注目を浴びているD2Cの事業モデル。日本では2010年代後半から盛り上がりを見せ、「D2C」そのものはかなり浸透してきたといえます。しかし、どのように展開すればいいかわからない人も多いかと思います。今回はすでに事業を展開している「海外D2Cブランド10選」を紹介します。
D2C事業の現場で使われているKPIを新任担当者でも分かるようにまとめました。
KPIの用語説明や使い方だけでなく、D2Cのビジネスモデルについても解説しています。
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D2Cとは
D2Cとは「Direct to Consumer」の略で、メーカーが直接(Direct)消費者(Consumer)に製品を販売するビジネスモデルを意味します。
混同されやすいBtoCは、製造者と消費者の間に代理店や小売などの仲介業者を介するのが一般的です。一方、D2Cは仲介業者を取り払い、自社で企画から製造・販売までを一貫して行ないます。
D2C事業の現場で使われているKPIを新任担当者でも分かるようにまとめました。
KPIの用語説明や使い方だけでなく、D2Cのビジネスモデルについても解説しています。
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D2Cの海外ブランド事例10選
ここでは、D2Cが先行している海外のブランド10選を紹介します。
1. Warby Parker(ワービー・パーカー)
2. Casper(キャスパー)
3. INDOCHINO(インドチーノ)
4. Yumi(ユミ)
5. Perfect Diary(パーフェクト・ダイアリー)
6. Everlane(エバーレーン)
7. Glossier(グロッシアー)
8. Curology(キュロロジー)
9. Dollar Shave Club(ダラー・シェーブ・クラブ)
10. Allbirds(オールバーズ)
Warby Parker(ワービー・パーカー)
Warby Parker(ワービー・パーカー)はニューヨーク発のアイウェアブランドで、自社で企画から販売まで行うことで従来の平均価格の半分以下で提供できています。
百貨店やモールなどへの出店手数料を抑えるため行っているのが、「Home Try-On」と呼ばれる自宅での無料メガネ試着サービスです。サイトで好みの5種類を選び送られてくるのでその中から気に入ったものを購入、残りは5日以内に返送する仕組みです。
店舗に行かなくても試着ができることで「メガネは実店舗で購入するもの」という考え方を持っていた消費者の購入のハードルを下げることができました。
オンラインでの販売をメインとしてきたWarby Parkerですが、顧客とのつながり強化のため、現在では全米に120以上の店舗を構え、実際の試着だけでなく目の検査を行うことも可能です。
その他、「眼鏡が1つ売れたら途上国に1つ寄付する」という取り組みをしており、社会貢献意識が強い若い世代へのブランディングにも成功しています。
Casper(キャスパー)
Casper(キャスパー)はニューヨーク発のマットレスを販売するD2C企業です。
Casperはわずか6年で上場しており、その成功要因として考えられるのが「購入から受け取りまでの手軽さ」と「折りたたみ梱包可能なマットレス」の2点です。
それまでアメリカでマットレスの購入は、店舗で購入、配送に最速1週間、設置のため当日自宅待機と、受け取りが容易ではありませんでした。しかし、Casperは購入はオンラインでどこにいても可能、配送までは最速1日遅くて1週間以内、かつ梱包を工夫し、簡単に受け取りや設置が可能な形にしました。
またサステナブルな消費につながる、というところも選ばれる理由の1つでしょう。折りたたみができず運搬不可能や壊れるといった理由から引っ越しのたびに捨てる人が多かったマットレスを、スプリングを排除することで長く使えるようにしました。
このように、他の企業がアプローチできていなかった課題に取り組み、一気に売上を伸ばした事例です。
INDOCHINO(インドチーノ)
INDOCHINO(インドチーノ)は男性向けのオーダースーツブランドです。
完全なオーダーメイドではなく、いくつかあるパターンの中から基本となるパターンを選び、その後に肩のタイプやポケット、ボタンの数・色など細かい箇所をカスタマイズするスタイルです。完全なオーダーメイドと比較すると、安価に自身に合ったスーツを作ることができます。
採寸は自分で測ってデータを送るオンラインと、店頭でスタッフが採寸するオフラインのどちらでも可能で、店舗はあくまで顧客と向き合う場として設けられています。
このように体型やどのようなスーツが売れるのかというデータ収集ができる点はD2Cの強みであり、INDOCHINOが拡大していく上で大きなメリットになっています。
Yumi(ユミ)
Yumiはニューヨーク発のサブスクリプション型の高品質ベビーフード配達サービスです。
提供しているベビーフードは、赤ちゃんが生まれてからの年月を基準に7ステージに分けられています。1日1食のプランが約3,900円(35ドル)/週、約12,000円(112ドル)/月となっていて、最大1日3食まで選択可能です。
Yumiは、創業者が妊娠した際に感じたベビーフードに対する新鮮で高品質なものがない、という課題を解決するため立ち上げられました。自分自身の「想い」を実現しようとした結果、作ったものを直接消費者に届けられるD2Cモデルになったといえます。
Perfect Diary(パーフェクト・ダイアリー)
Perfect Diary(パーフェクトダイアリー)は立ち上げから3年で中国の大手ECサイト「Tmall」で大手メーカーを抑えて化粧品カテゴリー売上1位となった中国発のコスメブランドです。
特徴は顧客へのアプローチ方法です。Z世代をターゲットとしているため、KOL(日本でいうインフルエンサー)と連携をとり、SNSでの集客やECサイトの拡充に力を入れています。
また、コミュニティに商品の購入者を招待し、商品への感想や疑問点などのフィードバックを受け、それらを次の商品開発に反映するといった取り組みも行っています。
「D2C」に欠かせない顧客の声を集めることと、ファンマーケティングを両立させる仕組みを作り上げた事例です。運営元のヤッセンはこの仕組みをPerfect Diary以外の6ブランドにも展開することで売上を拡大しています。
Everlane(エバーレーン)
Everlane(エバーレーン)は、サンフランシスコ発のD2Cアパレルブランドです。D2Cモデルにすることで大幅に中間コストを下げ、かかった材料費・制作費・労働費などのすべてを公開しています。
その理由は、エバーレーンが掲げる「過激なまでの透明性」にあります。
アパレル業界では、そのシーズンに売り切ることができなかった商品は来シーズンに回されることはほとんどありません。大量の焼却廃棄やその生産に伴う過重労働を強いる業界のあり方を問題視し、工場で働く人々の様子や自社製品を他社で売った場合の価格などをサイトに掲載しています。
売れ残った商品は「Choose What You Pay」と顧客に値付けしてもらう仕組みを導入するなど、環境負荷の軽減に取り組んでいます。
D2Cに欠かせない ”世界観” を、生産から販売まですべての工程で体現することができている企業です。
Glossier(グロッシアー)
Glossier(グロッシアー)はミレニアル世代から支持を集めるニューヨーク発祥のD2Cコスメブランドで、顧客の声をもとに商品開発がされるほど顧客を重視している点が特徴です。
ファンが構成する「Into The Gloss」というコミュニティがあり、商品開発や批評、新商品の拡散もすべてこのコミュニティの顧客を中心に行われます。そのため、新商品が発売されても販促目的のプロモーションは実施しません。百貨店や大手ECモールでの販売も一切行わず、集客はSNSを中心として自社のサイトのみで販売しています。
背景の1つにはサステナビリティへの意識があります。店頭での販売コストやマーケティング費用をできるかぎり抑え、求められている最低限だけ生産できるような体制を作っています。
また、コミュニティの形成によって「確実に良い商品を見つけ出す」仕組みを作っているのもGlossierが支持される要因でしょう。
UGCを活かしたプロモーションはすでに誰かが使っているという安心感があり、「本当に良いものかどうか」を判断するのに費やす時間と労力を短くしてくれます。確信を持って購入できる安心感はGlossier独自のものだといえます。
Curology(キュロロジー)
Curology(キュロロジー)はサンディエゴ発のスキンケアD2Cブランドです。「肌の悩みで病院には行きづらい/面倒そう」「自分に合った市販薬を見つけるのも難しい」という人たちのために皮膚科医が始めたサービスです。
特徴は、病院へ足を運ばなければできない医師とのコミュニケーションがオンラインで完結すること。顧客が撮った顔写真のデータをもとに、皮膚科医がクリームの配合成分を調整、自宅に配送されるという仕組みです。
オンライン完結により顧客とのコミュニケーションが軽薄にならないよう、
- 担当スタッフの写真と名前を表示する
- 質問への返信は1日以内に行う
などの取り組みも行っています。
Curologyのwebサイトでは、スキンケアや他社製品も含む市販品について紹介しており、顧客第一の姿勢が信頼につながっています。
デジタル技術によって「医療費が高額なアメリカで病院に行く」ことの課題を解決しつつ、顧客との関係性づくりに成功している事例です。
Dollar Shave Club(ダラー・シェーブ・クラブ)
Dollar Shave Club(ダラー・シェーブ・クラブ)はロサンゼルス発の男性向けカミソリのサブスクリプションサービスで、創業から5年で約169億円の売上高を記録しました。
YouTube動画をきっかけにたった2日間で12,000件の申し込みを獲得し、4年間で契約者は300万人を超えました。
当時寡占状態だったカミソリ業界で伸びた理由の1つは、他社を凌ぐ圧倒的な低価格であったことです。直販によるコストカットと製品の種類を絞り込むことで、低価格での販売を実現しました。
また、顧客の購入の手間を取り除くためサブスクリプション型にしたことで、店舗販売中心のインフラを築いていた他社には簡単には真似することが難しかったことも成功の要因といえます。
2016年にユニリーバに買収されていますが、短期間でユーザー数を伸ばした事例です。
Allbirds(オールバーズ)
Allbirds(オールバーズ)は天然由来の素材を使い、快適な履き心地とシンプルなデザインを売りとしているスニーカー中心のアパレルブランドです。
サステナビリティ(持続可能性)をブランドメッセージとして強く押し出しており、できる限り石油は使わずユーカリやウールを使用して環境問題に配慮した商品作りを行っています。
品質の高さも選ばれる理由の1つで、メリノウールという柔らかい素材を使用しているため、通気性とフィット感が良い商品です。
このような高い機能性で他の企業とは異なるポジショニングに成功し、環境への配慮がされたスニーカーというブランドストーリーによってD2C企業に欠かせない世界観を確かなものにしています。
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海外のD2C市場規模は?
アメリカの2021年度D2C市場規模は約17兆4,000億円(1,283億3,000万ドル)に拡大しました。
(参考:eMarketer 米国のD2CEコマース売上高、2018年から2024年より)
これまで製造元のメーカー・ブランドは、販売してくれる仲介業者ありきのBtoBビジネスモデルでしたが、ECの台頭により百貨店やアパレルなどの倒産が相次ぎました。そこで仲介業者に頼らず、消費者に直接販売できるD2Cモデルが急拡大したと考えられます。
D2Cが広まった背景、日本と海外の違い
D2Cが広まったのは、主に2つの要因です。
1つ目は消費行動の変化です。インターネットの普及とともに成長した世代をミレニアル世代と呼び、彼らは高級車やハイブランドなどを持つことに価値を感じづらくなっています。
モノを持つことよりも、旅行・友人や家族との食事・習い事などの体験に価値を感じるようになり、物欲を満たすモノ消費よりも精神的な豊かさを求めるコト消費が増えてきました。独自の世界観を持つD2Cブランドはそんな消費者のニーズに答えています。
機能がすべての時代から、そのブランドが持つ世界観から得られる経験までを含めた「コト付きのモノ」が求められるようになっています。
2つ目はインターネットの普及です。インターネットの普及で企業と個人の距離が近くなりました。
特にSNS利用者の拡大が著しく、2021年6月時点で45.5億人です。Twitterは約3億3000万人、Instagramは約10億人、Facebookは約28.5億人の利用者がいます。「良い商品」であれば、SNSを通じて消費者に見つけてもらえるようになり、製造元のメーカー・ブランドも商品の良さやコンセプトを届けやすくなりました。
「ミレニアル世代の消費行動の変化」「インターネット・SNSの普及」により顧客との接点が増え、D2C事業モデルが広まってきています。
D2C事業の現場で使われているKPIを新任担当者でも分かるようにまとめました。
KPIの用語説明や使い方だけでなく、D2Cのビジネスモデルについても解説しています。
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日本でD2Cブランドが成功するには
顧客は、商品やサービスの機能以外に「顧客体験」も求めるようになりました。そのためブランドが持つ世界観、商品の裏にあるストーリーなどを明確にしてターゲットに届けることが重要です。
ブランドが大事にする世界観や掲げる理念、商品のストーリーに魅力を感じれば、類似した商品・サービスであっても大きな差別化につながり他社が真似できないものになります。
今回紹介した海外ブランドの成功事例が日本にそのまま当てはまるわけではありません。しかし、既存D2Cブランドが持つ特徴や共通点を理解することは、日本でのD2C展開に役立つと考えています。
- 店舗に行かずともメガネを購入できるビジネスモデル
- カウンセリング付きのスキンケア
- 高機能でサステナブルなスニーカー
- 原材料や労働費・輸送費などの原価をすべて公開するアパレルブランド
- リーズナブルで高品質なオーダースーツ
D2Cモデルで成功させるためには、上記のように他ブランドがもっていないポジションの確立は欠かせません。今回紹介した事例がD2C参入の参考になれば幸いです。
D2C事業の現場で使われているKPIを新任担当者でも分かるようにまとめました。
KPIの用語説明や使い方だけでなく、D2Cのビジネスモデルについても解説しています。
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