LTVは「Life Time Value(ライフ タイム バリュー)」の略語で、日本語では「顧客生涯価値」と呼ばれています。近年、マーケティングの世界ではLTVが非常に重要視されるようになってきていますが、改めてLTVが何かと問われると答えに困る人も多いのではないでしょうか。この記事では、LTVとは何か、なぜLTVが重要なのかといった基本的な事柄から、LTVの計算方法・LTVを向上させるために必要な施策までをわかりやすく解説します。
の意味とは?計算方法もわかりやすく解説_220202.jpg)
LTV(顧客生涯価値)とは
LTV(Life Time Value/ライフタイムバリュー)とは、「一人の顧客が生涯を通じてどの程度の価値を企業にもたらすか」を表す指標で、通常は10万円、20万円…というような金額で表されます。
「生涯」という言葉が使われてはいますが、LTVは必ずしもその顧客の全生涯を対象として計測するものではありません。
計測対象となる期間は、自社が提供する商品やサービスの販売戦略に基づいて決められます。
たとえばクレジットカードであれば、20歳前後で入会してから生涯にわたって使用され続ける可能性がありますが、スマホのオンラインゲームなどは入会から退会までの期間が2〜3年くらいになるかもしれません。
商品やサービスの性質に応じて期間を定義し、その期間内に顧客からもたらされる想定売上の額をLTVとしてとらえます。
LTVの詳しい計算方法は、この記事の後半で詳しく解説しています。
LTVの重要性
では、なぜ近年になってLTVが重視されるようになってきたのでしょう?
新規顧客獲得のコスト問題(1:5の法則)
背景として、一つにはグローバル化や人口の減少にともなう国内市場の縮小により、「物が売れない時代」が訪れたという事情をあげることができるでしょう。
このようなビジネス環境では、「下手な鉄砲も数撃てば当たる」とばかりに新規顧客獲得にリソースを投下するのは得策ではありません。
というのも、「既存顧客の維持」と「新規顧客の獲得」を比較すると圧倒的に後者(新規顧客獲得)にかかるコストが高いためです。
マーケティングにおいて既存顧客の維持にかかるコストを1とすると、新規顧客獲得にはその5倍のコストがかかると言われています(1:5の法則)。
しかも、一般に新規顧客は玉石混交で、獲得したすべての顧客が自社にとって高い利益をもたらしてくれるとは限りません。
既存顧客の維持と利益率(5:25の法則)
一方、既存顧客の維持に関しては、「5:25の法則」と呼ばれる考え方があります。
これは、「既存顧客の離脱率を5%改善すると、利益率が25%改善される」というものです。
市場が右肩上がりに成長中で、売れば売るほど顧客が増える状況であれば、コストをかけて新規顧客の獲得に注力する戦略も有効です。
しかし、昨今のように「ものが売れない時代」においては、より利益の出しやすい領域、すなわち既存顧客の維持にフォーカスする方が理にかなっています。
そして、この「フォーカスすべき顧客像」を見極めるための指標として、LTVが重視されています。
LTVの計算方法
LTVは「顧客がどの程度の単価の商品を、どれぐらいの頻度で、どの程度の期間に渡って購入しつづけたか」を示す値で、基本的には以下のような計算式で算出します。
LTV=購買単価×購買頻度×継続購買期間

LTVの計算方法の例
このようにして計算した結果が高いほどLTVが高い、つまり自社にとってより多くの利益をもたらしてくれる顧客像であると考えることができます。
LTVの活用方法
このように、LTVを活用することで「フォーカスすべき顧客像を把握する」ことができます。通常はマーケティング施策上の指標としてLTVを利用し、顧客グループ(セグメント)ごとの重要度を見極めたり、LTVの低いグループに対して何らかの施策を打ってLTV向上に取り組んだり…といった使われ方をします。
また、新商品やサービスの開発や販売戦略の策定においてLTVの予測値を活用するといった方法もあります。
LTVを算出する際の注意点については、下記のページもあわせてご参照ください。
LTVを向上させるためには
ところで、LTVを向上させるためには、どのような取り組みを行えばよいのでしょうか?ここで、前述のLTVの算出式をもう一度詳しく見てみましょう。
LTV=購買単価×購買頻度×継続購買期間
この算出式から、LTVを構成する要素は「購買単価」「購買頻度」「継続購買期間」の3つに分解できることが分かります。
LTVの向上に取り組む際にはこれらの要素に着目し、必要な対策を講じます。
- 平均購買単価を上げる
- 平均購買頻度を上げる
- 平均継続購買期間を上げる
ここで重要となるのは「全体のバランス」です。
確かに単価と頻度と継続期間の3つがすべて改善されれば、理論上LTVは向上します。
しかし、やみくもに既存顧客に高単価の商材へのアップグレードをレコメンドすると、敬遠されてしまい顧客離れを起こす可能性もあります。
LTVはあくまでも指標であり、LTVの数値を上げること自体が目的ではありません。
「より良い顧客に、より長くお付き合いいただく」のが最終目的であることを念頭に置き、バランスの取れた施策を検討することが重要です。
具体的な施策
上記を踏まえ、LTVをアップさせるための具体的な施策について、いくつか実例を見ていきましょう。
ターゲティングをしっかりと行う
何よりも大切なのは、マーケティング戦略を立案する段階で、顧客層のターゲティングを適切に行うということです。
これから販売しようとしている商品・サービスをより高頻度に、かつ長期に渡って使用してくれる「ロイヤルティーの高い顧客層」を見極めることが大切です。
セグメントごとに適切な施策を実施
前述のようにターゲットを見極めたら、次はLTVを構成する要素に応じてセグメント分けを行い、セグメント毎に適切な施策を展開していきます。
たとえば、短期で離脱してしまっているセグメントに対しては、商品の良さや使い方を伝えることでLTVの高い優良顧客に育てられる可能性があります。
また、長期間継続してくれてはいるものの単価が低い層には、別の商品をセットで購入してもらったり、より高単価の商材を購入してもらうように、レコメンドする施策が有効です。
重要なのは、各セグメントの性質・状況を把握した上で、正しいストーリーに基づいた施策を展開するということです。
そして、どのような施策を打つ場合でも、「仮説を立て、実施し、検証し、改善する」というPDCAを回すのを忘れないようにしましょう。
CRMとLTV
なお、LTVの向上に取り組む上でぜひ理解しておいていただきたい概念の一つとして、「CRM」についてご紹介しておきます。
CRMは「Customer Relationship Management」の頭文字を並べたもので、一言でいえば企業と顧客との間に良好な関係を築くための総合的な取り組みです。
CRMでは、性別や年齢などの属性、購買履歴や行動履歴といった情報を一元管理し、顧客をより深く理解した上で、より良い関係性の構築に取り組みます。
CRMの考え方を理解し、顧客と良好な関係性を築くことができれば、LTVは自然に向上します。
逆にいうと、LTVの向上に取り組むことがCRMの一環であるとも考えられるでしょう。
いずれにしても重要なのは指標や手法に振り回されるのではなく、本質を理解した上で適切に活用していく姿勢です。
LTVを理解して活用しよう
この記事では、LTVの概要や重要性、LTVの計算方法から活用シーンまでを全般的に解説しました。
LTVは、長期的な企業経営を実現する上で欠かせない重要な指標ですが、一朝一夕に向上できるものではありません。
どのような顧客とどんな関係を築けばより売上を上げられるのか、まで立ち返って戦略を練り、中長期的な視点でLTVの向上に取り組んでいただければ幸いです。