美容業界でも「D2C」に挑戦して成功をおさめる企業が増えてきました。この記事では、コスメとヘアケア分野の成功事例6つをサービス内容やプロモーションの特徴とともに紹介します。
D2C事業の現場で使われているKPIを新任担当者でも分かるようにまとめました。
KPIの用語説明や使い方だけでなく、D2Cのビジネスモデルについても解説しています。
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コスメ・化粧品ブランドのD2C成功事例6選
ここではD2Cブランドの成功事例を6つ紹介します。
コスメ・化粧品ブランドの事例①「Glossier」
Glossier(グロッシアー)は「顧客中心主義」と「サステナビリティな経営」が特徴のD2Cコスメブランドです。「Into The Gloss」と呼ばれる顧客同士のコミュニティの意見を商品に反映したり、新商品の拡散も顧客を中心に行われます。
また、従来の大量生産・大量消費を課題と考え、ニーズがある製品を必要最小限で生産しています。大量生産で原価を下げることができない代わりに、Instagramを中心にプロモーションを行い、自社サイトのみで販売することでマーケティングにかかるコストを削減しました。
顧客の声を反映したニーズがある商品を生産し、小売店を介さず自社で販売数を把握することで「サステナビリティな経営」を実践しています。この姿勢は環境に課題意識を持つミレニアル世代に支持されています。
また、顧客を中心としたプロモーションは、自分と同じ消費者が商品を使い評価しているという安心感にもつながります。「本当に良いものかどうか」を比較検討する手間と時間をかけることが当たり前になっている人々にとって、「よい商品だ」という確信を持って購入できる安心感はGlossier独自のものです。
コスメ・化粧品ブランドの事例②「meeth」
meeth(ミース)は、「美肌は最高のジュエリー」をコンセプトに掲げ、タレントとして活動していたソンミさんが立ち上げた日本発のスキンケアブランドです。
スキンケアでは数より質にこだわってほしいと、保存料をなるべく使わない高品質な商品を実現しています。中間業者をなくしコストを削減することで手の届きやすい価格を設定しました。
創業者のソンミさんはタレント時代にスキンケア商品のセレクトショップを運営しており、その中で成分について学んだり数多くの製品を試した経験が商品作りに反映されています。このこだわりが顧客の共感を呼んでいるといえます。
そして成功も失敗もすべてSNSで公開することで、ブランド自体を好きになってもらったり、meethのファンからスタッフを採用するなど、ファン中心の施策に取り組み売上を拡大している事例です。
参照:商品作りへの強烈なこだわりがファンの共感を呼ぶ。人気D2Cブランド「meeth」代表ソンミ氏が語る、ブランド成長の原点とは
中国進出のためのブランディング構築に迫る!ソンミ氏プロデュース化粧品ブランド「meeth」の戦略とは?
コスメ・化粧品ブランドの事例③「N organic」
N organic(エヌオーガニック)は、日本発のスキンケアやヘアケアを中心とするオーガニック化粧品ブランドです。
N organicはブランド立ち上げ時に、顧客の声を製品作りに活かすため、ターゲット層としていた30代以上の女性50人にインタビューを実施しました。そこで見えてきたのは、「手抜き感のあるオールインワンは抵抗がある」「肌に良い成分を選びたい」「育児や仕事が忙しいため、実店舗に出向いて化粧品を買う時間がない」という回答でした。
こうした悩みの解決のため、まずは手間を最小限に抑えながらスキンケアの実感がある化粧水と乳液の2アイテムを作成し、通販での販売を開始。実店舗を持たないことでコストを削減し、高品質な商品と継続しやすい価格設定を実現しました。
ターゲットとする顧客の課題を的確に捉え解決することで成功している事例です。
参照:入社3年目の女性が開発 ウェブ通販コスメが大ヒット
コスメ・化粧品ブランドの事例④「BULK HOMME」
「BULK HOMME(バルクオム)」は、2013年に日本で事業を開始したメンズスキンケアブランドです。
D2Cでは、顧客と直接つながれることを活かして、顧客の声を商品に反映させることが一般的です。これに対してBULK HOMMEは、商品の品質に自信を持ち、現状の商品に手を加えずに販売を続けています。
その背景には、「バルク(中身)で勝負する」というブランド哲学があります。顧客から容器が使いづらいという声があった際は、「中身で勝負しあえて最も安い形を使っていること、容器を変えると値段が上がってしまうこと」をSNSで発信しました。
広告ではUGC施策に積極的に取り組みLPにも活用しています。ターゲットとする世代がSNSでのコミュニケーションに慣れているため、SNSのUGCを活用することで親近感が高まりやすくなります。そして、ブランドのファンは自分が撮った写真が公式で掲載される嬉しさから投稿が増え、新たなUGCにつながる、という好循環を作ることができます。
商品の品質では自社のコンセプトを貫きながら、現代に即したプロモーションで売上を拡大している事例です。
参照:攻略が難しい男性用スキンケア市場で、「バルクオム」が急成長している理由【オイシックス・ラ・大地 西井敏恭】
コスメ・化粧品ブランドの事例⑤「COLORIS」
COLORIS(カラリス)は、パーソナライズドセルフヘアカラーを扱うブランドです。1万通りの組み合わせの中から、顧客の髪質や直近のカラーリングやパーマの有無に応じて最適なヘアカラーを処方します。
ヘアカラーサービスの継続率は「初回で理想通りに染まるか」が影響するため、プロダクトの質の向上を特に優先して取り組んでいます。また、セルフカラーの方法をLINEで伝えることで、染め方で挫折しないよう初回の顧客体験向上に努めています。
また、ブランドのメッセージというと一貫性を持たせることが一般的ですが、COLORISでは事業のフェーズに合わせてメッセージを変更しています。
立ち上げ当初はトレンドに敏感な人達に認知されるために「日本初のパーソナライズカラー」とキャッチーな言葉を使用していました。コロナ禍では美容院へ行きにくくなったことから、自宅でのヘアカラーのニーズが高まったため「サロン品質のセルフカラー」というメッセージを発信。
最終的にLTVの高い顧客に向けてメッセージを発信するために、その人達の生活スタイル、市販品やサロンに抱える不満など、D2Cの強みを活かし徹底的に顧客の分析を行いました。その結果、「パーソナライズ処方で傷まず染められる上質なセルフカラー」というメッセージを発信しています。
高品質の商品とサポート、細かい顧客分析によってLTVが高いターゲットの獲得に成功し売上を伸ばしている事例です。
参照:【D2Cブランド戦略】パーソナライズヘアカラー「COLORIS」急成長の裏側
人気D2CブランドCOLORISに聞く!D2Cのマーケティング戦略
コスメ・化粧品ブランドの事例⑥「BOTANIST」
「BOTANIST(ボタニスト)」は「植物と共に生きる」をブランドコンセプトに掲げる日本発のヘアケアブランドです。
BOTANISTの大きな成功要因は、当時なかった中価格帯のシャンプー市場に目を付けたことと、植物を取り入れた商品を使うことによる「自然派」というライフスタイルを提案するブランディングをしたことだといえます。当時は主張の強いボトルが多かったためデザインをシンプルにし、代わりに中身にこだわり中価格帯(1,000-1,500円)で高品質の商品作りを実現しました。
また初期のプロモーションにおいては、従来の大手メーカーと差別化するためCMを使ったマスでの認知拡大ではなく、知り合いのスタイリストやモデルに商品を配りInstagramで発信してもらう形で認知を拡大していきました。
Instagramでの「映え」が流行し始めた当時に、ビジュアル面の訴求とインフルエンサーマーケティングに挑戦し成功したのは急成長に大きく影響したと考えられます。
シャンプー市場の中で競合が手を出していなかったゾーンに展開し、SNSでの認知拡大に着目して売上拡大した事例です。
参照:「ボタニスト」はなぜヒットしたのか? ネット発からオフライン進出までの戦略をI-neの責任者が語る
“映え”の先駆者BOTANISTが実践した「SNS競争優位」の作り方
D2C事業の現場で使われているKPIを新任担当者でも分かるようにまとめました。
KPIの用語説明や使い方だけでなく、D2Cのビジネスモデルについても解説しています。
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D2Cを成功させるには?
紹介した6つの事例を踏まえて、「D2Cを成功させるために必要なこと」を考えてみましょう。
まず前提として大切なのが「ブランドの世界観を作る」ことです。ブランドから生まれる世界観にファンが付き、他企業が追随できない差別化が可能になります。
その前提のもと、D2Cが成功するために「商品」と「プロモーション」が適切に設計されているかを確認する必要があると考えています。
商品
D2Cブランドが成功するために必要なものの1つが商品の「品質」です。既存の商品と比較をする顧客に選ばれるためには、D2Cブランドならではの付加価値が付くとしても、既存の商品と比較しても劣らないレベルの品質が求められます。
その次に必要なのが既存の商品にはない「価値」や「体験」を提供できることです。モノ消費からコト消費へのシフトが顕著になるにつれて、消費者は商品の機能的価値以外に、何が得られるのかを考えるようになりました。
たとえば、環境汚染への罪悪感なく使える、探す手間なく自分の好みに合った商品が届く、といった従来の商品にはなかった体験を提供できると、魅力的な商品になるといえます。
プロモーション
商品を通じて得られる「体験」が伝わるプロモーションになっているかを考えてみましょう。
企業が伝えたい「ブランドの世界観」や「商品のメリット」ばかりではなく、「使うことで得られる機能以上のメリット」が訴求できているかを確認しましょう。
「機能以上のメリット」は具体的には、
- 美容院に行かなくても髪質や希望の色に合うようカウンセリングしてもらえる(COLORIS)
- 商品を購入することで環境問題に取り組める(Glossier)
などが挙げられます。
また、既存顧客はブランド理解が深まると商品への愛着が湧きリピーターになってもらいやすいため、SNSや自社サイトすべてで統一感のある発信ができるとなおよいといえます。
今の時代、ファンの口コミやSNSの投稿は利用した人の感想や体験がリアルに伝わるため、商品の売れ行きに大きく影響するようになっています。こちらでコントロールできない部分もありますが、ファンが自発的に自身の「体験」を発信してくれるようなプロモーションができるとよいと考えています。
今回は、化粧品・ヘアケア業界の6つのブランドに絞ってお伝えしました。その他の業界にも興味ある方はこちらの記事もご覧いただければと思います。
この記事が少しでもD2C事業者の方のお役に立てば幸いです。
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