休眠顧客の掘り起こしを効率的に行うには、データベースの整備や休眠顧客の定義の明確化、施策の優先順位を決定しながら、顧客の状況に応じてメールやDM、電話などを使い分けることが重要です。本記事では、休眠顧客の掘り起こしが重要な理由や方法、ポイントをわかりやすく解説します。

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そもそも休眠顧客とは?
はじめに、休眠顧客の定義とアプローチする重要性をお伝えします。
休眠顧客の定義
休眠顧客とは、過去に商品・サービスを購入したものの、その後は現在に至るまで購入していない顧客です。定期コースがある通販企業などでは、休眠会員とも呼ばれます。
「どのくらいの期間、購入がない場合に休眠顧客と呼ぶのか」に関しては、業界やビジネスモデルによって異なります。購入頻度が少ない業界では、2〜3年またはそれ以上の期間を設定する場合が多いです。一方で購入頻度が多い通販EC業界などでは、半年〜1年という短い期間を設定する傾向があります。
休眠顧客へのアプローチが重要である理由
休眠顧客の掘り起こしが重要な理由は2つあります。
1つ目は、新規顧客を獲得する難易度の高さ。以前と比べて、以下の理由から新規顧客を獲得する難易度は高まっていると言われています。
- ネット上で情報を入手しやすくなったことで、競合の商品・サービスとの比較検討が容易になった
- 商品・サービスの数が増加し、競合企業との競争が激化している
- Web広告を出稿する企業が増え、コンバージョンが分散してしまい、広告のCPAが悪化している
朝日広告社が全国にある中小企業・スタートアップ企業の経営者・従業員882名を対象に行った調査によると、業種や役職者に関係なく最も課題と感じている項目は「新規顧客の獲得」です。このアンケート調査からも、新規顧客の獲得は深刻な課題であることが分かるでしょう。
出典:「中小企業及びスタートアップ企業の課題等に関する調査 朝日広告社」
一方で休眠顧客は、過去に一度は商品・サービスを利用したことがあるため、再び購買意欲を喚起できれば購入につなげられる可能性があります。新規顧客獲得と比べて難易度が低いため、休眠顧客の掘り起こし施策がそのまま利益につながります。
2つ目は、売上(利益)に対するインパクトの大きさ。新規顧客を獲得するには既存顧客の維持と比べて5倍のコストがかかる(1:5の法則より)とされています。休眠顧客も既存顧客の一部であるため、新規顧客の獲得と比較して少ないコストで掘り起こしできる場合が多いです。
つまり、少ないコストでより効率的に売上や利益を増やせる施策のため、休眠顧客の掘り起こしは重要です。
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休眠顧客の掘り起こしを成功させるために重要なポイント
実際にメールやDMを使って施策を打つ前に、休眠顧客掘り起こしまでの流れを知っておくことが成功させるためには重要です。休眠顧客掘り起こしは、以下の流れで進められます。

休眠顧客掘り起こしのステップ4つ
この章では、流れに沿って休眠顧客の掘り起こしで行う作業内容と、成功させる上で重要なポイントを解説します。
1.顧客情報を管理できるようにデータベースを整える
休眠顧客の掘り起こしでは、「最終購入日がいつか」「休眠する前の購入回数」を参考にアプローチをかけます。そのため、まずは顧客情報を管理するデータベースの整備が不可欠です。
「情報が更新されていない」「個人情報の表記方法がバラバラ」など、データベースの情報に不足があると、定義した休眠顧客のリストを抽出するのに手間がかかり、効率的に掘り起こしを進めることが難しくなります。
顧客情報の管理を行う際には、CRMツールの使用がおすすめです。CRM(Customer Relationship Management)とは、顧客との関係性やコミュニケーションを一元的に管理し、顧客との良好な関係を構築するマーケティング手法です。CRMを実現するツールを「CRMツール」と呼びます。
CRMツールを導入すると、データベースで顧客情報を一元管理できるため、施策を効率的に進められます。また、共有がしやすくなり属人化を防げるため、長期的な売上アップなどを期待できる点もメリットです。
ただしCRMツールの導入・運用には費用がかかります。十分な予算を確保できない場合は、CRMツールを導入する余裕ができるまで、エクセルで顧客情報を管理する方法もあります。
2.自社にとっての休眠顧客を明確にする
データベースを整えたら、次は自社にとっての「休眠顧客とは誰か」を明確にします。
休眠顧客は一定期間にわたって購入がない顧客のことですが、業界やビジネスモデルによって「一定期間」がどのくらいかはさまざま。そのため、どのくらいの期間購入しなければ、自社にとっての休眠顧客となるのかを明確にすることが重要です。
通販EC業界を例にすると、前述のとおり購入サイクルが短いため、半年〜1年経過した顧客を休眠顧客と定義するケースが多いです。一方で商品やサービスによっては、2〜3年という期間を設定するケースもあり、様々です。
上記のとおり、定義によって休眠顧客かどうかは異なります。定義が明確でないと、「実際には休眠顧客でない対象に対して掘り起こし施策を行ってしまい、費用の割に期待していた効果が得られない」といった事態になるため注意が必要です。
3.休眠顧客の中でアプローチする優先順位を決める
休眠顧客の定義が明確になったら、その中からアプローチする優先順位を決めましょう。
一口に休眠顧客と言ってもその実態はさまざまです。たとえば「定期購入を2年間続けた後で、6ヶ月間購入していない顧客A」と「一度だけ商品を購入しただけで、その後は5年間購入していない顧客B」がいたとしましょう。どちらも休眠顧客ですが、2年間も定期購入を続けていたことや、休眠期間が短いことを理由に、顧客Aの方が掘り起こしできる可能性は高いと考えられます。
少ないコストで売上や利益を最大限増やすには、休眠顧客の中でも「再び購入してくれる可能性が高い層」を優先してアプローチすることが重要です。やみくもにメールやDMを送ると、購入する可能性が限りなく低い休眠顧客にリソースを割いてしまい、施策の費用対効果が低下するおそれがあります。
アプローチする休眠顧客の優先順位を決める際には、RFM分析の活用がおすすめです。RFM分析とは、「最終購入日(Recency)」、「購入回数(Frequency)」、「購入金額(Monetary)」という3つの基準により、顧客に優先順位をつける手法です。既存顧客を分析する目的で使われるほか、購入する可能性が高い休眠顧客の絞り込みにも活用されます。以下3つの条件を満たしている顧客であるほど、再び購入してもらえる可能性が高いと判断します。
- 最終購入日が近い
- 購入回数が多い
- 購入金額が多い
RFM分析や定期顧客の復活を実現した事例を知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
4.メールやDMを使ってアプローチする
最後に、RFM分析や独自の分析によって決定した優先順位に沿ってアプローチを実施します。休眠顧客の掘り起こし方法には、主に「メール」、「DM」、「電話」の3つがあります。各方法のメリットとデメリットは以下のとおりです。良い点と悪い点を踏まえた上で、顧客のフェーズによって最適な方法を選択することが重要です。
方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
メール | 圧倒的にコストが低い | 反応率が低い |
DM | 手に取ってもらえるため目に入りやすく、メールよりも反応率が高い | 発送にコストがかかる |
電話 | 3種類ある方法の中で最も反応率が高くなりやすい | 3種類ある方法の中で最もコストを要する傾向がある |
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休眠顧客の代表的な掘り起こし方法3つ
この章では、休眠顧客を掘り起こす各方法の概要と、どのような顧客に適しているかを解説します。また、近年活用されるケースが増えているLINEアカウントも紹介します。
メール
メールを活用する最大のメリットは「圧倒的なコストの安さ」。使用するシステムによるものの、1通あたりの配信コストは、DMや電話と比較して圧倒的に安い傾向があります。また、「最終購入日から6ヶ月後に配信する」などと設定しておくことで、システムによるメールの自動送信も可能です。少ない予算かつ手間をかけずに実施できるため、もっとも手軽に休眠顧客の掘り起こしを行える方法でしょう。
一方で、3種類ある掘り起こし方法の中で、反応率が最も低くなる傾向があるため注意が必要です。顧客にはたくさんのメールが届くため、自社が送ったものは放置されたり、そもそも目に留まらなかったりするおそれがあります。
特に、弊社が支援してきたケースでは、最終購入日から時間が経過するほど、メールの開封率は下がる傾向が見られます。そのため、この方法は「休眠顧客になったばかりの人」を対象に行うとよいでしょう。
メールで休眠顧客の掘り起こしを行う際には、開封率を上げるために「ポイントの利用期限が近づいています」や「初回特別価格1,000円で◯◯をもう一度ご注文できるチャンス!」など、注目してもらいやすいフレーズを用いるのがおすすめです。
また、休眠顧客の状況に応じてメールの内容や送り方を変えたり、開封率やクリック率を確認して定期的にメールの内容・送り方を改善したりすることも効果的です。たとえばステップメールの活用により、顧客の状況に応じて配信内容を段階的に変えることができます。
DM
DM(ダイレクトメール)とは、郵送やFAXによりカタログや商品案内の資料を送付する手法です。埋もれてしまいがちなメールと比べると、手に取って見てもらいやすく反応率が高い点がメリットです。また、電話やメールとは異なり実物を届けるため、形状を工夫することで特別感を出すこともできます。
一方でデメリットとして、紙面の印刷や郵送にコストがかかります。一度にたくさんの休眠顧客に送付する場合は、一般的にコストを抑える目的で「圧着ハガキ」を利用します。ただし、圧着ハガキを使っても、印刷費や発送代で 1通あたり70円程度はかかるケースが多いです。
コストこそかかるものの、メールよりも顧客に見てもらえる可能性は高いため、自社商品・サービスの詳細を伝えたり、再び認知してもらえたりする機会を得やすいです。そのため、「休眠顧客になってから一定期間が経過し、商品のことをあまり覚えていない状態の人」におすすめの手法といえます。
DMで休眠顧客の掘り起こしを行う際には、メールと同様に休眠顧客の状況に応じた内容の設計が重要です。たとえば10%割引のクーポン券を同封したり、以前まで購入金額・頻度が高かった優良顧客には手書きメッセージや高級感のあるデザインのラッピングを使ったりすることが考えられます。
意外と知られていませんが、DM内でクロスセルする手法も休眠顧客の掘り起こしに効果的です。DMによるクロスセルの具体的なやり方や、効果が現れる理由は以下の記事で解説しています。
電話
休眠顧客に電話をかけて、掘り起こしを狙う手法(アウトバウンド)もあります。電話を活用するメリットは、メールやDMと比べてレスポンスが高いこと。休眠顧客との対話を通して、悩みやニーズ、置かれた状況などに応じて臨機応変に最適な提案を行えるでしょう。「相手の電話営業に対する苦手度合い」や「担当者の電話営業スキル」にもよりますが、他の手法よりも掘り起こしを着実に行える可能性があります。
とても効果的な手法である一方で、3種類ある方法の中で最もコストはかかりやすいです。電話による休眠顧客の掘り起こしを行う際には、リソースの観点から外注することが少なくありません。
コールセンターに外注する場合、オペレーターの人件費が発生するため、1件あたり300円程度の費用がかかります。自社で行う場合は費用をある程度抑えられますが、営業やマーケティングにかけるリソースが不足し、かえって利益が減ってしまうおそれがあります。効果は高いものの費用がかかるため、「過去に優良顧客であった人」を対象とするのがおすすめです。
電話による休眠顧客の掘り起こしでは、電話の強みを活かすために、相手の反応や状況に応じた提案を心がけることが重要です。また、休眠顧客の中には電話営業を嫌がる人もいるため、必要に応じて別の手法(メールやDMなど)に切り替えることも検討しましょう。
LINE公式アカウントも有効
一般的に用いられる方法は前述の3つですが、最近では「LINE公式アカウント」の活用により休眠顧客の復活に成功するケースも出てきました。具体的には、友だち登録してくれたユーザーに自社商品・サービスの特徴や、休眠顧客の悩み解決、ニーズを満たす情報を配信します。
多くの消費者はメールと同様にLINEを日常的に使用しているため、他の方法と比べてアプローチしやすい点が最大のメリット。メール(メルマガ)の平均開封率は約20%と言われている一方で、LINE公式アカウントから届いたメッセージは60%〜80%と言われています。
実際にメルマガと比べてLINE公式アカウントの開封率が10〜20倍になった事例もあるため、休眠顧客に見てもらえる可能性は高まると言えるでしょう。
出典:「開封率はメルマガの約10倍!美と健康のセレクトショップのLINE公式アカウント活用方法 LINE for Business」
また、弊社が支援した事例では、LINEで定期コースを解約した休眠顧客へのアプローチをしたところ、解約者のうち平均で約5%、最高10%近くまで復活させることに成功しました。解約時に顧客から教えてもらった「解約理由」に応じたメッセージを送ることで、休眠顧客の掘り起こしにつながったと考えられます。開封率が高い上に比較的取り組みやすいため、LINE公式アカウントによる休眠顧客の掘り起こしも検討してみるとよいでしょう。
LINEで解約抑止を自動化している通販企業の事例をまとめました。
⇒事例集はこちら
休眠顧客の掘り起こしを成功させるには
休眠顧客は購入をやめてから時間が経過しているため、自社商品・サービスへの関心は薄まっていることが大半です。完全に忘れている休眠顧客も少なくないでしょう。したがって、再度購入したいと思ってもらうためには、まず「自社商品・サービスに関心を持ってもらうこと」が重要。
具体的には、前述した「ポイントの有効期限失効」や「定期購入の割引終了」をLINE公式アカウントやメールで知らせる方法が考えられます。また、過去の購入金額・回数が多い優良顧客に対しては、手書きの手紙を送付するなど、温かみや特別感を感じてもらえる施策が効果的です。顧客に応じたアプローチを行えば、自社商品・サービスに再び関心を持ってもらえるため、掘り起こしできる可能性が高まるでしょう。
今回お伝えした内容が、休眠顧客の掘り起こしを行う際の参考になれば幸いです。
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