新規顧客の獲得効率が悪化している今、定期コースの継続率アップに力を入れる通販会社が増えています。
そんななか、社会貢献・チャリティと連動した一風変わった同梱物を定期顧客に届けて、定期コースの離脱率を5%改善した事例が生まれました。
成功の要因を分析すると浮かび上がったのは、“一貫性の原理”と呼ばれる心理効果でした。
目次
定期継続率5%アップを生んだ、風変わりな同梱物
前編「通販企業の「コーズマーケティング」成功事例!定期購入者の継続率が5%アップ」のおさらいをすると、私がお手伝いしたのは、定期継続率のアップに課題を感じていた通販企業様。
チャリティと連動して、以下の施策をとりました。
・定期顧客からの売上の一部を、被災地の子ども達への支援活動に寄付する
・定期コースの商品発送時に、支援先の子ども達からの感謝の手紙を同梱する
3ヶ月のテスト期間を経た、テスト結果は・・?
お手紙を同梱していないセグメントと継続率の差異を検証したところ、60代以上のシニア層では、5%も数値が高まっていたのです。
もちろん、子ども達からの手紙を読んで喜んだり、共感してくださるお客様はいらっしゃると思いますが、お客様が商品によって得られるベネフィットとは、直接関係ありません。
このような施策が、「身銭を切って、お金を出す」という購買行動にどのように影響を与えたのか?
そんななかで私が狙ったのが、「一貫性の原理」です。
知らず知らずに行動を規定する、「一貫性の原理」とは?
私たち人間には、「いったん態度を表明したり、行動で示したことは、やめにくい」という心理が働いています。
たとえば、会議で「こうした方がいい!」という意見を言った手前、引っ込みがつかなくなって、実行役も引き受けてしまった・・
という経験はないでしょうか?
(私は多分に、あります。。)
同じように、学校の授業で予習をして臨んで正解を答えたら、かわいい同級生から、「○○君って、できるね」とほめられて、次もはりきって予習をしてしまう、という経験もあるかもしれません。
(これは男子校出身の、私の妄想かもしれません。。)
このサイトでもよくご紹介してきた、「影響力の武器」(ロバート・B・チャルディーニ)には、興味深い心理学の実験結果が、紹介されています。
・被験者の前で、男性が置き引きをしてラジオを盗んで立ち去ったところ、全員が気づくような場面だったのに、呼び止めたのは20名中4名
(= わざわざ厄介事に関わろうとは、しなかった)
・実験を1点だけ変更して、事前に被験者に「荷物を見ていてもらえませんか?」と頼んだところ、全員が同意今度は、20名中19名が泥棒を呼び止めた
商品の購入をやめるという決断に、心のなかでブレーキがかかる
このように、「自分の行動や発言、態度などを一貫させたい」という欲求に、知らず知らずに行動が影響されてしまうメカニズムを、「一貫性の原理」と呼びます。
今回の同梱物で手紙が届いたお客様には、
「ありがとうございます」「支えてくださった方のおかげです」
といった感謝の言葉に触れ続けます。
感謝されると、普通に嬉しくなるものですし、「良いことをしている」自分の行動を、嫌でも意識します。
では、いざ商品について「来月はやめようかな?」と思ったときには、どうでしょうか?
「購入をやめる」という決断は、子ども達への支援も併せてやめる、ということ。
子ども達から届いた言葉が、頭によぎるかもしれません。
「子ども達のために、良いことをしている自分」という自己イメージを崩すことになってしまい、心のどこかでブレーキが働きます。
買い続けることが、「心地よく」なる心理的トリガー
このように、定期コースをやめるのがバツが悪くなってしまう、逆に言えば、買い続けるのが「心地よく」なるような心理的なトリガーを埋め込んでいたのです。
もちろん、この企画が目論みどおりに機能していたかどうか?は、分かりません。
ただ、定期コース継続率が高まっていた効果もあり、この会社様は、寄付の拠出と定期顧客への手紙の同梱を当初予定の6ヶ月間から、1年間へと延長されました。
この結果に、お手伝いして良かった!と、胸をなでおろしたものです。
オーソドックスな施策をやりきった後に、発想を膨らませると・・
新規顧客の獲得効率が悪化している今、定期コースの継続率アップに力を入れる通販会社は少なくないでしょう。
「継続した使用による、効果を伝える」
「定期顧客の体験談を入れる」
「飲み忘れないよう、カレンダー等のツールを入れる」など、
オーソドックスな施策としてやるべきことは、たくさんあると思います。
それらに取り組んだうえで、まだ数字を上げたくて困っているとき、常識にとらわれずに、発想を膨らませていけば、結果は出るのかもしれない!
そんなことを、教えていただいた事例でした。
今回解説した「一貫性の原理」は、別の場面でも応用できるかもしれませんね。
通販会社で進む、NPO/NGOとのコラボ事例
ちなみに、通販会社でもNPO/NGOとのコラボレーションに取り組む事例はいくつか出てきているようです。
私が知っているだけでも・・・・
・会社が寄付をするに際して、既存顧客にも一緒に寄付を呼びかけ。会報誌でもお礼や報告の記事を掲載、既存顧客との関係強化をはかる
・新規用広告のオファーに、「売上の一部を寄付」と記載して、レスポンスアップをはかる
・お友達紹介の促進のため、新規顧客を紹介してくださった人数分、紹介者や被紹介者への特典に加えて、NPO団体にも数百円ずつを寄付
などなど、さまざまな事例を見かけるようになってきています。
またどこかで、ご紹介できればと思います!