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ブランディングとは「消費者の心とつながる」こと

素材も性能も品質もデザインもほとんど同じなのに、A社の商品は10万円で売ることができて、B社の商品の商品は3,000円でしか売れない――。
ブランドには圧倒的な「稼ぐ力」があるので、企業にとってブランディングは、商品やサービスのつくり込みと同じくらい重要です。
しかし、ブランディング業務に携わっている人なら分かると思いますが「ブランドをつくりあげる」という目標は雲をつかむようなもので、とらえどころがありません。
なぜでしょうか、そして、どうしたらいいのでしょうか。

通販事業の現場で使われているKPIを新任担当者でも分かるようにまとめました。
解説資料はこちら
 
 

雲のようなブランドをどうつかみ取るか

 

ブランディングの定義で最も有名なのは、アメリカの経済学者ケビン・レーン・ケラー氏の次の文章です。

 

「ブランディングは精神的な構造を創り出すこと、消費者が意思決定を単純化できるように、製品・サービスについての知識を整理すること」

 

ブランディングの仕事が、とらえどころがないように感じるのは、「精神」や「意思」にアプローチしなければならないからです。
つまりブランディングは、消費者の「心」を扱う作業なのです。

 

 

華やかに見えるが地道で厳しい仕事

 

お金がすべてを支配する冷酷なビジネスの世界において、ブランディングの仕事だけは、ポエティックで抒情的でメンタルでときにスピリチュアルです。
そのため若い社員や学生は、ブランディングに携わる企画部や広告部、広報部といった部署に憧れます。
しかしブランディングの仕事ほど、地道で泥臭く華やかさから遠い業務もありません。そしてこの仕事には、とても厳しい一面もあります。

 

 

ブランドは誰のものなのか

 

「ブランドという概念」は雲のようなものですが、しかし「ビジネスの現場で扱われるブランド」は、製品やサービス、特許、ロゴ、名称、広告、広報といった形あるものです。
ブランドの所有権は企業にありますが、それと同時に、ブランドは消費者の頭と心の中にも存在していなければなりません。

 

ブランドイメージが汚されたとき、そのブランドを信奉していた消費者が心を痛めるくらいの存在でなければならないのです。
そこでブランディングでは「整合性」が重要になってきます。そしてこの整合性を維持することが、ブランディング担当者の頭を悩ませるのです。

 

 

整合性を保つためには厳しい規律を守る必要がある

 

例えば、「環境に優しい」製品をつくっている企業の社長が、燃費の悪い自家用車をたくさん所有していたら、消費者はどう感じるでしょうか。
もしくは、格安カジュアル服を販売している会社の経営陣の全員が、いつもイタリア製の高級スーツを着ていたら、消費者はどう感じるでしょうか。
「趣味の問題だから、別に気にしない」とはならないでしょう。

 

自社製品のコンセプトとその企業の人たちの行動に整合性が取れていないと、消費者は「裏切られた」と感じて「買わない」という反撃に出ます。法を犯しているわけではないのに、です。
整合性を保つには、企業に規律性や自制心が求められます。これもブランディングの仕事になります。

 

 

ブランドの「座席数」は少ない

 

バッグの世界3大ブランドといえば、エルメス、ルイヴィトン、グッチです。高級車の3大ブランドといえば、メルセデスベンツ、BMW、アウディです。日本の新聞の3大ブランドといえば、朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞です。
もちろん「そのブランドよりあのブランドのほうが価値が高い」という意見は出てくると思いますが、それでも「この分野の有名ブランドといえば?」と聞かれて、10社も20社も挙げる人はいないでしょう。

 

ブランドの「座席数」は少ないのです。企業がその席の獲得を目指したり、せっかく獲得した席を他社に奪われないようにするには、緻密な計算と継続的な投資を行い、ブランディングに取り組まなければなりません。

 

通販事業の現場で使われているKPIを新任担当者でも分かるようにまとめました。
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消費者にとってのブランド

 

消費者たちは、ブランドのことをどう思っているのでしょうか。消費者マインドをつかむことができれば、ブランディング作業がやりやすくなります。

 

 

「希少価値」だけが重要なのではない

 

消費者が渇望するブランドには、価格が高く希少なものという特徴があります。消費者が一度「誰も持っていないブランドを私だけが持っている」という快感を味わってしまうと、ブランドを買うために労働時間を増やすことすらいとわなくなります。
その一方で消費者は、希少性とは真逆の「みんなが持っているからほしい」という気持ちも持っています。価格が安く広く普及しているブランドには、消費者に「仲間外れにならない」という安心感を与えることができるのです。

 

つまりブランディングに取り組む企業が注視すべき点は、「価格の高さと希少性」でも「価格の安さと普及具合」でもなく、消費者の価値ということになります。

 

 

識別性の高さ

 

消費者は「識別性の高さ」に価値を見い出すことがあります。消費者は識別しやすいものが好きなのです。
「手軽に安価に牛肉とパンが食べたい」と考える人が、「ハンバーガーを食べたい」と考える人と「マクドナルドに行きたい」と考える人に分かれるのはなぜでしょうか。

 

「ハンバーガーを食べたい」と思った人は、牛肉のミンチがパンにはさまれた状態の食べ物であれば、手を汚さず数分以内に食べ切ることができることに価値を見い出している人です。
「マクドナルドに行きたい」と思った人は、マクドナルドの商品構成や価格帯、店の雰囲気に価値を見い出しているわけです。
つまり「手軽に安価に牛肉とパンが食べたい」と思った人を取り込むことができているマクドナルドは、識別性を高めることに成功しているといえます。

 

 

固定概念の強さ

 

「頑丈な時計といえば」「日本一高い建物といえば」「格好いいスマホといえば」
突然このような質問をされても、即座に「Gショック」「スカイツリー」「iPhone」と答えることができるのではないでしょうか。

 

この3つの商品は、消費者の固定概念の形成に成功した製品です。
もちろん他にも選択肢はありますが、しかし多くの消費者は「頑丈な時計の代名詞はGショック」ということに異論は唱えないでしょう。
固定概念の強化というブランディングに成功した製品は、「とりあえず外れないものを買いたい」という消費者を取り込むことができます。

 

では、次の質問はいかがでしょうか。
「写りが良いデジカメといえば」「こってり味のカップ麺といえば」「ワンルームのアパート向きのテレビといえば」
恐らくすぐには答えが出ないのではないでしょうか。デジカメメーカーとカップ麺メーカーとテレビメーカーは、固定概念強化のブランディングに成功していないということになります。

 

 

意味やストーリー

 

Gショックのデザインや機能、使い勝手にほれ込んでいる人でも、仕事で成功して収入が増えると「とりあえずロレックスの1本でも買っておくかな」という消費行動を起こします。それはロレックスには「時間を計測する機器」という意味の他に、「お金持ちの人が持つもの」という意味があるからです。

 

女性向けバッグに興味がある人で「エルメスは馬具づくりから始めた」というストーリーを知らない人はいないでしょう。そういう人が、ブランドに興味を持ち始めた女子中学生から「どうしてエルメスっていうバッグはあんなに値段が高いの?」と聞かれたら、「エルメスは昔、馬具メーカーでね…」とエルメス物語を語り継ぐのではないでしょうか。
ブランドを求める消費者は、ブランドが持つ意味やストーリーに対し、とても強い敬意を払っています。

 

 

ブランド以上のものを求める

 

ブランドにミステリアスを求める消費者もいます。ブランドが確立された商品やサービスに高いお金を支払うことが気にならない人は、富裕層です。富裕層はたくさんのブランド品に接触しているので、「そろそろブランド品に飽きてきた」という状態に陥ることがあります。
これは、ブランドの陳腐化とはまったく別の現象です。

 

しかし「ブランドじゃないものがほしい」というリッチパーソンの心理も、ある意味でブランド志向といえます。珍しいもの、いままで世の中になかったもの、とてつもなく高額なものは、ブランドを超越したブランドを構築するポテンシャルを持っているのです。

 

通販事業の現場で使われているKPIを新任担当者でも分かるようにまとめました。
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企業にとってのブランド

 

ブランディングに成功したかどうかを測るモノサシのひとつに「原価率の低さ」があります。材料費や製造コストをはるかに上回る価格で製品やサービスが売れると、原価率は低くなります。
原価率が低ければ低いほど、企業は大きな利益を上げることができます。これがブランディングに成功した企業の果実となります。

 

 

多額の投資を回収できる

 

「レクサス」というブランドはご存知でしょうか。もちろんトヨタの高級車ブランドです。では「アキュラ」と「インフィニティ」はご存知でしょうか。
アキュラはホンダの、インフィニティは日産の高級車ブランドですが、日本ではあまり知られていません。
なぜトヨタはレクサスのブランディングに成功し、ホンダと日産はうまくいかないのでしょうか。

 

それはブランディングには莫大な費用がかかるからです。
トヨタはレクサスのブランディングのために、レクサス専用の車をつくり続けています。もちろん一部の部品はトヨタブランドの車と共有していますが、レクサス専用のデザインでレクサス専用の高級部品も多数使用しています。レクサスの車をつくる作業員は熟練工です。
レクサスは専用の販売店でしか売りませんし、レクサス店の整備工場で使われている工具は「LEXUS」のロゴが入りの特注品です。

 

しかし、これだけの投資をすれば顧客から「レクサスもようやくメルセデスベンツやBMWに追いついたな」と認めてもらえるようになり、原価率の低い車を大量に売ることができるのです。

 

 

テレビCMを打たなくても売れる

 

スターバックスのコーヒーの値段は若干高めに設定されているのに売れ続けています。原価率が低い上に大量に販売できるので、スターバックスは儲かっているのです。
しかもスターバックスはテレビCMをまったくやっていません。

 

マクドナルドもレクサスも、莫大な広告費を支払って毎日大量のテレビCMを流しています。CMを打たないスターバックスは、ブランディングの成功によって浮いた広告費を利益に計上できる企業といえます。

 

 

ブランディングに失敗するとどうなるのか

 

ブランディングはお金がかかる上に簡単ではないので、企業の経営者の中には「ブランディングは虚像を追いかけるようなもので我が社の本業ではない」と考える人もいます。
しかしブランディングに失敗した企業や、ブランディングをあきらめた企業は、価格競争という負のスパイラルに巻き込まれてしまいます。

 

「ブランディングに成功=高価格で売れる=原価率が低くなる=利益性が良くなる」という公式が成り立つということは、「ブランディングに失敗=価格競争に陥って安値で売る=原価率が高くなる=利益が小さくなる」ということでもあります。
しかも消費者は、値下げした商品に対して「安物」という悪いイメージを持ちます。つまりブランディングの失敗は、さらなるブランディングの失敗を呼ぶのです。

 

 

「良い企業」というイメージもつくる

 

またブランディングに成功すると、売上や利益だけでなく、人材、資金、販売経路が獲得しやすくなります。良いブランドを打ち出せている会社は良い企業というイメージが生まれるからです。
つまりブランディングは経営そのものといってもよいのです。

 

通販事業の現場で使われているKPIを新任担当者でも分かるようにまとめました。
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ブランディングの手順

 

<ブランドに欠かせないアイデンティティは3ステップで確立させる>

 

ブランドは、時間とお金をかければいつか完成する、というものではありません。戦略を練り計画的に作業を進めることでしか成長しません。
ブランディングとは、自社の製品とサービスという「子供」を育てていくようなものです。

 

 

顧客層と市場での位置を決める

 

ブランディングに取り組む企業が最初に行うべきことは、顧客層の設定と市場での位置決めです。つまり企業の主戦場を定めることからブランディングが始まるのです。

 

ターゲットとなる顧客層が決まらないと、広告や広報のテイストが決まりません。また、自社の強みと弱みを分析した上で、市場における現在の位置を把握し、より高い地位を得るための「強みの強化策」と「弱みの解消策」を練ることになります。

 

 

アイデンティティを構築する

 

アイデンティティを構築する作業は、コンセプトづくりよりも入念に行う必要があります。製品コンセプトは後から変更できますが、ブランド・アイデンティティを変更することはできません。
「変更できない」というより、どうしてもブランド・アイデンティティを変更しなければならない事態は、そのブランドの消失を意味します。
ブランド・アイデンティティ構築の具体的な作業は、「理念」という文章を作成したり、「必ずこれを行う」「絶対にこれはしない」という社内ルールを定めたりすることです。

 

 

アイデンティティの見える化

 

アイデンティティの構築は経営陣や幹部社員が行いますが、この段階ではまだ全社員に浸透していません。そこで、マニュアルづくりや社内広報や社内勉強会などを通じて、アイデンティティの見える化に取り組まなければなりません。
広告代理店や広報コンサルタントにも順次、アイデンティティを「見せる化」していきます。

 

 

情報発信

 

ブランディング作業はいよいよ、消費者の頭と心に訴える作業に入ります。
テレビCM、マスコミ取材、ホームページ、SNS、キャラクターづくりなど、ブランドを伝える媒体や方法はたくさんあります。しかし媒体の選択を誤ると、ブランドづくりが台無しになります。

 

そこで重要になるのが、ターゲットとなる顧客層と目標とする市場での位置付けです。
広告代理店や広報コンサルタントをフル活用して、「その顧客層」「その市場」に届く媒体を探さなければなりません。
ブランディングでは、情報発信する情報の中身はもちろんのこと、情報発信の方法まで気を配らなければならないということです。

 

 

時間に惑わされないようにする

 

ブランド化の成功に要する時間は、そのときに経済情勢や流行などによりまちまちです。
たまたま流行の波に乗れば、想定より早く世間に価値の高いブランドとして認知してもらえますが、短命で終わる可能性もあります。
また、製品の発売当初はまったく売れなくても、長年地道につくり込んでいくうちに、突然「火」が付くこともあります。

 

 

チャレンジ精神が必要

 

ブランドを築き上げるには、これまで世の中になかったものをつくる必要があります。ときに周囲から「そんなものは絶対に売れない」と言われても、多額の投資をしてつくり上げなければならないこともあります。
このようなチャレンジ精神は、良いものをつくるために欠かせないばかりか、ブランドの意味付けや物語性にも関わってきます。
誰でも考えそうなものをつくっても、ブランド化することはできません。

 

通販事業の現場で使われているKPIを新任担当者でも分かるようにまとめました。
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まとめ

 

便利なもの、おいしいもの、美しいもの、格好いいもの、コスパに優れたものが、次々消えていきました。なぜ「良いもの」が消えてなくなったのかというと、消費者はすぐに裏切るからです。
「ブランド」という言葉を調べていくと、すぐに「ロイヤルティ(忠誠心)」という言葉に出会うと思います。ブランディングとは、その製品やサービスに忠誠を誓う消費者を獲得することに他なりません。
 
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