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「市場の壁を打ち破るプロ広告作法」から探る、市場成熟5段階と売れるコピーの推移

50年前、アメリカで通信販売のコピーライターとして腕を鳴らした、ユージン・M・シュワルツ氏。

彼の著書「市場の壁を打ち破るプロ広告作法」で述べられているのが、市場成熟5段階の理論です。

 

ある商品の市場が成長期から成熟期、そして衰退期へと差しかかるにつれて、売れる広告表現もどのように変化していくのか?

絶版となってしまった著書で語られた理論と、現代の通信販売の市場の事例を重ね合わせて、分析しました。

 「通販っぽくない」チラシが高反響、なぜ・・?

 

前編「通販市場の成熟化にともない、レスポンスの獲れるコピーが変化している理由」のおさらいから入りましょう。

 

・レスポンスの獲れるチラシの傾向が、2014-15年にかけて変化してきたこと

 

・具体的には、「通販っぽくない」チラシの方がA/Bテストでレスが良かったケースが増えていること

 

・通販市場の成熟度の移り変わりが、この背景にあること

 

これらの現象にちなんで解説したのが、20世紀半ばの米国で通販コピーライラーとして名を馳せた、ユージン・M・シュワルツ氏による、「市場成熟の5段階の理論」でした。

 

例に挙げたのが、ダイエット商品の当時の広告コピー。

競合商品の増加とともに、過剰な宣伝合戦によって従来は効果があったコピーが響かなくなる過程を解説しました。

 

市場の成熟とともに「死んだ」商品を、復活させるためには?

 

市場の成熟とともに、売れ行きが鈍ってしまった商品を、元のような販売カーブに再び乗せるには、どうすればいいでしょうか?

 

シュワルツ氏が説くのは、対象への「同化」なる、耳慣れない言葉です。

 

どのような意味でしょうか?

その答えを、膨大な広告費を投入して、成熟5段階のすべてを経験、競争の激化や政府の規制など乗り越えて、今もなお安定した売上を保つ、古典的な業界に求めて考えてみましょう。

 

タバコの広告の歴史です。

 

たとえば、マルボロの「男くさい男」の広告シリーズ。

 

カウボーイの格好をした俳優が、荒野をバックに美味しそうに煙をくゆらせているシーンなど、目にしたことがある方も多いかもしれません。

 

イメージ広告の代表例のようなクリエイティブですが、はじめからこのような訴求が一般的だったわけではありません。

 

マルボロ「男くさい男」、イメージ広告が定着した背景

 

女性の喫煙の一般化などに伴い成長した、20世紀前半米国のタバコ市場。

 

6年間で利益を2倍にしたと言われる企業も出る一方、健康への悪影響の懸念も広まります。

そこで登場したのが、次のようなキャッチコピーです。

 

「長くなったベルメルは、煙をその分だけ濾過します」

「10人中9人のお医者様が、ラッキーをお選びです!」

 

1950年代初期には、とうとう米国政府が健康についての主張を規制。

タバコ業界は、第5期の市場に直面します。

 

そこで登場したのが、「男くさい男」シリーズでした。

 

大衆がタバコを感じているのは、男らしさへの憧憬。

「タバコを吸う」という行動に結びつけ、「男らしくありたい」という同化欲を描き出すことで、市場を動かしたというのです。

 

この広告は、チェスターフィールドやキャメルいった競合も模倣をしていき、タバコの広告の代表例となっていきます。

 

20世紀終わりから、急成長をたどった日本の通販市場 

 

ここで、今の日本の通販市場に目を転じましょう。

 

通販市場の急激な成長が始まったのが、1990年代。

21世紀に入り、時には年間2桁のペースで市場規模が拡大。

 

化粧品・健康食品などの単品通販でも、創業から一気に年商数十億円、なかには100億円を超える企業が東京や九州から続々登場したのは、記憶に残られている方も多いでしょう。

 

そんな急成長期をみての新規参入の激化、そして成長のスローダウン。

たとえば健康食品では、「青汁」「グルコサミン」「コラーゲン」といった競争の激しい市場は、第3・4から第5段階へと差し掛かった頃かもしれません。

 

・第1段階:ストレートな主張が効果的

・第2段階:誇張的な主張がエスカレート

・第3段階:メカニズムの説明で主張を強化

・第4段階:メカニズムの「尾ひれづけ」合戦

・第5段階:見込み客の願望への同化

 

※それぞれの段階での広告コピー例は、前編「通販市場の成熟化にともない、レスポンスの獲れるコピーが変化している理由」をご参照ください

 

健康食品チラシで、CPOを約50%も改善

 

そんなときには、市場の成長期には思いも寄らなかった訴求が効力を発揮することがあります。

 

「消費者が自分と商品イメージをかなり密接に結びつけ、商品がその人の個性のほとんど一部になってしまうようにするのが、あなたの目標だ。」

 

(出典:「現代広告の心理技術101」ドルー・エリック・ホイットマン)

 

私がこのような考え方を調べていったきっかけとなったのが、通販ニュースレターで永瀬が解説していた事例。

 

ある健康食品の通販会社で、かつては売れていたチラシも、レスポンスの悪化傾向に歯止めがかからない・・・

 

そんななか、クリエイティブを変更することで、CPOを約50%も改善して、元の水準に引き戻したのです。

 

 レスポンス好転の背後には、ペルソナの作り込み 

 

健康食品チラシで、これまで紙面の大きなスペースをとっていたのは、

「健康上の悩みが発生してしまう理由」や「その成分が効果を発揮するメカニズム」など。

 

シュワルツの分類によれば第3-4段階で効果的な情報です。

 

これらの説明コンテンツをシンプルに縮小して、代わりに原材料にまつわる“地場”のエピソードなど、“悩み”や“ベネフィット”とは直接関係ない情報に、紙面の多くを割きました。

 

これが、レスポンス好転の要因になりました。

 

この裏でつくりこんでいたのが、「ペルソナ」の設定です。

 

「60歳を超えても元気な、田舎のおばあちゃん」

といった見込み客の像を可視化。

 

・ペルソナが抱いている自己イメージ

・憧れている人物像や暮らし

・商品購入の背後にある、根本的な欲求

 (例:「痩せたい」なら、「同性から羨ましがられたい」「異性からモテたい」など)

 

これらにもとづいて使用する写真を選んだり、デザインやコピーのトーン&マナーを合わせたり、関連する情報コンテンツを入れたりしていったのです。

 

お客様の抱える美容・健康の悩み(例:膝が痛い)や商品が実現するベネフィット(例:元気に歩けるようになる)といった訴求だけでは差別化できない今。

悩みやベネフィットとは直接に関係のない情報を出すことが、レスポンスアップの要因になる例が出てきています。

 

市場の成熟度合いに合わせて、広告で訴求するメッセージや具体的なコピーを変化させていくこと。

もしあなたの会社で広告のレスポンスが落ちてきているなら、ぜひ考えてみてください。