前編「MR1.99!台湾市場の潜在パワーを解明する」ではMR1.99と“ありえない”レスポンスを記録した、広告の事例をお伝えしました。
続編となる本記事のテーマは、リピート獲得。
アウトバウンドやDMといった日本の通販が生み出してきた勝ちパターンは、海外市場でも通用するのでしょうか?
※2014年当時の事例です。
目次
SMS(ショートメール)を活用した、台湾流CRM
台湾に進出を検討されている通販企業100社以上とこれまで面談してきましたが、その時にきまって質問いただくのが、
「新規顧客のリピート率はどのくらいなんですか?」
「引き上げの施策は、どうやっていますか?」といったCRMについてです。
台湾でCRMの大きな武器になるのが、SMS(ショートメール)です。
台湾では共働き率が高いため日中、家は不在にしていることが多く、物流会社が商品を届ける時には、必ず先に電話確認をしてから配送します。
だから90%以上もの人が、注文時に携帯番号を教えていたのです。
注文時に携帯番号を教える率が90%以上もいるのなら、SMSをマーケティングに活かそうと考えました。
テストしてみたのは、DMを送る前に、2回のSMSを配信。
その後に、DMが到着するという企画です。
ある化粧品会社で、以下のような文面をSMSで配信しました。
祝(商品名)台湾上陸一周年記念。VIPお客様セール。
先着100本
限定、特別割引価格、シークレットプレゼントを提供。
シークレット
プレゼントの内容は、http://(URL) 。数量限定、商品の確保、予約は0809080×××
貼り付けていたURLからは、プレゼントとして付けた“ポーチ”の写真を見られるようにしました。
配信直後、1時間も経つ頃には、配信数に対してなんと12%ものお客様がURLを確認していました。
その後、この2回のSMSだけで約3%ものレスポンスを獲得。
郵送DMも含めた企画全体としては、レスポンスはなんと14%にも。大成功でした。
割引オファーからのアウトバウンド、受注率は?
別の商品でも同じように、SMSを活用しました。
化粧品会社から以下のメッセージを送り、キャンペーンの予告から始めることにしました。
(会社名・商品名)をお買い上げありがとうございます。
お肌の調子は、いかがですか?現在お得なキャンペーンを企画中です。
VIPのあなたに後日、特別先行案内を致します。
お楽しみに!
そのうえで、最大で20%の割引(最低10%~、購入本数による)をオファーに、SMS配信の翌日から、アウトバウンドが始まるという流れです。
結果は、「電話接続率」(=電話がつながった割合)は、リストに対して88.9%という、とても高い数字が出ました。
しかし肝心の受注率は、接続できたリストに対してたったの4.8%。
まったく採算の合わない、大失敗となってしまいました。
「台湾でリピート販売するときは、最初に買ってもらった時よりも相当安くしないと、お客様は反応しないよ。30%OFFなんて当たり前だよ。」
こう現地スタッフから聞いていた私は、
「やはり価格がこの結果に影響しているのだろうか・・・?
リピート施策のたびに値引き率を上げていくと、通販ビジネスが成り立たなくなってしまう」
とひどく落ち込みました。
そんな時、ある総合通販カタログに入っていた1枚の「現金券」を見て、新たな施策を思い付きました。
日本では、トライアルとして初回購入の価格を下げ、2回目以降で価格を上げていく方法を取っていますが、台湾では前述のとおり、2回目以降は初回よりも“お得”に見せなければ買ってもらえません。
この現金券を、単なる割引ツールとしてではなく「付加価値として、利用できないか?」と考えました。
つまり、”使わなければならない理由”を示しつつ、割引を最小限に抑えるという方法を取ることにしたのです。
「VIPのあなたにしか使えない」「お一人様3本まで」で、特別な感情をくすぐる
具体的には、現金券を封入したDMを制作。
「告知SMS →DM到着 →アウトバウンド →キャンペーン終了前SMS」という流れ
で、再度テストを実施することにしました。
DMの封筒を手にとると、次のような文言が目に飛び込んできます。
(会社名・商品名)から、VIPのあなたに特別プレゼント
DM内に現金券が封入されています。
本人以外は、開けないでください。
このようにシークレット感を出す演出したうえで、封筒を開けると、現金券の実物が同封されています。
DMの内容は、「商品の説明」「商品のベネフィット」「安心安全の訴求」とオーソドックスですが、オファーを工夫しました。
「数量限定」「お一人様3本まで」「有効期限は○月○日まで。」と限定感を出すおなじみの文言に加えて、さらに封入されている現金券を使えば、「定価から10%~20%OFF!」(購入本数による)をうたいます。
そのうえで、「この現金券は、VIPのあなたにしか使えません」「他の人への譲渡はできません」と、ダメ押しするのです。
再テストの結果は・・?
テスト結果は、レスポンス率が19.7%、MRが3.5と、1回目の失敗がウソのような、驚異的な数字が出ました。
しかも、お客様の平均購入本数は2.3本と高い数値を記録しました。
「お一人様3本まで」や、「VIPのあなたにしか使えない」など限定感を煽り、現金券を使うという手法の有効性が実証された結果となりました。
”限定””あなたにしか”などの文句が、想像以上に効力を発揮したようです。
台湾では、過度な値引き合戦がどこでも行われており、お客様自身がその感覚に慣れてしまっています。
そのためリピート購入では、特にお得感を重視して購入判断を行います。
そこで、価格を下げずに、付加価値を上げて価格を維持するというこの方法が功を奏したのには、ホッとしました。
22~25%程度のお客様がリピート購入する、 “暫定版”黄金パターン
台湾進出1年目は「新規獲得の成功パターンの確立」に重点を置いてサポートを行い、2年目からリピート施策に着手をしてきました。
そのため、まだ私たちにも「正解」は見えていませんが、今回ご紹介したような試行錯誤を経て、台湾におけるCRMの暫定版“黄金パターン”と呼べるものが確立されてきました。
この一連の流れで、22~25%程度のお客様がリピート購入してくれるようになりました。
しかも、高い割合で2個以上を購入してくれます。
台湾では「まとめ買い」による割引販売が店頭含めて受け入れられやすいので、広告
投資をキャッシュとして早めに回収できるのです。
日本の通販ノウハウをアジア市場に投入して、大きな利益を生む
今回の結果を受けて改めて感じたのは、日本の通販企業が実施している数多くの販売手法は、その土地に合わせて多少のカスタマイズは必要ですが、海外でも応用が利くということです。
しかも、台湾を含めたアジアはまだまだマーケティング途上国。
ここに通販ノウハウを投入すれば、大きな利益を生むことが、これまでの新規・リピート施策の結果によって実証されています。
台湾における通販ビジネスには、大きな可能性がまだまだ眠っています。
台湾には、これまで定期コースはまったく存在しませんでした。
正直に申しますと、まだまだ険しいチャレンジですが、台湾でも、定期通販という文化(購入習慣)は創れる。その手応えをつかんでいます。
そして、それをいち早く確立した通販企業は、大きな「先行者利益」を得られると考えています。
また明日から一歩一歩、定期コースへ入会してもらうためのノウハウ、定期コース継続の精度を高める施策を確立していきます。