台湾の消費者から信頼の厚い「日本製品」。なかでも素肌につける化粧品は品質が良いなどとして人気があります。実際に台湾に進出して成功を収めた日本企業の成功要因について、今回は商材の異なる3つのコスメ企業の事例と、成功する企業の3つの特徴をご紹介します。
台湾で商品を売るときに押さえたい「売れる要素」を分析し、レポートにまとめました。
弊社で台湾進出を支援した15商品のCPOやMRなどから、売上を左右する要素を解説しています。
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目次
台湾進出で成功しているコスメ・化粧品企業の事例3選
日本の化粧品・コスメ商品は、親日国の台湾でも高い人気があります。実際に台湾へ進出して成功している日本のコスメ企業の事例を、それぞれの商品の特徴や販売戦略など成功要因に的を絞ってご紹介していきます。
事例1:進出3年で単品年商9億円の「コラーゲン原液」
スキンケア商品を取り扱うこの企業は、商品数を絞る分、商品の品質にこだわるという販売戦略をとっており、日本国内の年商は6億円ほどでした。
台湾進出の背景は、日本国内の売上が「頭打ち」になったため
厳選した最高品質の成分を配合した商品は、一定の認知を獲得し売上を伸ばしていましたが、日本市場だけでは売上のアッパーが見えてきました。
そこで、安定した売上を確保できているうちに販路を広げたいと、2017年に台湾に進出。
進出方法には主に3つの形態がありますが、最初の目的は商品が台湾で受け入れられるかの反応を見ることと定め、越境EC(日本から台湾消費者に直接商品を届ける方法)を選択しました。
現地法人・支店設立 | 販売代理 | 越境EC | |
---|---|---|---|
進出までのコスト | 中 | 低 | 低 |
進出までのスピード | 遅 | 早 | 早 |
事業開始後の収益性 | 高 | 中 | 低 |
越境ECは、台湾現地に商品を輸入する手続きが要らないため、初期コストが少ない上に早く実施できるところがメリットですが、決済方法はクレジットカードか後払いの2択になることがデメリットです。
台湾では代引き決済が約6割を占めますので、代引きを希望する消費者に対しては一定の機会損失が発生します。そのため、代引きを含めた決済方法を設定できる現地法人に比べ、越境ECでの広告効果は3割ほど落ちる傾向にあります。
この企業の場合、越境ECでのCPOは7,000円前後で推移していたため、現地法人を設立した場合は5,000円近くまでCPOが改善すると予測。CPOが5,000円ほどであれば台湾で十分戦えると判断し、越境プロモーションと並行して、現地への輸入貿易申請と現地法人を設立する手続きを開始しました。
成功要因は、LTVを指標にしたこと
この企業は現地法人を設立後、自社ECを中心として定期販売モデルによるストック型の販売設計をしています。CPOは予測の通り5,400円ほどで推移しましたが、購入単価は約3,800円でMRは0.7前後でした。
定期モデルは、まとめ売りに比べて購入単価が落ちるのがボトルネックです。そのため、初回の広告効率だけでなくLTV(年購入単価)に注目して施策を実施しました。そこで最初の一年はCPOが良くても広告予算の拡大を行わず、お客様の購入回数を増やすためのCRM施策を強化。たとえば、以下のような施策を行いました。
施策 | 内容 | 期待される効果 |
---|---|---|
ダイレクトメール (ショートメール) | ブランドストーリー 商品の特徴 使用しているお客様の声 | 愛着 商品理解 使い続けることで得られる効果の期待感 |
お客様インタビュー | 購入する理由 購入をやめた理由 | 商品の魅力(差別化ポイント)の発見 離脱のボトルネックの発見 |
この企業では、お客様インタビューの実施により購入をやめる理由として、「商品が余っている」と回答した方が多くいらっしゃることがわかりました。これを受け、使用量の目安を載せた「正しい使い方ガイド」をメールや商品同梱などで送りました。すると年平均の購入回数を4回近くにまで伸ばし、利益を確保できる定期モデルが確立。このタイミングで一気に広告予算を投入して売上を拡大していきました。
2年目の後半以降は、芸能人をキャスティングし、飛躍的に売上を伸ばしています。
成功のポイントは、定期モデルでビジネスを作るためにとにかくアクセルを踏むのを我慢し、LTVで計測し続けたことです。きちんと利益が出る指標になるまでビジネスモデルを磨き上げることが重要です。この企業は現在、台湾以外の香港やシンガポール、マレーシアにも進出し、売上20億円を目指して展開中です。
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事例2:5年で「30億円超の売上」を出したスキンケア
この企業は、保湿美容液を主力商品に豊富な商品ラインナップで順調に売上を伸ばしていました。
台湾進出の背景は、主力商品が好調なうちに海外で販売できる土台を作るため
国内の競合他社が増え競争が激化していてきたことを受け、主力商品が好調なうちに海外で販売できる土台を作ろうと進出することを決めました。進出国を台湾にした理由は、市場調査から日本のコスメに好意的な消費者が多いことと、既に他社で成功事例があるという2点が大きな決め手になりました。
日本の既存顧客向けサブ商品が、台湾で大ヒット
まずは日本での主力商品である保湿美容液を、委託販売という形でスタートしました。様々な試行錯誤をするも目標のMRが達成できず、販売価格をギリギリまで下げても改善しませんでした。日本のプロモーションにも同じことがいえると思いますが、初期でつまずくとどんなにクリエイティブを変えても改善幅は知れており、半年以上苦戦していました。
やむなく、一旦保湿美容液のプロモーションを止め、日本では主に既存向けに販売していたオールインワンゲルをフロント商品として打ち出すと、初回からMR1.5という驚きの結果に。オールインワンという利便性、またコストパフォーマンスが良いというコンセプトが台湾の消費者に受け入れられ大ヒットしました。
売り方は1回に複数個購入することでお得感のある「まとめ売り」にしたところ、初めて買う商品にも関わらず多くの方が2個以上の購入を選択していました。そのため、コストのほとんどを初回購入で回収でき、2回目以降のリピート購入で利益を出せる状態になりました。
日本で売れた商品に捕らわれず、台湾の消費者にマッチする商品に切り替えたことが奏功したといえます。
拡大戦略は、商品のシリーズ化と、販売チャネルの多角化
オールインワンゲルで順調に売上を伸ばし、4年目以降は拡大のために2つの戦略を取りました。
1つめは、オールインワンゲルのシリーズ化です。具体的には、同じオールインワンゲルの中でも、「美白用」や「敏感肌用」などそれぞれの肌質に特化した商品を開発し展開しました。3年目までに一定のブランド認知を得ていたため、新規顧客の獲得と同時に、既存顧客も新商品とセットで購入するなどの購買行動が生まれ、購入単価も上がり売上を大きく伸ばしました。
2つめは、販売チャネルの多角化です。認知度が上がったタイミングで、自社ECサイトに加え大手ドラッグストアでの店舗販売を行いました。実際に手に取って商品を確かめられる店舗からの売上は大きく、店舗への卸し売りベースで10億円超えを達成しました。5年目の販売チャネルの構成比は、自社サイトEC:54.1%、店舗:33.8%、モール:12.1%となっています。
拡大に成功したポイントは、売れている商品を別訴求でも開発しシリーズ化したことと、販売チャネルを広げたことでしょう。
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事例3:わずか2年で2億円の売上。WEBで月間新規顧客1,000人を獲得する「導入美容液」
この企業は、もともと自社で台湾向け越境ECを運用し、ダイエット商材で月商3,000万円を超える売上を立てていました。
越境ECで販売していたダイエット商品から、スキンケアへ転換
台湾現地でも競合が多いダイエット商材が売れるためには、差別化を図るために踏み込んだ表現が必要です。しかし、主力メディアとしていたFacebookから何度もアカウントバン(アカウントの閉鎖)を受け、事業が立ち行かない状況に追い込まれてしまいました。
そこで販売する商品を、ダイエットからスキンケア商品に変更。中でも台湾でニーズの高い美白に着目し、美白効果が期待できる導入美容液に決定しました。販売価格は3,500円ほどと台湾での化粧品価格のボリュームゾーンのため、充分に商機が見込めると判断しました。
LTVを高めるためには毎月購入する定期モデルで販売したいところですが、この導入美容液は約2ヶ月使える容量があり定期モデルには不向きな商品でした。そこでCPOを抑え利益を確保し続けるために「まとめ売り」で顧客単価を上げる売り方を考えました。
成功要因は、キラーコピーの開発とインフルエンサーマーケティング
WEB広告をメインにCPOの改善に取り組みましたが、飛躍的にCPOが改善したのはキラーコピーの開発に成功してからです。台湾は美白に関心の高い市場でしたが、当初は差別化ポイントを前面に押し出せるコピーが作れず、あまり特徴のない訴求になっていました。しかし、「ドクターズコスメ級の美白エッセンス」という消費者に刺さるコピーを開発したことで、一気にCPOが改善しました。
消費者に刺さるキラーコピーに加え、WEB広告に強いインフルエンサーを起用した相乗効果で月間の新規顧客の獲得は1,000人を超えるほどとなり、キラーコピーの開発から9ヶ月目にはCPO改善率が約60%にもなりました。
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コスメ・化粧品で台湾進出を成功させる企業の3つの特徴
親日家が多く日本製品への信頼が厚い台湾市場とはいえ、受け入れてもらうためには市場の特徴を捉えることが必要です。これまで化粧品・コスメ企業の台湾進出のご支援をする中でわかってきた、成功する企業の特徴をご紹介します。
特徴1:台湾市場に合った適正な商品価格の設定
台湾での化粧品の販売価格は1,100元(4,400円)未満とすることが不可欠です。その理由は、弊社で支援している複数の化粧品企業の実績から販売価格が1,100元(4,400円)を超えると、顕著にCVRが低下する傾向が確認できているからです。実際に1,200元を超える化粧品では、現時点で拡大の成功事例は残念ながら「0」件という結果になっています。
※1台湾ドル=4円で換算
もしも販売価格が合わないという場合には、サイズを小さくするなど販売価格から逆算した商品開発を視野に入れることが必要です。海外進出して事業拡大を目指すなら、「市場に合った商品の適正価格」をしっかり検討しましょう。
特徴2:芸能人やKOLを起用したマーケティング
KOL(Key Opinion Leader)とは、ある特定の分野において専門的な知識を持ち、SNSの発信による影響力がある人のことです。「KOLの発信=信頼性の高い情報」として台湾の人々に受け止められ、購入への大きな後押しになっています。また台湾では日本同様、多くの人がSNSで情報収集をしています。専門知識を持ったKOLのSNSでの発信は一度に多くの消費者へ情報を届けられるため、認知拡大の観点からも非常に有効な手段といえます。
これまでご紹介してきた成功事例でも、売上規模を拡大させていくタイミングで必ずKOLや芸能人をキャスティングしています。
特徴3:商品の連続的な投下
どのような商品にも栄枯盛衰がありますので、商品を常に投下し続けている企業の方が成功率が高い傾向にあります。
海外の市場では、国民性やその国の流行なども影響して、売れる商品を特定することが難しいケースもあります。そのため、メイン商品の他に複数の商品を保有している場合は、切り替えたり、追加できるように準備をしておくのが良いでしょう。
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台湾に化粧品を輸出する際の注意事項は?
台湾には日本の「医薬部外品」のような種別定義がありません。また、日本で医薬品、医薬部外品成分と認定されていても台湾では法律が違うため、どの成分がどの種別にあたるのかは確認が必要です。まずは輸入がしやすい「一般化粧品」で販売する方法を目指しましょう。
商品カテゴリー | 使用目的 | 輸入申請プロセス | 申請から輸入までの期間 |
---|---|---|---|
一般化粧品 | 美化・清潔・容貌の維持 | 台湾に輸入できるかどうかの成分チェックを実施し、医薬品に該当する成分が入っていなければ即時で輸入することができる。 | 1~2ヶ月 |
医薬品 | 治療・予防 | 台湾に輸入できるかどうかの成分チェックを実施し、医薬品に該当する成分が入っていれば、医薬品としての申請(薬字号)を行う必要がある。 | 半年以上 |
もしも成分申請が通らない場合は、以下のような解決方法もあります。
①一般化粧品で通る、別商品をピックアップする
②輸入NGの成分を抜いて配合する
③台湾現地で製造する
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台湾市場で培ったノウハウを活かして支援
海外市場における事業の成功には、その国に精通したパートナーの存在が不可欠です。私たちは2016年より、通販企業の海外進出に特化して多くの成功を導き出してきました。台湾への進出検討段階より現地での事業拡大までを、ワンストップでご支援しています。
具体的には、以下のようなサービスの提供が可能です。
販売する商品と数百万円のご予算があれば海外進出が可能です。海外進出をご検討でしたら、まずはお気軽にご相談ください。通販企業の台湾進出に精通した社員が対応いたします。
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