「AISAS(アイサス)」とは、消費者が商品を購入するまでの購買行動モデルのことです。Attention(認知・注目)・Interest(興味・関心)・Search(検索)・Action(行動)・Share(共有)の頭文字をとり、AISASと呼ばれています。
これまで提唱されてきたAIDMAとの違いや、AISASの具体的な活用事例を解説します。
通販事業の現場で使われているKPIを新任担当者でも分かるようにまとめました。
KPIの用語説明や使い方だけでなく、通販のビジネスモデルについても解説しています。
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目次
AISASとは
「AISAS(アイサス)」とは、消費者が商品を購入するまでの行動をパターン化した「購買モデル」の一種です。
以下のプロセスの頭文字を取って、「AISAS」と名付けられました。
消費者が商品やサービスを購入するプロセスを、このように法則化することで、売る側はマーケティング施策を考えやすくなります。
AISASに沿った消費者の行動の具体例を挙げると、以下の通りです。
Attention:認知・注意 | SNSで友人が使っている商品を知る |
Interest:興味・関心 | どんな商品なのか興味を持つ |
Search:検索 | 検索して商品について調べる |
Action:行動 | ECサイトで商品を購入する |
Share:共有 | SNSに購入した商品の写真を投稿する |
このような行動の流れは、多くの人が経験しているでしょう。
AISASは商品やサービスの種類にかかわらず、マーケティングのあらゆる領域で幅広く活用されています。
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AIDMAとの違い
「AISAS」と似たものとして「AIDMA」があり、混同されがちです。
両者の違いを解説しますので、整理して理解しておきましょう。
AIDMAとは?
「AIDMA(アイドマ)」も、AISASと同様に「購買モデル」の一種です。
AIDMAの方が歴史が古く、AISASが登場する前までは、AIDMAがマーケティングの現場で広く活用されてきました。
AIDMAは、以下のプロセスの頭文字を取った名称です。
- A(Attention):認知・注意
- I(Interest):興味・関心
- D(Desire):欲求
- M(Memory):記憶
- A(Action):行動
「Attention」と「Interest」まではAISASと同じですが、その後が異なっています。
AIDMAについて消費者の行動例を挙げると、以下の通りです。
Attention:認知・注意 | テレビCMで商品を知る |
Interest:興味・関心 | 商品に興味を持つ |
Desire:欲求 | 商品が欲しくなる |
Memory:記憶 | 商品のことを覚えておく |
Action:行動 | 店舗で商品を買う |
こちらも、多くの人が身に覚えのある行動パターンでしょう。
AISASの購買モデルに移り変わった理由
AIDMAよりもAISASが主に使われるようになった背景には、インターネットの普及があります。
AIDMAはテレビやラジオ、新聞などのマスメディアの影響力が強かった時代には、消費者の行動をよく反映できていました。
しかし、多くの人がインターネットを使うようになり、それまで人との会話で行われていた自己表現により承認欲求を満たす行為が、ネット上にシフトします。
その結果、マスメディアに代わって消費者自身が発信者となり、状況が変わりました。
AISASのプロセスのうち「Search:検索」と「Share:共有」は、インターネットがあるからこそ一般的になった消費者の行動だといえます。
そして現在では、消費者の行動を考えるうえで「検索」と「共有」は欠かせません。
そのため、一方通行のマスメディアを前提としたAIDMAは「古い」と感じられるようになり、新たに考案されたAISASが多くの場面で使われるようになりました。
とはいえ、AIDMAがまったく使えなくなってしまったわけではありません。
たとえば安価な日用品であれば、消費者は「検索」や「共有」をしない場合が多いため、AIDMAの方が購買モデルとして使いやすいでしょう。
状況に応じてAIDMAとAISASを使い分けることで、適切なマーケティング施策を考えやすくなります。
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AISASの活用事例
AISASの活用事例を3つ紹介します。
参考になる施策があれば、自社でも積極的に取り入れるとよいでしょう。
スターバックス
<AISASに沿った消費者の行動>
1. Attention:SNSで新商品を知る
2. Interest:「おいしそう」と関心を持つ
3. Search:SNSで感想を探す
4. Action:店舗に行って購入する
5. Share:新商品の写真を撮ってSNSに投稿する
スターバックの事例は、SNSを活用したマーケティングが参考になるでしょう。
スターバックスの公式アカウントのフォロワー数は、2022年2月現在でTwitterは約543.1万人、Instagramは約322万人です。
基本的にSNSを活用したマーケティングがメインのため、テレビCMや新聞広告などのマスメディア広告は活用していません。
スターバックスでは、主にSNSや専用アプリで新商品やキャンペーン、クーポンについての発信をすることで、フォロワーからの「認知」や「興味」を集めています。
また、定期的な季節限定商品の販売や47都道府県の各地限定フレーバーである「47 JIMOTO フラペチーノ」などの話題性の高い商品は、「認知」や「興味」を集めるだけでなく、「検索」「行動」を経て期間限定のレア感やトレンドを発信したいという「共有」にまで影響しています。
「共有」したくなる仕掛けは商品だけにとどまらず、店内にもあります。
スターバックスの当初のコンセプトは、家でも職場でもない「サードプレイス」の提供でした。
コーヒーを売るだけでなく、くつろげる場所と雰囲気などの体験を提供することを主軸において店舗を設計しているため、店内での体験をシェアしたくなる消費者が多くいます。
商品にも店舗にも、「共有」したくなる仕掛けを用いることで、SNS上ではスターバックスのフラペチーノの写真や、きれいに撮られた店舗の写真など、消費者から多くの投稿が行われています。
その結果、他の消費者がSNS内で商品の評判などを検索しやすくなるため、さらなる商品の購入という「行動」が促進されます。
ライザップ
<AISASに沿った消費者の行動>
1. Attention:テレビCMでライザップを知る
2. Interest:「自分も痩せられるかも」と興味を持つ
3. Search:インターネットで検索して公式サイトを見つける
4. Action:店舗を訪れて申し込む
5. Share:痩せていく過程の写真をSNSに投稿する
ライザップの事例は、テレビCMとWebサイトを組み合わせた施策が参考になります。
特徴的なBGMと共に流れる、目を引く映像は、誰もが1度目にしただけで強く印象に残るCMです。
このCMでは、BGMで消費者の注意を引き、体験者の前後比較の映像と「結果にコミットする」という訴求方法で、「自分もこうなれるかも」と興味を持ってもらえます。
さらに、CMの最後で検索を促すことで、「注意」「興味」「検索」の一連の行動を促進しています。
実際に、CMを放送し始めた2014年時点からGoogleトレンドの数値が急激に伸びていることから、CMの効果は大きかったといえます。
また、検索して訪れたWebサイトでは、満足できなかったら30日間全額返金保証や、無料カウンセリングなどの特典を付けることで、消費者が「検索」から実際の「申し込み」に至るまでのハードルを低くしています。
そして、実際に申し込みをした人がパーソナルトレーニングの様子や自身のビフォー・アフターを「共有」することで、次の「検索」に繋がりやすい仕組みができています。
AISASの流れをうまく捉えた戦略により、ライザップは今では多くの人が知る会社・サービスとなっています。
メルペイ
<AISASに沿った消費者の行動>
1. Attention:有名人を起用した動画広告やCMでメルペイを知る
2. Interest:キャンペーンに興味を持つ
3. Search:検索して詳細を確認する
4. Action:登録をする
5. Share:メルペイを人に勧めてポイントをもらう
メルペイの事例は、キャンペーンにおけるAISASの流れが参考になるでしょう。
サービスのユーザー数を増やすため、メルペイは2019年に「すすメルペイキャンペーン」を行いました。
メルペイはターゲット層を34歳以下の若年層と設定し、その世代に一番認知されているYouTuberであるHIKAKINやはじめしゃちょーを起用したキャンペーンの動画広告やCMを流しました。
若年層に影響力がある2人を起用したことで、ターゲットに対してキャンペーンの「認知」を広め、消費者の「興味」を集めます。
さらに、「友達を誘って登録をするとそれぞれに1,000ポイント付与」というお得感のある特典を付けることで、「検索」へと誘導することができます。
そしてこのキャンペーンの一番のポイントである「友達を誘って登録をするとそれぞれに1,000ポイント付与」というお得感のある訴求方法の効果で、メルペイを友人や知人、家族に「共有」するという動きが広がります。
勧められる側の人も、既に動画広告やCMなどで認知をしていることが影響し、アプリのダウンロード数が急増しました。
このキャンペーンは「ユーザーが41日間で100万人増加」という成果につながりました。
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その他の購買モデルと活用シーン
購買モデルはAISASとAIDMAだけでなく、他にも多数あります。
ここで比較しながら理解しておくことで、他の購買モデルに触れた際にも、混乱せずに対応できるようになるでしょう。
7つの購買モデルを順に紹介します。
AIDA
AIDA(アイダ)は、AIDMAよりもさらに以前から使われている購買モデルです。
- A(Attention):認知・注意
- I(Interest):興味・関心
- D(Desire):欲求
- A(Action):行動
AIDMAとほとんど同じですが「Memory」がない点だけが違います。
AIDAは商品やサービスの種類を問わず、幅広く活用できます。
だだし、AIDMAと同様にテレビやラジオ、新聞などのマスメディアを前提としているため、インターネットが普及した現代ならではの消費とは相性がよくありません。
AIDCAS
AIDCAS(アイドカス)は、セールスライティングで意識されることが多い購買モデルです。
- A(Attention):認知・注意
- I(Interest):興味・関心
- D(Desire):欲求
- C(Conviction):確信
- A(Action):行動
- S(Satisfaction):満足
AISASと似た部分も多いのですが、最後に「Satisfaction:満足」とある通り、購入後のカスタマーサクセスを重視している点が特徴です。
さらに「Conviction:確信」のステップが加わり、消費者に「この商品・サービスは自分に必要なものだ」と感じてもらうことが意識されています。
実際に、「欲しい」と思った消費者に「購入する」という行動をしてもらうには、さらなる後押しが必要であることは多いものです。
商品を売るためのランディングページを作成する際には、AIDCASを意識すると、効果的な文章を書きやすいでしょう。
AISCEAS
AISCEAS(アイシーズ)は、インターネットを使う消費者の購買モデルです。
- A(Attention):認知・注意
- I(Interest):興味・関心
- S(Search):検索
- C(Comparison):比較
- E(Examination):検討
- A(Action):行動
- S(Share):共有
AISASに「Comparison:比較」と「Examination:検討」が加わったプロセスとなっています。
これは購入や申し込みなどの「行動」をする前に、消費者が慎重に情報収集をして考えることを考慮したものです。
インターネットにいつでもアクセスできて、評判や口コミなどの情報を手軽に集められる消費者を前提としているからこその、購買モデルだといえます。
消費者が「行動」までに時間をかけると思われるケースでは、AISCEASの流れでマーケティング施策を考えるとよいでしょう。
SIPS
SIPS(シップス)は、SNSを強く意識した購買モデルです。
- S(Sympathize):共感
- I(Identify):確認
- P(Participate):参加
- S(Share&Spread):共有・拡散
ここまで紹介した購買モデルは、いずれもAIDMAと似た部分が多く、「Action:行動」を目指してマーケティング活動を行うことが特徴でした。
しかし、SIPSには購入や申し込みにあたる「行動」のステップはなく、代わりに「Participate:参加」と表現されています。
SIPSの流れの例は以下の通りです。
1. S:SNSで新作スイーツの投稿を見て「おいしそう」と共感する
2. I:自分の好みの味かをSNSや公式サイトで確認する
3. P:スイーツを買って味わって、SNSの盛り上がりに参加する
4. S:「おいしかった」と感想を共有し、SNSで情報を拡散する
SIPSでは、消費者は「理性」よりも「感情」で行動すると考えます。
自社商品のファンを作る「ファンマーケティング」では、SIPSを意識するとよいでしょう。
ULSSAS
ULSSAS(ウルサス)は、UGCを消費者の行動起点とする購買モデルです。
UGCとは「User Generated Content」の略で、企業ではなくユーザーによって作られたコンテンツのことであり、「SNSの投稿」が代表例です。
- U(UGC):ユーザーのコンテンツによる認知
- L(Like):SNSでの「いいね」
- S(Search1):SNSでの検索
- S(Search2):検索エンジンでの検索
- A(Action):行動
- S(Spread):拡散
ULSSASはSIPSと同様、SNSでのマーケティングに適したモデルといえます。
また、「Search:検索」の段階が、「SNSでの検索」と「検索エンジンでの検索」に分けられている点も、ULSSASの特徴です。
そのため、情報を集めて慎重に検討する消費者が多いビジネスには、ULSSASが適していると考えられます。
DECAX
DECAX(デキャックス)は、コンテンツマーケティングで使われることが多い購買モデルです。
- D(Discovery):発見
- E(Engagement):関係構築
- C(Check):確認
- A(Action):行動
- X(eXperience):体験・共有
DECAXでは、消費者が企業により公開されているコンテンツを「発見」することが、一連の行動の起点となります。
最初のコンテンツをYouTubeの動画として、消費者の行動例を示すと以下の通りです。
1. YouTubeで動画を発見する
2. 他の動画も見ることで、企業との関係が構築されていく
3. 商品について調べて、自分に合っているか確認する
4. 動画で紹介されていた商品を購入する
5. 商品を使ってみて体験し、SNSで共有する
集客を目的とした動画や記事の公開に力を入れているビジネスでは、DECAXを使うと効果的でしょう。
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SNSやアプリきっかけの購買を想定する「Dual AISAS」とは
AISASを発展させた次世代版といえるのが「Dual AISAS」です。
SNSなどによる消費者同士のコミュニケーションが、より深く考慮されています。
Dual AISASは以下の2つが組み合わさった構造となっているので、順に解説します。
- 「広めたい」のA+ISAS
- 「買いたい」のAISAS
「広めたい」のA+ISAS
まず「広めたい」のA+ISASは、「商品に関連したコミュニケーション」に関心のある消費者の行動をモデル化したものです。
「A+ISAS」のうち「ISAS」は、従来のAISASの「Attention:認知」に関わっており、それぞれは以下の頭文字です。
- I(Interest):興味
- S(Share):共有・発信
- A(Accept):受容・共鳴
- S(Spread):拡散
「拡散」された情報に触れることでさらに「興味」が深まるため、ISASは循環する流れとなっているのが特徴です。
以下に「ISAS」の例を挙げます。
1. SNSで話題になっているダイエットサプリに興味を持つ
2. 「効果がありそう!」と意見をSNSに投稿して発信する
3. その投稿を見た別の人が「こんなサプリがあるんだ!」と共鳴する
4. 共鳴した人が「よさそうなサプリを見つけた」と拡散する
こうしてダイエットサプリの情報は次から次へと広がり、多くの人に認知されるようになります。
また、「A+ISAS」最初のAは「Activate:活性化」を意味し、消費者の興味を「コミュニケーション」から「購買活動」に移します。
「買いたい」のAISAS
「買いたい」のAISASは、従来のAISASと同じ購買モデルです。
ただし「Attention:認知」の内部に、「ISAS」の循環を含んでいます。
「ISAS」の循環から「Activate:活性化」された消費者は、「買いたい」のAISASの「Attention:認知」をした状態となり、AISASの流れに乗ります。
先ほどのダイエットサプリを例にすると、以下の通りです。
1. 認知:SNSでダイエットサプリについて知る
2. 関心:購入したいと興味を持つ
3. 検索:価格や効果などをさらに詳しく調べる
4. 行動:ダイエットサプリを購入する
5. 共有:「こんな効果があった」とSNSで共有する
このように「Dual AISAS」では、従来のAISASに「広めたい」のA+ISASを加えることで、SNSの影響をより現実に近い形で取り入れています。
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スマホ検索に対応するパルス消費モデル
近年注目されている購買モデルとして、スマホ検索をする消費者を対象とした「パルス消費モデル」があります。
パルス消費モデルの特徴は、認知から購入までの時間が極めて短いことです。
紹介してきた購買モデルのようにプロセスを一歩ずつ進めるのではなく、あっという間に商品の購入が完了します。
スマホ検索をきっかけとして、まるで瞬間的な電流(パルス)のように消費者の購入意欲が高まり、即座の購入によって意欲が満たされる、という流れです。
さらに、きっかけとなるスマホでの検索も、検索した商品とは全く別の商品を購入するという脈絡のない行動が多く、パルス消費モデルは他の消費行動モデルと異なり、コントロールの方法が確立されていません。
参考:グーグルが提唱「パルス消費」 スマホ世代の消費行動の新事実
スマホが普及した現在では、「パルス消費モデル」に象徴されるように従来の購買モデルとは全く異なる新しいモデルも出現してくるでしょう。
AISASについて、AIDMAとの違いを含めて、詳しく解説しました。
他にも多種多様な購買モデルを紹介したので、整理して理解するためにお役立てください。
マーケティング施策を考える際には、最適な購買モデルを用いることが大切です。
どのような消費者を対象にするのかや、商品・サービスの特性に応じて、どの購買モデルを使うかを考えましょう。
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