「最悪」「悪い」「OK」「よい」「とてもよい」の5つの選択肢が表示。
スマホでタップ(PCでクリック)するだけで、簡単に答えられるように見えるのです。

 

タップするとWEBブラウザが立ち上がり、アンケートページに遷移。
詳細な質問に答えていく、という流れです。

 

「アンケートに答える」と意識すると、「そんな時間はない」「たくさんの質問は面倒」と感じてしまいがちですね。
ところが、タップするという最初のアクションを起こすことで、「ここまできたついでに」と次の質問にも答えやすくなります。

 

心理学では、「小さなお願いでも、一度でも相手からの承諾を得られれば、その後に続く大きな要求にも承諾してもらいやすくなる」という「フットインザドア」の原理が知られています。
この原理を活用して「書く」ハードルを下げることで、レビュー件数を増やす意図が働いているように考えました。

 

 

「返報性の原理」と「カリギュラ効果」、締め切りまでの14日間に働く心理効果

 

レビューの投稿に締め切りが設けられていることも、「いつか」で後回しにされないために有効でしょう。

 

レビュー提出期間は14日間です。
ホストとゲストのいずれか一方しかレビューを書かなかった場合には、14日の期限終了を待ってレビューは公開されます。

 

さらに「お互いにレビューを投稿するまでは、相手のレビューが見られない」というルールになっています。

 

このルールがないと、もし相手が良いレビューを書いていたら、自分も良いレビューを書かなければいけないような気持ちになってしまいます。
「正直なレビューは、ホストがよりよい体験を提供する参考になります。」ということで、いわゆる「返報性の原理」が働きにくい仕組みになっています。

 

相手がレビューを投稿すると、自分にもその通知は届くのですが「何が書かれているか?」が見えないので、やきもきしてしまいます。
私自身は、この“やきもき”に背中を押されて、レビューを投稿しました。

 

カリギュラ効果」と言って、「禁止」や「制限」によって逆にその行動をついやってみたくなる人間の性向を、十分に理解しているような印象を受けました。

 

 

事例3:NPSで「紹介したいか?」を把握して、売上貢献を可視化

 

3つ目が、「いかに周りに勧めたいか?」を定量的に把握して、検証改善していること。
そのためのKPIとして、「NPS」(ネットプロモターズスコア)という指標を活用しています。

 

NPSとは、「この会社(製品やサービス)を友人や同僚に勧める可能性はどのくらいありますか?」という質問を10段階で顧客に投げかけたうえで、「推奨者」と「批判者」の比率をはかるというもの。
米国では大手企業も含めた導入結果から、業績と相関関係が認められるとして、近年日本でも導入が進んでいます。
 

 

Airbnbでは、「旅が終わった約60万人のゲスト(旅行者)から、NSPを取得することに成功」して、「たったの2%だけが批判者(Detractors)」という良いスコアが出ているそうです。
秀逸なのが、単に数値を取るだけではなく、「NPSの高い顧客が、売上に貢献しているか?」を定量的に分析していること。
(出典:「「紹介」こそ最強のマーケティング戦略 時価総額3兆円超のAirbnbの取り組みの解剖」)

 

・1年以内に再度Airbnbで予約をしたか?
:0〜6点の批判者(Detractors)より10点の推奨者(Promoters)の再予約率は、13%高くなっている

 

・1年以内に紹介プログラムを実行したか?
:0〜6点の批判者(Detractors)より10点の推奨者(Promoters)の紹介率は4%高い

 

という分析結果が公開されていますが、NPSの高さがリピートや紹介につながっていることが、数値で証明されています。

 

また、「部屋のレビューを残してNPSを書かなかったユーザーの再予約率や紹介率は、9点、10点の推奨者(Promoters)と同水準」とのこと。
2で紹介したレビューを書いてもらう工夫も、再予約や紹介に貢献しているかもしれません。

 

紹介の原動力となる好意的なユーザー体験ということで、Airbnbがカスタマーサポート(CS)に力を入れていることは有名です。
「スタートアップ時には、創業者自らがヘッドセットをとって顧客からの電話」をとっていた、といった逸話からもCSへの力の入れ具合が分かりますが、CSの充実→NPSアップ→売上拡大という道筋が描ければ、CSの投資対効果も可視化できそうです。

 

通販事業の現場で使われているKPIを新任担当者でも分かるようにまとめました。
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単品通販やサブスクリプションでも、応用できる?

 

このブログの読者の方に多い、「単品リピート通販」や「サブスクリプション」といったビジネスモデルでは、新規顧客の獲得チャネルは広告が一般的です。

 

一方、CPAが高騰して顧客獲得コストが増えてしまうことにともない、費用をかけずに実施できる紹介や口コミの施策も注目されていますね。
既存顧客のリストが一定数ある会社なら、それなりの規模も期待できるでしょう。

 

Airbnbの事例を見ると、紹介特典の設計やメッセージの訴求、そしてレビューの投稿依頼やルールなど、ユーザー心理を研究しているように見えます。
またNPSという指標を軸に、その効果を定量的に検証して、改善を重ねている跡もうかがえました。

 

これらの工夫は、業態が異なるのでそのままはマネできませんが、ご自身のビジネスモデルや商品に合うように応用できるかもしれませんね。

 

 

今回はご紹介できませんでしたが、予約時に「この部屋は、○%の可能性で24時間以内に予約されます」と緊急性を意識させるメッセージを出していたり、、宿泊前に「○○の滞在を延ばしてみませんか?」とアップセルを働きかけたりなどの工夫も、ユーザーとしてサービスを利用してみることで分かりました。

 

他業種の研究・リサーチや、自身のユーザー体験で見つかったマーケティングのヒントを、今回はお届けしました。
 
通販事業の現場で使われているKPIを新任担当者でも分かるようにまとめました。
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