「保有効果」による心の揺らぎが、購入のトリガーに

不要品を買い取ってもらい、新しい商品をお得に購入できる「下取り」。

繁盛する店舗は、なぜ「割引」ではなく、あえてコストのかかる下取りを導入するのでしょうか?

 

そこには、下取りがお客様の心を引きつける心理的なトリガーが隠されていました。

下取りを、通販の新規獲得や定期離脱防止に応用する方法についても、考えてみます。

「割引」をしても売れないのに、「下取り」でお客様は反応するのか?

 

前編「購買心理をくすぐる、「下取り」の秘密」の最後に紹介したのは、イトーヨーカドーが リーマンショック後の不況期に、「下取りセール」によって爆発的な売上をあげた事例です。

 

「衣料品のお買い上げ金額5,000円ごとに不要になった衣類を1点1,000円で下取り」

 

この“お得感”によって、お客様から絶大な支持を得た下取りセール。

実は冷静になって考えてみるとお客様にとっては「割引」と同じ

 

それも、2割引以下の効果しかありません。

 

「割引をしても売れないなか、下取りでは顧客は反応しないだろう」

 

そんな反対意見が社内から寄せられるなか、下取りを強行したのは、セブンイレブンの創業者、カリスマ経営者 鈴木敏文会長。

 

鈴木氏が考えたのは、次のような顧客心理でした。

 

 “タンスの肥やし”がお金になるなら、買い物しよう 

 

「いま各家庭にはたくさんのモノがあふれていて、新しい商品はほしいけれど、これ以上モノを買って増やすことにも抵抗があるという心理状態にある人が多いと思います。

 

そうかといってまだ使えるモノを捨てることには抵抗がある。

 

その時、下取りということで、不要なものがいくらかでもお金になるなら、喜んで不要品を持ってきて、そこで得たお金を足しにして、買物をしてくれるはずだ」

 

出典

 

このように、お客様の気持ちを見抜いた施策が奏功。

 

爆発的な集客効果を発揮する大ヒット企画となって、回を重ねるごとに、対象品目を広げていったそうです。

 

 お客様が自動的に反応してしまう、「保有効果」とは?

 

このように「下取り」が「割引」と比べてもお客様が反応しやすい心理は、行動経済学の説く「保有効果」によっても説明できます。

 

保有効果とは、「だれもが自分のもっていているものには、客観的価値よりも高く価値を見積もりがちである」という心理のことです。

 

この保有効果については、以前に別の記事「『返金保証』への申込み者が少ないワケ」で解説しましたが、「下取り」においては、どのように働くのでしょうか?

 

前編で説明した、インフォマーシャルで連呼されていたテレビの下取りの例を、思い出してください。

 

家にあるテレビ、「価値がある」と思いたいのが、保有効果によって影響を受けてしまう人間心理です。

 

心の揺らぎがトリガーに、新しい商品を申し込んでしまう

 

一方、買い替えを検討するくらい古くなってしまうと、中古で売りに出しても、簡単には売れない、少なくとも良い値段は付かないことが多いもの。

 

そして、その事実は頭では理解している方も多いでしょう。

 

そんなジレンマ、居心地が良くない心の状態を心地良く崩してくれるのが、あのカン高い声です。

 

「あなたのテレビを、○円で下取りします」

 

もしこの下取りに、今すぐ申し込まなければ・・

このテレビが同じような価格で売れることは、まずないはずです。

 

そんな心の揺らぎがトリガーになって、

「古いテレビが、この値段で売れるのなら・・」

と新しいテレビに飛びつくのです。

 

※ちなみに、この保有効果にもとづいた説明は、この記事を書こうと調べていたとき、偶然に見つけたこちらの記事にハッとさせられ、ならわせていただきました。感謝!

 

「余ったから」の定期離脱、下取りで解決できないか?

 

この“下取り”が購買心理を刺激するメカニズムを、単品リピート通販にも取り入れられないでしょうか?

 

たとえば、定期コースの解約理由にも多いのが、「使い切れずに、余ってしまったから」。

 

このように休眠になったお客様を狙って、他社の商品でも下取りをすればどうでしょう?

 

通販で商品を購入してきた顧客層をターゲットにした新規獲得の施策として、効果が出るかもしれません。

 

逆に、「余った」が理由の休眠化を防ぐための切り返しトークとして、余った商品を下取りして、そのうえで別の商品への切り替えを薦める、という施策も思い浮かびます。

(クロスセルできる商品があればですが)

 

 空き容器を送ってリサイクルすれば、ポイントがもらえる制度も

 

ちなみに、下取りではないですが、空き容器のリサイクルを進めている会社はありますね。

 

使い終わって不要になった化粧品の容器を、お客様が会社宛に送ると、その分ポイントがもらえる、という仕組みです。

 

容器1個を送れば、その分買い物の足しにできるなら、リピート顧客にとってはお得感があるでしょう。

 

リサイクルは、“エコ”にもなるので、お客様にとっては「使い捨て」という良心の呵責を気にせずに使い続けられますし、会社のイメージアップにもなりそうですね。