国内通販市場の伸び幅が低下するなかで、海外市場への視線が集まっています。
一方、海外進出は貿易や物流、薬事申請など、販売を始めるのに高いハードルがあります。それを乗り越えても、「現地の消費者に、売れる広告をつくれるか?」も未知数ではないでしょうか。
ファインドスターグループでは、2013年4月に台北事務所を開設。
日本企業の通販事業を、スタートアップからお手伝いしてきました。
14年8月には、現地法人「亞星通(STAR TOASIA)」を設立。
クライアント様とともに失敗や成功をくり返し、台湾市場の大きな可能性をひしひしと感じてきました。
その過程でチャレンジした広告のテスト結果を、今回はお伝えします。
目次
日本で売れたチラシの、まるごと「翻訳版」がヒット!?
台湾に進出した当時、新規顧客の獲得からスタートしました。
我々のクライアントからは、「日本で使っている広告を、翻訳して使いたい」という要望をいただきました。
しかし私自身は、「日本人と台湾人の感覚は違うから、それでは当たらないのでは」と考えました。
そこで、日本の広告翻訳版と、台湾で0から作ったオリジナル版の2つでスプリットテストを行うことにしました。
実施前にコールセンターや事務所の台湾女性スタッフ20名に、「どちらの広告が良いか?」を尋ねたところ、9割が「台湾オリジナル版が良い」とも答えました。
ところが蓋を開けてみると、多くの予想を裏切り、「日本版」が1.3倍のレスポンスで圧勝したのです。
現地女性9割の反対意見を、覆した理由は?
台湾女性の感覚を取り入れたはずの「台湾オリジナル版」が、なぜ当たらなかったのでしょうか?
「日本版」と「台湾オリジナル版」で大きく違うのは、ウラ面です。
「台湾オリジナル版」では文字数を制限して、3つのポイントを簡潔に整理しました。
なぜなら、事前リサーチで「日本版」のウラ面が、強烈な反対意見に遭っていたのです。
「日本版」では、コピーや図表を豊富に取り入れているため、複雑に見えてしまうのでしょう。
「台湾人は細かくゴチャゴチャしたものは見ないよ。」
「一瞬でどんな効果があるかを伝えないと、捨てられてしまう」などの声をもらいました。
購入したお客様へのインタビューで分かった、“謎解き”
しかし結果は、「MR1.99」という脅威のレスポンスを出した日本版の圧勝。
テスト結果を受けて、購入したお客様にインタビューすると、事前リサーチとは全く逆の現象が起きました。
購入したお客様に購入理由を尋ねると共通するのは、「保湿実験の●●の説明を読んで」「開発背景の●●に共感して」など、コンテンツの具体的な部分に興味を持っていたということです。
これらは、台湾オリジナル版では文章などスッキリ整理するために割愛してしまった箇所でもありました。
ここで初めて分かったのは、台湾でも「本当に買いたい人は、しっかりと商品を理解して検討したうえで、納得して購入する」ということでした。
これは、日本人の買い物における行動原理とまったく同じです。
購入に踏み切ってもらう“説得要素の提示”や 紙面上の“導線作り”など、日本の通販で確立されたマーケティング・セオリーは、台湾でも通用したのです。
台湾人が反応するのは、体験談?ブランド?成分?
2つ目は、置き換えダイエット食品を販売したときの事例です。
購入してくれたお客様は、広告のどの部分に惹かれたのでしょうか?
紙面を制作したときの仮説は、「体験談」や「Before-Afterの写真」「日本製の安全・安心・高品質」でした。
(台湾では日本文化が浸透していて、日本製品への信頼度が高いのです。)
我々がプロモーションを進めるときは、電話で受注をしたとき、必ずお客様に「広告のどこに興味があってお電話をされたのか?」を聞いています。
その集計結果は、意外なものでした。
お客様から、圧倒的に支持された訴求は「嚴選30種穀豆蔬果配方(厳選、30種類の穀物成分配合)」という小さく書かれた箇所だったのです。
逆に、日本製というブランドが購買動機になるということはほとんどありませんでした。
成分訴求を前面に出したら、反応率が1.23倍に
そこで今度は、この「嚴選30種穀豆蔬果配方」をオモテ面の目立つ位置に載せたところ、広告の反応率は1.23倍にもなったのです。
プロモーションをくり返すなかで、台湾人は「成分」や「効果」、そして「価格」に強い反応を示す傾向が分かってきました。
このようにお客様の声を取り入れながら、広告効率を改善しています。
商品購入で決め手となる具体的なポイントは国民性によって異なるので、「どの訴求が響くか?」はテストによって確かめる必要があるのです。
定期コースがなかった台湾で、定期成約率36.5%
今回ご紹介した2つの広告テストの事例から分かるとおり、日本の方法を信じて貫くこと、現地でフレキシブルに改善していくこと、この両方をケース・バイ・ケースで切り分けて進めていくことが大事なのですが、それを痛感した事例を最後にご紹介します。
台湾には、新規購入時にまとめ買いをするという購入習慣があり、化粧品や健康食品では、定期コースは存在しませんでした。
私は、「良いものを買い続けるというニーズは、どの国のお客様も必ず抱くはず」と信じて 、「定期コース」の名前を中国語で考えるところからスタートしました。
初めはお客様に理解されずに購入してもらえなかったのですが、3回目の広告出稿で「毎月配送到府價」という名前にしたところ、定期コースの成約率が36.5%、3回目配送時点での継続率が74%という結果が出ました。
「台湾でも、定期購入という文化を創ることができる」そう確信した瞬間でした。
台湾の通販市場は、導入期から成長期へ移行としようとしており、先行者利益を確保できる絶好のタイミングです。
海外市場の可能性を信じて、一緒に踏み出してくださる企業様からのご連絡をお待ちしています。