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D2Cの意味は?B2CブランドやEC通販、SPAの事業モデルとの違いは?

2010年代後半から注目されている、「D2C」の事業モデル。ところがその定義や意味は、人によってさまざまです。国内外で出版された専門書4冊を調べたうえで、「D2C」の意味と定義を日本の実態に即して、具体的に分かりやすくまとめました。

D2Cブランド

D2C(D to C)とは?B2CやB2Bからおさらい

 
D2C(D to C)とは、「Direct to Consumer」の略。
消費者(Consumer)に直接(Direct)製品を販売する事業モデルのことです。
 
B2C(B to C)という言葉は、なじみがある方も多いでしょう。
B2B(B to B)は法人向けビジネスですが、B2Cは個人向けビジネスという違いがあります。
 

ビジネスモデル 顧客 販売方法
B2B 法人 さまざま
B2C 個人
D2C 顧客に直接販売する

 
D2Cブランドの多くは個人消費者向け、すなわちB2C の事業モデルであり、そのなかでも「Direct」(直接)に消費者と接点をもつことが強調されています。
 
小売や流通を介さずに、メーカーが顧客に自社で作った商品を販売
それにともない、企業に顧客からのフィードバックが直接に届くことが、D2Cの特長です。
 

自らがメーカーであり、オリジナルブランドをもつ企業が、自社の製品を直接に販売するモデル

 

(「D2C戦略が小売を変革する RETAIL DX」三崎憲一郎 FABRIC TOKYO)
 
私がD2Cをテーマとした本を4冊読んだ限りでは、上記の定義がシンプルで最も分かりやすく理解できました。
 
 
 

「SPA」や「EC通販」など既存の事業モデルとの違いって?

 
では、なぜ最近になってD2Cブランドが注目されているのでしょうか?
既存の事業モデルと比べながら、その独自性をひも解いていきましょう。
 
 

SPA(製造直販)との違い:店舗メイン VS デジタル中心

 
SPAとは、製造小売業を意味し、卸売りをせず自社製品を自社直営の小売店で販売する「製販一体の事業モデル」のこと。
 
国内では、ユニクロやニトリ、無印良品などが有名です。
 
単なる小売業ではなく、商品企画から製造、販売まで一気通貫で担っているという点では、D2Cと共通していますね。
 
両者の違いは、販売チャネルがリアルか?ネットか?です。
 
SPAでは、店舗での対面販売がメインです。
もちろんユニクロもニトリもネット販売に力を入れていますが、売上規模は2021年時点では店舗の方が圧倒的な大きさ。
ECは、補完的な存在と言えるでしょう。
 
D2CはECサイトでの販売、デジタルが主戦場です。
D2Cにも自社直営の店舗を構えているブランドはありますが、販売目的というよりはショールームや顧客とスタッフの交流の場として位置付けている場合が多いようです。
 
コンビニやスーパーマーケットなどの小売業が展開するPB(プライベートブランド)との違いも同じです。
デジタルに軸足を置くのが、D2Cの特長です。
 
 

ECや通販での違い:モール・卸販売 VS オリジナル商品×自社ドメイン

 
ネット販売である「EC」が主体のブランドなら、D2Cに限らずとも数多くあります。
店舗ではなく非対面がメインの「通販」という業態は、20世紀初頭から普及してきました。
 
では、一般的なECや通販とD2Cとの違いは?というと、自社商品を直接顧客に販売しているということです。
 
国内のEC事業者でも、自社サイトでの販売を主軸としている企業は少ないはずです。
 
・Amazon・楽天・Yahoo!ショッピングなど、ECモールでの販売
・セレクトショップなど、他社ECサイトへの卸販売
 
をメインとしている事業者が、数としては多いようです。
 
D2Cは、自社サイト(いわゆる「自社ドメイン」)での販売を軸としています。
 

DtoC -Direct to Consumerはすなわち、企業・事業の主体が直接顧客へ働きかけることを意味しています。(中略)
DtoCは基本的に製販一体となります。また、宣伝販促でも企業が主体的に消費者とのコミュニケーションを図ります。

 

Dto C AFTER 2020 日本ブランドの未来」株式会社フラクタより
 
Amazonや楽天を通して商品を購入した顧客は、連絡先など個人情報を取得・活用しにくいため、フォローのメールを送ったり顧客からフィードバックをもらったりといったコミュニケーションをとりづらいのが難点です。
 
一方、自社サイトで販売すれば顧客と直接接触できます。
リピート購入を働きかけやすくなること、ブランドを意識してもらいやすくなることも、D2Cの特長です。
 
 
 

「メーカー通販」や「単品通販」と結局は同じ?それでも革新的と感じたポイント

 
前章で解説した「自社オリジナル商品を、独自ドメインのECサイトで販売する」という事業モデルだけに注目すれば、メーカーが運営しているECサイトとも共通していますね。
 
メーカー通販では、美容・健康分野を中心に「単品リピート通販」という業態も、1980年代から盛り上がりを見せていました。
「やずや」や「オルビス」などが有名です。
 

(単品リピート通販とは)健康食品や化粧品などリピート性のある商材を、EC通販で顧客に直接販売している事業を指すことが一般的です。

(「単品リピート通販とは?業界上位企業の売上ランキングと、ビジネスモデルの特長」より)
 
・一度購入した顧客には、メールやDMなどで商品の良さや開発の背景、会社の理念や世界観などを伝えていく
顧客と直接に交流しながら結びつきを深め、一人の顧客と長期間付き合いリピート購入してもらうことで、LTV(ライフタイムバリュー)を伸ばしていく
 
という収益モデルは、D2Cとも近いように感じます。
このような共通点から、広告・マーケティング業界では「単品通販・D2C」や「単品通販(D2C)」などと表記する例も見つかるほどです。
 
 

広告ドリブン VS SNS・コミュニティ活用

 
では何が違うのか?
明確な差異は表現しにくいですが、あえて言語化するなら、商品開発やマーケティングの背景にある哲学や考え方でしょう。
 

( D2Cとは)新しい消費の価値″を持つミレニアル世代以下のターグットに対し、ユニークな世界観を下敷きにしたプロダクトとカスタマーエクスペリエンス、SNSや店舗を通じた顧客とのダイレクトな対話、垂直統合したサプライチェーンを武器に、VCから資金調達を行い、短期間に急成長を目指すデジタル&データドリブンなライフスタイルブランド

 

D2C 『世界観』と『テクノロジー』で勝つブランド戦略」(佐々木康裕)より
 
と定義だけでは抽象的ですが、一例を挙げると顧客とのコミュニケーションの方法です。
 
単品リピート通販は、新規顧客を獲得するため広告費を大量に投入するのが前提の事業モデルです。
一方D2Cブランドは広告は活用しつつもオーガニック(広告以外)の集客チャネルにも力を入れる企業が多いようです。
 
・Instagramをはじめ自社のソーシャルメディアのアカウント運用に力を入れる
・社長やスタッフがTwitterなどで数万人単位のフォロワーを抱える「インフルエンサー」
・自社製品を愛用してくれている有名人や専門家などに「アンバサダー」として発信してもらう
 
など、SNSやコミュニティを活用したコミュニケーションが得意な企業が多い印象です。
 
 

世界観・ストーリーへの共感が、優位性をつくる

 
上述の書籍では、アメリカなどでの企業事例をもとに、D2Cブランドと伝統的なブランドとの違いを解説しているので、詳しく知りたい方はご一読ください。
 
D2Cブランドと伝統的なブランドの違い

「D2C 『世界観』と『テクノロジー』で勝つブランド戦略」(佐々木康裕)より
 
個人的に“革新的”と感じたのは、米国で成長しているD2C企業が、ブランドの世界観に「社会的意義」を強く織り込んでいること。
 
例えば「EVERLANE(エバーレーン)」というアパレルブランドは、ファッション業界で蔓延する「途上国での児童労働」や「工場での水の大量使用」などを問題視。
そこから「徹底的な透明性」を掲げ、製造工程や環境負荷、果ては原価までも公開するオープンな姿勢が、特に若い世代の顧客の人気を集めているそうです。
 
他にも、メガネを販売する「Warby Parker (ワービーパーカー)」は、「見る権利は全ての人にある」というミッションを掲げています。
そのミッションを単なるお題目とせず、スタートアップ当初から「メガネが1つ売れるたび利益の一部を途上国へ寄付する」という社会貢献に取り組んでいます。
 
これらの「社会的意義」は1つの例ですが、米国で成功していると言われるD2Cブランドには、顧客が共感しやすいストーリーや世界観を形づくり、企業姿勢やプロダクトなどを一貫させることによって、マーケティングにおいても優位性を保っている企業が多い印象です。
 
既存の事業モデルとの違いや共通点を理解した上で、D2Cならではの特長をつかむことに、この記事が少しでも役立つことを願っています。