一人の顧客に商品をくり返し購入してもらうことにより、利益をあげる単品リピート通販のビジネスモデル。
事業計画の策定や投資対効果の改善、KPIの管理などに際しては、どのような考え方にもとづいて行えばよいでしょうか?
単品リピート通販の経営やマーケティングの第一人者が著した、お薦め本を3冊選びました。
通販事業の現場で使われているKPIを新任担当者でも分かるようにまとめました。
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目次
通販事業をスタートする方に、オススメの“教科書”
1冊目、「これから通販事業を始めよう」という方には、ぜひ読んでいただきたいのが「通販ビジネスの教科書」(岩永洋平)です。
商品設計から広告の表現開発・媒体設計、リテンション・CRMにフルフィルメントまで、通販事業を成り立たせるために押さえておきたい、広範囲をカバーしているのは、タイトル通り“教科書”のよう。
著者が「30社以上の事業を成功に導く」「年間売上規模、約800億円の通販事業を支える」なか、実践で培ってきたノウハウが体系的に整理されています。
「これから通販事業を始める」という方には、ぜひ読んでいただきたいのですが、特に入門編として参考になるのが、第3章。
「CPO」(=新規顧客の初回購入を獲得する投資)と「LTV」(=初回購入以降の顧客からの累積の売上)を軸にした、通販事業の採算構造の解説です。
通販事業(特に単品リピート通販)の特質の1つが、新規顧客獲得費用(CPO)が初回受注単価を上回る場合がほとんどであること。
つまり広告を出して、お客様に初めて商品を買ってもらった段階では、「赤字」になってしまいます。
この赤字分を2回目以降のリピート購入で取り戻していくのですが、鍵を握るのが先行投資と利益回収のバランスです。
「CPOを可能な限り下げて、LTVをできるだけ上げていく。これが通販事業の運営の根幹です。」と著者が述べるように、2つのKPI(重要業績中間指標)をいかに数字で把握して、PDCAを回し改善していけるか?が事業の採算構造を左右します。
1年以内でCPOの回収ができる事業・商品はとても優秀です。
CPOと累積客単価の実績がある程度安定していて1年以内の回収、提示例の9ヶ月なら、基本的には、もう投資のアクセルを踏んでよい事業採算性といえます。
すでに数十億円以上の売上規模となっている通販事業の場合は、新規獲得投資の回収に2年・3年かかっています。
既存顧客からの売上・利益があればそのくらいの回収スパンでも事業は回ります。
このような全体感と照らし合わせると、広告やCRM、商品設計など分野ごとの知見も体系的に理解しやすいでしょう。
通販事業を形作っていくたための「羅針盤」として、初心者の方にはぜひお読みいただきたい1冊です。
(既に経験をされている方にも、「改めて全体像を捉えなおす」「知らなかった実践的なノウハウを学ぶ」ために、参考になると思います。)
通販事業の現場で使われているKPIを新任担当者でも分かるようにまとめました。
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事業計画をKPIに分解して、「勝利の方程式」をつくる
1冊目で紹介した単品通販の採算構造ですが、どうすれば高収益のビジネスモデルを実現できるのでしょうか?
そのヒントは、「ゼロからはじめる通販アカデミー」(田村雅樹)できっと見つかるはずです。
特に参考になるのが、収益計画を立てたうえでKPIに分解する考え方。
そしてKPIを達成するためマーケティング施策を立てて、実行まで落とし込んでいくプロセスが、分かりやすく整理されていることです。
ゼロからはじめる通販アカデミー
たとえば「LTVを最大化する」ための方法も、「リピート率を引き上げる」「受注単価を引き上げる」の2つに因数分解されます。
・リピート率を引き上げる:F2転換、定期引き上げ、休眠復活
・受注単価を引き上げる:クロスセル、アップセル
リピート率を引き上げるために、なかでも重要なのが「F2転換(=新規顧客の2回目購入)」。
このF2転換率について、「トライアルから本品ならば目標値は35%」「トライアルと本品の価格差が15,000円以上と大きい場合でも、25%は死守したいところ」といった目標設定の目安が語られます。
これらの数字を達成するための具体的な施策についても・・
・初回購入日から3ヶ月以内に、3回以上アプローチすること
・顧客へのアクション指示は、3つ以内にすること
・割引案内等のオファーは2段階用意し、それぞれ締切りを設けて行うこと
といった原則が、「ベネッセでNo.1のレスポンス実績」「エクスボーテのCRM事業部長として、1年後に黒字化・2年後に300%以上の成長」といった著者の実績にもとづいた、実践知として語られています。
あらゆる数字や情報が「測れる」のが、通販ビジネスの最大の特徴と言えます。
だからこそ、一つひとつの数字を組み立て、ひも付けをし、業績評価に欠かせない数値指標「KPI」を設計していけば、まるでパズルが完成していくように、自社のビジネスの未来が見えてくるはずです。
リピート以外にたとえば新規獲得において、「テストマーケティング期間は、CPOを目標の約3倍に設定」(小規模でテストを繰り返しながら、まずはこの目標値に近づけていく)、「1年で回収する場合の限界CPOの算出方法」(年間LTVから変動費とF2販促費を除く)といった記述も、改めて読み返してとても参考になりました。
商品企画やECサイト、コールセンター・物流についても語られていて、事業の全体像を実践に即して捉えられます。
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ECで成長するための、デジタルでの戦い方
これまでの2冊で紹介されていたのは、「紙媒体」や「インフォマーシャル」などオフラインが主体の、伝統的な通販のビジネスモデルから培われてきた方法論。
(もちろん両書とも、オンライン施策についても書かれていますし、そのノウハウの多くはネット通販においても通用するものと捉えています。)
WEB広告やメール・アプリなど、デジタルでのコミュニケーションがメインの、「EC」のフィールドでは、どのように適用していけばよいのでしょうか?
この疑問に答えるのが、3冊目「デジタルマーケティングで売上の壁を超える方法」(西井 敏恭)。
ネット通販黎明期からECでのキャリアを開始、ドクターシーラボやオイシックスなどで活躍した著者が、デジタルマーケティングの実践的手法を語ります。
前提として語られるECの基本的な事業構造は、前掲の2冊とも共通するところが多いもの。
・新規顧客と継続顧客に分解して、売上構造を見る
・継続率が10%上がるだけで、売上も大きく伸びる
・広告費を大量にかけて、新規のお客様をとりまくらないと成り立たないビジネスは厳しい
そんな基本原則を踏まえたうえで大事なのが、「デジタルマーケティングの仕組みを把握して、自社ビジネスの現状を理解すること」と言います。
たとえば、広告において採算の成り立つCPOを実現するための方法として紹介されるのが、「初回購入のハードルを下げること」。
通常、検索サイトなどで検索して、サイトを訪問した人が商品を購入する率は1~3%です。(中略)
入口となる商品を広告で展開するとき、日本でそれなりにターゲテイングされた広告を実施すると、1クリックあたりの単価(CPC)は100円くらいになります。
5,000円のサプリメントの例では、新規顧客1件あたりのCPAはコンバージョン率(CVR)を1%とすると1万円になります。
この場合、F2転換率が30%あったとしても、F2転換を1件獲得するのに、CPOは約3万円となります。ビジネスとして、なかなか厳しいですよね
そこで、「ネットで初めて見た高額商品を、いきなり買えない」というハードルを下げるため、1,000円のお試し商品を用意。
CPAやF2転換率といった変数にもよりますが、同書に出ていたケースではCPOも15,000円と下がり、
持続可能なビジネスモデルができるという算段です。
通販の事業構造とデジタルマーケティングの特性が丁寧に解説されたうえで、「リスティング広告やアフィリエイト広告、SNS広告を使い分ける」「KPIを踏まえてサイトを改修する」といったデジタルならではの方法論が語られます。
「商品の注文完了メールをを作り込む」や「カートからの離脱を防ぐ」といった、著者が強調する具体的なノウハウも役立ちますし、私が個人的に学びになったのが「社内調整とチームづくり」。
会社によっては「F0からF1までが広告で新規を取るチーム、F2以降はリピート担当のチームというかたちで部署を分けているところもありますが、そういう体制だと絶対にうまくいかない」そうです。
なぜなら、本来ひとつであるべき「新規獲得」のプロセスが分断してしまい、「新規を安く取ってくればいい」という考え方になってしまうから。
事業構造やマーケティングの仕組みから逆算したうえで、「F2転換までを新規獲得のチームに含めると良い」という組織づくりの哲学まで、語られています。
通販事業の現場で使われているKPIを新任担当者でも分かるようにまとめました。
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まとめ:BtoCのリピート販売モデルに携わられている方は、ぜひ一読を
これまで挙げた3冊はいずれも、主に単品リピート通販のビジネスモデルを解説しています。
化粧品や健康食品はもちろんですが、顧客との継続的なつながりやリピート購入を前提にする場合は、他の業種や商材にもその考え方は応用できるはずです。
特に、「定期販売」や「月額課金」「サブスクリプション」といったモデルをとっている会社にとっては、得るものも大きいでしょう。
特に気になられた1冊から、ぜひ手にとってご覧になってみてください。
通販事業の現場で使われているKPIを新任担当者でも分かるようにまとめました。
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