台湾市場で“MR1.99”という驚異的なレスポンスをたたき出した、化粧品の広告原稿。
実は、出稿前に現地女性にヒアリング調査をしたところ、「この広告では、台湾人は買わない」という意見を、数多くもらっていました。
否定的な予想を覆した背景には、どのようなメカニズムが隠されていたのか?種明かしをご覧ください。
目次
「台湾オリジナル版」VS「日本版」、予想を大きく裏切るテスト結果に
台湾市場の大きな可能性を私が確信したのは、昨年、ある化粧品会社様の新規獲得プロモーションで、脅威の費用対効果「MR 1.99」を叩き出した直後のことでした。
その後、複数の会社様とリピート施策・定期コース創りなど様々なテストを行い、現在は台湾における成功モデルが見えてきています。
実はこの新規獲得プロモーションでは、以下の2種類でスプリット・ラン・テストを行いました。
・台湾オリジナル版:台湾の制作会社と一緒に制作
・日本版:日本で過去にヒットクリエイティブとして使用していたチラシの翻訳版
結果は、私の予想を大きく裏切り、「日本版」が1.3倍のレスポンスで圧勝したのです。
現地女性9割の反対意見を、覆した理由は?
広告実施前に、コールセンターや社内の台湾女性スタッフ20名にどちらの広告が良いか?を尋ねました。
すると、9割にあたる18名もの台湾女性が、「台湾オリジナル版が良い」と答えました。
しかし、ふたを開けてみるとこの結果に・・・
なぜ、「日本版」が当たったのでしょう?
「台湾オリジナル版」と「日本版」の違いを見てみましょう。
“オモテ面”についてはそれぞれ以下の特徴を持たせていました。
<台湾オリジナル版>
・コピー「私、現在50歳です!(見た目年齢にギャップ)」
・ビジュアル
・簡潔な訴求ポイント
・実績<日本版>
・コピー「見た目年齢にギャップ!」
・ビジュアル
・簡潔な訴求ポイント
台湾オリジナル版にこめられた、“設計思想”
オモテ面だけを比較すると、ロジックはほぼ一緒です。
見せ方だけ、台湾オリジナル版はかなり見やすく、スッキリ仕上げています。
ところが、大きく違うのはウラ面の構成です。
<台湾オリジナル版>
・コピー「日本女性の若見えの秘密は?」(3つのポイント)
(1)成分説明・保湿実験結果
(2)オールインワンの利便性
(3)実績・製薬会社と開発
・開発背景
・体験談
・オファー
台湾オリジナル版では、ウラ面でもコンテンツを見やすく整理。
文字数も制限して、 ポイントを簡潔に伝える設計をしました。
どうして、このようなシンプルな構成にしたのか?
実は事前リサーチで台湾女性たちから、日本版のウラ面が、強烈な反対意見に遭っていたからです。
「台湾人には、○○○なチラシは捨てられてしまう」という反対意見
<日本版>
・コピー「美容成分●種、超濃厚ゲル」
・開発背景
・製薬会社と開発
・成分説明
・保湿実験結果
・オールインワンの利便性
・価格訴求(安価)
・体験談
・実績
・オファー
台湾オリジナル版と比べて、コピーや図表を豊富に入れています。
その分、少し整理に欠けて複雑に見えてしまうのでしょう。
多くの台湾人から、こんな意見をもらいました。
「台湾人は細かくゴチャゴチャしたものは見ないよ、一瞬で、どんな商品でどんな効果があるかを伝えないと、捨てられてしまう」
ですから、実施前に20名の台湾女性にヒアリングしたときも当然「台湾オリジナル版が良い」と18名の方が答えた訳です。
購入したお客様へのインタビューで分かった、“謎解き”
しかし結果は、脅威のレスポンス(MR 1.99)を出した日本版の圧勝。
テスト結果を受けて、購入したお客様にインタビューすることで、その謎を解くことにしました。
すると、当然かもしれませんが、事前リサーチとは全く逆の現象が起きました。
購入したお客様は口を揃えて、「日本版が良い」と答えるのです。
(購入していない一般のお客様は「台湾オリジナル版が良い」と話したのにもかかわらず)
彼女たちに購入理由を尋ねると共通するのは、「保湿実験の●●の説明を読んで」「開発背景の●●に共感して」など、コンテンツの具体的な部分に興味を持っていたということです。
これらは、台湾オリジナル版では文章などスッキリ整理するために割愛してしまった箇所でもありました。
かつてのヒットクリエイティブを、現役に復活させる
ここで、初めてわかったことがあります。
それは、台湾でも「本当に買いたい人は、しっかり商品を理解して検討したうえで、納得して購入する」ということ。
これは、日本人の買い物における行動原理とまったく同じなのです。
そして、説得するためのストーリー展開や、購入までの導線作りなど、日本の通販におけるマーケティングセオリーは、台湾でも通用するということでした。
そのため、かつて日本でさまざまなテストを乗り越え、大ヒットを飛ばした広告原稿は、引退した4番バッターが現役に返り咲くかのごとく実力を発揮して、再び台湾で花開くことができたのです。
日本の通販会社様は、一世を風靡したヒットクリエイティブを必ず二つ、三つ持っているもの。
そのクリエイティブを再び使うことができるチャンスがあることも、台湾通販事業の魅力の一つだと思います。