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カスタマーサポート(CS)を改善したい!経営者・マーケターにお薦めの本3冊

カスタマーサポート(CS)といえば、不特定多数のお客様と接するBtoCの事業モデルでは、顧客接点の最前線を司る重要な機能。

“コールセンター運営”や“スタッフの教育”といった実務レベルでは、さまざまな知見が流通していますが、この記事でお伝えするのは、経営やマーケティングの観点からの捉え方。

「顧客ロイヤルティやLTVの改善に、いかに貢献できるか?」「CSの費用対効果をどのように測るのか?」「事業戦略の観点から、何にリソースを集中するべきか?」といった問いへ答えために、オススメの本を3冊選びました。

「おもてなし」で、顧客ロイヤルティは改善するか?

 

1冊目は、「おもてなし幻想 デジタル時代の顧客満足と収益の関係」。

カスタマーサポートをどのように行えば、顧客ロイヤルティが高まる、あるいは低くなってしまうのか?を、定量的に分析したのが特長です。

 

 

はじめに検証されているのが、「感動サービスが、顧客ロイヤルティを高める」という、リッツカールトンやザッポスに代表される“おもてなし神話”。

10万人近くの顧客へのアンケートデータをもとに分析したところ・・・

 

・期待を上回るサービスを受けた顧客と、期待が満たされただけの顧客では、ロイヤルティにほとんど差がなかった
・まれに本当に顧客を 「感動」させたときでさえ、顧客ロイヤルティが上昇する可能性はたった21%
・むしろカスタマーサポートとやりとりすると、顧客ロイヤルティにネガティブに働く割合がポジティブと比べて4倍高い

 

すなわちカスタマーサポートによる、顧客の“期待の上をいく”や“感動させる”ための努力は、「割りに合わない」という、一般的な固定観念とは180度異なる傾向が、データから導き出されていたのです。
筆者が指摘するのは、「カスタマーサービスの役割は顧客を喜ばせてロイヤルテイを向上させることではなく、顧客のディスロイヤルティを緩和する」こと。

 

顧客の多くは、何か疑問や問題があった時に「WEBサイトで詳しい情報が見つからない」「カスタマーサポートに電話してもつながらない」、さらには「自動音声やマニュアル通りのトークなど画一的な対応をされる」「別の部署へたらい回しにされる」「やはり解決せず再度問い合わせる」といった経験を経て、不満を蓄積していくと言います。

 

そこで有効なのが、「顧客努力の削減」。
すなわち顧客自身が手間をかけず問題を解決できるように、「顧客の望みを邪魔する障害物を取り除く」ことです。

 

顧客努力がそれほどいらない企業は、セルフサービス・チャネルの「有用性」を高めて顧客をそもそも電話せざるを得ない状況に置かないことで、チャネル転換を最小限に抑える。

こうした企業は顧客の好みが近年ライブサービスからセルフサービスへと劇的に変化したことを認識している。

 

わざわざ電話をかけなくてよいように、シンプルで直感的なインターフェースを主にオンラインで整備しているそうです。

日本の通販企業でも、マイページやFAQ、フォームなどを活用して、顧客自身が商品への疑問を解消したり注文変更や手続きできるように、整備している会社も増えていますね。

 

オンラインで自動完結できる割合が高まれば、企業としてもオペレーションコストを削減できるので、投資対効果も高いはず。

デジタルを活用した「セルフサービス化」、カスタマーサポートにおける潮流となるかもしれません。

 

従来は“コストセンター”とも捉えられがちだったカスタマーサポートですが、特にデジタル時代、LTVアップに向け重要性を増しているとも感じました。

 
 

定期収益型ビジネスのCSは、「カスタマーサクセス」へ

 

2冊目が「カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則」(ニック・メータ他)。

「サブスクリプション」はじめ定期収益型ビジネスにフォーカスして、顧客の「成功体験」をつくり、収益に転換するための方法を解説しています。

 

 

著者は、米国のセールスフォース・ドットコム社で、セールスとカスタマーサクセスの責任者を務めていた方。
BtoBメインのITソフトウェアと、単品リピート通販はじめとしたBtoCビジネス。
何が関係あるのか?と疑問を抱いた方もいらっしゃるかもしれません。

 

両者の共通点は、定期収益型のビジネスモデルをとっていること。

 

SalesforceやAdobe Creative Cloudなど、SaaS型のソフトウェア。
NetflixやSpotify、Apple Musicに代表される、音楽・映像配信サービス。
あるいはOisixはじめ食材宅配から、最近ではZOZOTOWNの「おまかせ定期便」まで。

 

「月額課金」や「定期購入」のビジネスモデルが、国内外で広がっていますね。

 

これらの事業モデルでのポイントは、「売ったら終わり」ではなく、「売ってからが始まり」ということ。

すなわち顧客のチャーン(解約)を抑えて、いかにリテンション(継続)を高めるか?アップセルやクロスセルを仕掛けていけるか?です。

 

そのなかで登場してきたのが、「カスタマーサクセス」という概念。

従来型の「カスタマーサービス」と、何が異なるのでしょうか?

 

著者によると、カスタマーサポートで特長的なのが「壊れたら直す」という考え方。

 

カスタマーサポートの主な目的は、殺到する顧客の問題に対応することであり、指標は結局「効率」(完了件数/日/担当者)だ。

それに対して、カスタマーサクセスは、データで予測することで先回りして顧客の困難を回避するものであり、一般的にはリテンション率で測定する。

 

したがってカスタマーサクセスで求められるのは、顧客の継続率や平均単価、あるいはアップセル率といった数値指標を管理しながら、先回りして能動的にアクションを打っていくこと。

従来のカスタマーサポートの機能に加えて、CRMや営業企画の役割も併せ持つような広い概念と、私は捉えました。

 

事業モデルや顧客属性に応じて、ネットフリックスのような「テックタッチ」(例:10ドル /月)から、BtoBメインの「ロータッチ」(例:1万5000ドル/年)・「ハイタッチ」(例:100万ドル/年)と3つのモデルごとに、適切なチャネルや手法を紹介。

WEBやEメールのほか、営業担当者による人的な接触やイベント・ウェビナーの開催、あるいは顧客コミュニティの構築まで、具体的な方法論まで述べられています。

 

製品を通じて顧客に「成功」してもらう、それによって企業と顧客の間に心理ロイヤルティを構築する

それらを数値で管理してPDCAを回していくための方法論は、「CS」という域にはとどまりませんが、マーケティング(特にCRM)との連動を考えている方にとっては、新鮮に映るでしょう。

 

 

「収益に貢献する、顧客サービスとは?」を上流から捉え直す

 

3冊目は、「ハーバード・ビジネススクールが教える 顧客サービス戦略」(フランセス フレイ、アン モリス他)。

「顧客サービス」というテーマを、CSだけでなくオペレーションや人材採用、さらには商品の設計や顧客の絞り込みなど、幅広い視点から捉え直したい方にオススメです。

 

 

顧客と接するスタッフに通常求められるのは、高いレベルのサービス。
一方、筆者が投げかけるのが「顧客がそのために金を払ってくれるのか?」すなわち「サービスが収益に貢献するのか?」という問いです。

 

「あれば嬉しい」という程度のサービスに力を注いだはいいが、それが売上に直結せず、コストを回収できずに終わる。

このような”片思い型奉仕”に陥らず、顧客が重視するポイントで上質なサービスを提供するための鍵は、「それ以外の側面でサービスの質を落とすこと」と言います。

 

「すべてが最高」という考え方には無理があるということである。

あらゆる面で高水準のサービスを提供しようとすれば、ほぼ確実に、精彩を欠いたサービスしか生み出せない

上質なサービスを実現するためには、かならずなにかを犠牲にしなくてはならないからだ。

 

顧客サービスの思い切った絞り込みの事例として登場するのが、米国の銀行「コマースバンク」です。

 

銀行と言えば、アメリカでも「窓口が開くのは平日10:00-16:00のみ」「不機嫌で横柄な事務員」が一般的。

それに対して同社は、「週7日営業(平日は7:30-20:00)」が人気を博し、「アメリカで最も便利な銀行」を呼ばれるように。

株価も1990年代を通じて「20倍にはね上がった」そうですが、その原動力は、意図的に顧客の期待を裏切ったことです。

 

・出店先のすべての地域で、預金金利を最低水準に設定。浮いた資金をサービス拡充に活用。営業時間の利便性を重視する顧客に、フォーカス

・取り扱う金融商品を「当座預金1種類だけ」に。複雑性を排して、業務処理能力に長けた人材や金融知識に詳しい人材の採用が不要に

・代わりに、接客態度が良くサービス精神の高いスタッフを採用。気持ちよく過ごしてもらうことに集中

 

これらの事例から著者が結論づけるのは、卓越したサービスを実現する道は、「なにを上手にやらないかを決める」ことから始まる、ということ。

 

登場する事例は、ダイレクトマーケティングの事業モデルとは異なりますが、さらには商品の設計や顧客の絞り込みなど「顧客サービス」を上流から捉え直すうえでも、きっとヒントが詰まっているはずです。

スタッフの採用難や離職の増加、「働き方改革」にともなう労働時間の削減など、課題を感じている経営者やマネージャーの方にも、参考になるでしょう。