マーケティングの現場でもよく使われる、「ベネフィット」という言葉。“スペック”や“メリット”など類似の概念との違いから、ベネフィットが重要な理由、さらに商品のベネフィットを見つけ出す方法まで解説します。

通販事業の現場で使われているKPIを新任担当者でも分かるようにまとめました。
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「ベネフィット」とは?“スペック”や“メリット”との違いは?
「ベネフィットを明確にする」や「顧客のベネフィットは?」など、マーケティング企画や広告制作における議論では、ベネフィットという言葉がよく出てきますね。
どのような意味で使われているか、ご存知ですか?
“スペック”や“メリット”など、同じように商品の特徴を表す概念とは、何が違うのでしょうか?
一般的にベネフィットは、「顧客が商品やサービスを購入することによって、得られる利益」と定義されることが多いようです。
もう一歩踏み込んで私たちは、商品やサービスを使うことで「ターゲット顧客が、日々の生活で実感できるリアルな幸せ」とベネフィットを捉えています。
中高年女性向けのスキンケア化粧品を例に、具体的に考えてみましょう。
よく化粧品の宣伝文句として出ているのは、「コラーゲンが5000mg」や「セラミドの配合量を3倍にアップ」といった成分について。
これらの具体的な情報は、「スペック」にあたります。
同じように「植物由来の無添加素材」といった材料、「化粧水や美容液がオールインワン」といった機能、あるいは「社長自身の肌悩みから開発」といったストーリーも、スペックです。

スペック・メリット・ベネフィットの違い
これらのスペックによって実現される価値が、メリットです。
たとえば「そばかすがなくなる」「肌が若返る」といった、年齢肌の悩みが解消されることです。
では、これらのメリットが実現されると、お客様にとってどんな良いことが起こるのでしょうか?
あるお客様にとっては、「肌に自信が持てるようになること」さらに「外出の機会が増えること」かもしれません。
別のお客様にとっては、「異性から注目してもらえること」あるいは「友達から羨ましがられること」かもしれません。
このようにメリットによって現実になる、お客様にとって「良いこと」。
商品・サービスを使うことで顧客にもたらされる最終的な利益、すなわち顧客が実感できる幸せのことを、私たちはベネフィットと呼んでいます。
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ベネフィットをなおざりにした広告が、“売れない”理由
ではベネフィットを明確化することが、マーケティングのうえでなぜ重要なのでしょうか?
有名な「ドリルを売るには、穴を売れ」という言葉、あなたも聞いたことがあるかもしれません。
お客様が買っているのは、ドリルそのものではなく、そのドリルを使って開けた穴である。
つまり、「商品を売るには、顧客にとっての価値から考えよ」という意味です。
ドリルのたとえで分かりやすいように、お客様はあなたの商品自体に興味があるわけではありません。
商品を買うことによって、手に入れられる未来、すなわちプラスの感情やもたらしてくれる利益を期待して購入します。
したがって、商品やサービスのスペックをお客様にとってのベネフィットに置き換えてあげることが、「売れる」ために重要なのです。
ところが多くの広告では、スペックやメリットだけに終わってしまっていて、ベネフィットが語られていません。
これでは、顧客にはピンときてもらえない。せっかく顧客のニーズをかなえる商品・サービス出会っても、気づかれないまま売れ残ってしまうのです。
したがって私たちはは広告を制作するとき、スペックをメリットに、メリットをベネフィットに変換するという作業を踏んでいます。

健康美容通販でのスペック・メリット・ベネフィットの変換例
弊社で収集している健康美容通販のチラシを分析すると、売れていると予測されるチラシほどベネフィットの表現が上手です。
「若々しさの秘密を、同窓会で質問攻めにされた」(ローヤルゼリー)
「●●さんの肌がうらやましいと言われて、お姫様気分を味わえた」(美容サプリ)
「父の加齢臭がなくなって、仲良くなれた」(石けん)
といったように、家族や友人との関係のなかでベネフィットを表す広告もいくつか見つかりました。
健康美容通販市場では、スペックやメリットだけで惹きつける広告表現でレスポンスを獲得できている会社もありました。
ところが昨今は、法令規制の厳格化や市場での競争激化などで、スペックやメリットだけでは差別化しにくくなっています。
だからこそ、ベネフィットの可視化がますます重要になってきているのです。
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ベネフィットを見つけ出すため、広告制作の現場で実践する方法
ベネフィットの可視化が大事といっても、実行に移すのは思いのほか簡単ではありません。
販売側は、お客様が「どのような目的やシーンで商品を使ってくれているか?」や「どんな価値を感じているのか?」を意外に知らないことも多いからです。
スペックを書き出してから、ベネフィットに置き換える
そこで単純ですが有効なのは、はじめに商品の特徴(スペック)をすべて書き出すことです。
成分や製法、データ、理論や開発ストーリーなどあらゆるスペックを、まずは洗い出してみましょう。
お客様の声や有名人からの推薦、メディア掲載の実績や販売数量、資格なども信頼の裏付けとなるでしょう。
クライアントの広告担当者へのヒアリングのほか、商品の資料の読み込みや競合商品との比較などを通じて、この作業を行うと思わぬスペックが見つかることもあります。
初めて広告を作るときは、商品の「良いところを100個は洗い出す」という作業を踏むときもあります。
(参考)レスポンス率2.4倍に!コピーライティングの前に実践した、「売るためのリサーチ」の手順を公開
そこで出てきたスペックを、メリットにさらにはベネフィットにと置き換えていくのです。
弊社で広告を制作するときは、以下のようなシートを用意して、ベネフィットを書き出していきます。
ターゲットの「フィルタ」を通して考える
この時のポイントは明確なターゲットを設定すること。
同じメリットでも、「50代主婦」と「20代OL」など顧客層が違えば、ベネフィットの捉え方がまったく異なるからです。
行き詰まってしまったときは、商品を愛用するお客様に話を聞いたり、ターゲット顧客に近い一般の方へインタビューしたりすると、思わぬベネフィットが見つかることもあるでしょう。
商品の「こんなところが良いと、感じてくれているのか?」と知って、驚くこともあります。
(参考)体験談の“鉄板”パターンと、愛用者への取材で聞くべき17の質問
ターゲット顧客にとって特に重要なベネフィットが明確になったら、広告のクリエイティブも格段に作りやすくなります。
スペック・メリットとベネフィットを区別すること、そしてターゲット顧客のフィルタを通してベネフィットを見つけ出すこと、ぜひ実践してみてください。
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