英語の授業で習った「benefit(ベネフィト)」の意味は「利益、ためになること、得をすること」でした。
ビジネスシーンにおける「ベネフィット」は「顧客がその商品やサービスから受ける良い効果」と解されています。
注意しなければならないのは、ベネフィットとメリットの違いです。ベネフィットは「メリットをはるかに上回る良いもの」と理解されています。
顧客にベネフィットを提供することは、企業とビジネスパーソンが常に目指すべき目標にもなり得ます。
通販事業の現場で使われているKPIを新任担当者でも分かるようにまとめました。
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目次
メリットにないものがある
メリットを知ることは、ベネフィットの理解に役立ちます。ベネフィットには、メリットに足りないものがあるからです。
ある家具店において、店員Aは「客のベネフィット」を考え、店員Bは「客のメリット」を考えたとします。どのような違いがあるのでしょうか。
客のメリットを考える店員Bの行動
Bは、来店した客から「椅子を探しに来た」と言われると「どのような椅子をお探しですか」と尋ね、予算、椅子の大きさ、必要な個数、木製か鉄製か、などを質問します。
客がその質問に答え終わると、Bはすべての条件に合致した椅子を紹介します。
客は満足して帰りました。
一見すると、店員Bの行動に間違いは見当たりません。ただ、何かが足りないのです。その足りない部分は、店員Aの行動を見ると分かるでしょう。
客のベネフィットを考える店員Aの行動
一方のAは、客から「椅子を探しに来た」と言われると「どこでお使いになる椅子ですか」と尋ねます。客は「食卓用の椅子がほしいのです」と答えました。
A「失礼ですが、何人家族でらっしゃいますか」
客「私と妻と3歳の子供の3人です」
A「ということは、豪華さや見た目の良さより、機能的で軽い椅子のほうがいいのではないでしょうか」
客「どうしてですか」
A「奥さんが、家事に育児に大変な時期だと思ったからです。掃除機をかけるとき、椅子が重いと動かすのが大変なんですよね。それに小さなお子様がいらっしゃると汚してしまうおそれがあるので、あまり豪華な椅子でないほうがいいように思うのですが」
この客は機能的で軽量の椅子を買い、そして「別の家具が必要になったらまたあの人に相談しよう」と思いました。
心を動かせるかどうかがカギ
顧客にとって「快適に座れる椅子」はメリットです。そして「快適に座れる上に妻にも優しくできること」はベネフィットになります。
その他の商品でも、ベネフィットとメリットの違いを見てみましょう。
ベネフィットは顧客にメリットを与えた上で、顧客の心まで動かすことができるのです。
ベネフィットとメリットと顧客の心の関係は、次の概念図の通りです。
ベネフィット=メリット+顧客の心を動かす
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「顧客のベネフィット」をつかんだ企業が勝つ
格安を売りにしたスーパーマーケットは2000年代以降、常に苦戦を強いられてきました。高級路線のデパートも閉店が相次いでいます。
しかし、売っている商品の価格が安くもなく高くもないコンビニエンスストアは、拡大を続けています。
なぜ「中途半端」な価格帯の商品を売っているコンビニが1人勝ちできているのでしょうか。中途半端な状態は、ビジネスでは不利なような気がします。
それはコンビニが常に客のベネフィットを追い求めているからです。
コンビニが提供しているベネフィットとは
コンビニはかつて、ほとんど安売りをせず定価で商品を売っていました。24時間開いているので「高くてもいいから今すぐほしい」という顧客を取り込むことができたからです。
ところがデフレが長引くと、コンビニはプライベートブランド商品をそろえて安さも追求しました。
しかし安さではスーパーとの差別化ができないため、コンビニはさらに高級路線のプライベートブランド商品をラインナップしました。
現代のコンビニのプライベートブランド商品は、安いものと高級なものに2極分化しているのです。
コーヒーも惣菜もベネフィットになる
格安の本格的なコーヒーや、居酒屋で出てもおかしくないような品質の惣菜、季節ごとに目まぐるしく変わるレジ横のホットフードなど、コンビニのベネフィット追求の徹底ぶりは、他の小売企業の追随を許しません。
コンビニは常に、「うちの店にくる客はどのような生活をしているのだろうか」「その生活を快適にするには何を用意しなければならないのだろうか」と考えているのです。
客にベネフィットを提供できるかどうかは、企業の存亡どころか業界全体にかかわることでもあるのです。
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マーケティングにおけるベネフィットとは
ベネフィットについて詳しく見ていく前に、マーケティングにおけるベネフィットの「立ち位置」について確認しておきます。
マーケティング4本柱の1つ
マーケティングには4本柱と言われるものがあり、ベネフィットの追求はその1つです。その他に「差別化、強み」「顧客の選別と顧客の絞り込み」「4P(製品、価格、販売、流通)」の3つがあります。
それぞれの特徴は次の通りです。
このように並べて見ると、4本の柱が互いに影響し合っていることが分かると思います。
ベネフィットの追求にはその他の3本の柱が欠かせない
ここではベネフィットに焦点を当てているので、ベネフィットとそのほかの3本の柱との関係を見てみましょう。
・他社と差別化できていない製品ではベネフィットを提供できない
・すべての顧客のベネフィットを追求することは不可能。ベネフィットを追求するときはターゲットとなる顧客を設定する必要がある
・自社の製品、価格、販売、流通を磨くことがベネフィット追求の基本作業になる
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「顧客のベネフィット」をどう見つけるか
顧客にどのような気持ちを味わわせれば、企業はベネフィットを提供できたことになるのでしょうか。企業はまさに「ベネフィット探し」をしているのです。
なぜベネフィットは見つからないのか
マーケティングやリサーチに多額の経費をかけている大企業ですら、顧客のベネフィット探しに苦心しています。
ベネフィット探しの難しいところは、答えを聞いてしまえば「なんだ、そんなことか」と感じてしまうことです。
人の感動や喜びや驚きは、意外に小さく意外にありふれていることがあるのです。しかし小さくてありふれたものに「光」を見い出して投資をすることができる企業だけが、顧客にベネフィットを提供できるのです。
人の欲求を想像して創造する
ある企業が「ベネフィットを提供できた」といえるのは、顧客の心を動かすことができたときです。しかし顧客というものは、そう簡単には心を動かしません。
そこでビジネスパーソンには、顧客の欲求を「想像」し「創造」することが求められます。
製品やサービスを買うときの顧客は「こんな感じのものがほしい」と想像しています。しかし顧客が求めているものを提供するだけでは、メリットを売っているだけです。
ビジネスパーソンは顧客自身が気付いていない顧客の欲求を想像し、顧客に「そうそう、本当はそういうものがほしかったんだよ、よく分かったね」と驚かせないとならないのです。
これが「顧客の欲求の想像」です。
陳腐化との戦い
一方「顧客の欲求の創造」とは、世の中にそれまでなかったものを創りだすことです。
1970年以前に生まれた方は、電動自転車、薄型テレビ、携帯電話を初めて使ったとき「ベネフィットを得た」と感じたのではないでしょうか。
想像したものを創造する力も、顧客にベネフィットを提供するときには欠かせません。
しかし平成生まれの人たちは、電動自転車も薄型テレビも携帯電話も、メリットを感じることはあっても、ベネフィットまでは感じないでしょう。
物心ついたときから周囲にある製品やサービスについて、人は鈍感になります。ありがたみをそれほど感じないのです。
ベネフィットを追い求める企業の活動とは、製品とサービスの陳腐化との戦いでもあるのです。
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まとめ~「顧客のベネフィット」にどう寄り添うか
ベネフィットの追求では広告は重要なツールになります。
ただし、ベネフィットの提供を目的とした広告は、いつもとは異なる広告戦略を描くことになります。
なぜなら、企業のほうから「売ります」「買ってください」「見てください」と強く言われると、顧客はベネフィットを感じづらくなってしまうからです。
企業が「儲けにならないけどお客様が喜んでくれそうだからつくる」という製品やサービスを用意して、それを穏やかなトーンの広告にのせて告知すると、顧客はきちんとベネフィットのにおいをかぎ分けるものです。
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