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LTVを高める顧客の特徴は、“ファンコミュニティ”の行動データから導き出せる

クオン株式会社 小林梨沙さんへのインタビュー、後編では、D2C企業でのファンコミュニティ活用事例についてお伺いします。なぜファンコミュニティが売上に貢献するのか?や、LTVの高い顧客の特徴を見える化する手法など、ご紹介します。

LTVを高める顧客の特徴は、“ファンコミュニティ”の行動データから導き出せる

 
 

ロイヤルティ施策の“思い込み”が、間違いとわかる事例も

 
前回は「コミュニティの行動データから、顧客のインサイトが見える」とお話ししてもらいました。具体的に見えたことを教えてもらえますか?
 
はい。ある基礎化粧品では、「〇〇な悩みに」と肌悩みに特化して打ち出した広告で新規を獲得していました。
したがって既存顧客向けにも、「肌悩みにフォーカスして伝えていけば継続してくれるだろう」という仮説のもと、メールや同梱物などコミュニケーションを組み立ててきました。
 
でも、継続して購入してくださるお客様について、コミュニティ内での動向を追っていくと、“不都合な真実”が見えてしまったことがありました。
 
 
-“不都合な真実”とは、どういうことでしょう?
 
それまでのCRMの考え方や顧客育成の方針が「間違っていた」、と気づいてしまったんです。
 
継続顧客の動きを追っていくと、肌悩みについてご自身が投稿したり、他のユーザーの投稿に「いいね!」などリアクションしている記録は見つかりませんでした。
代わりによく見られたのが、“美しさ”という目的に向かって、「同じモチベーションを持って、一緒に頑張ろう!」といったテンションで、ユーザー同士で共感し合いお互いに励ますようなコメントやいいね!を送っている履歴でした。
 
つまり、初回購入時点の購入理由と継続を後押しする要因が異なっていたんです。
そのことがユーザーの行動からはっきりと見えて、既存顧客向けのコミュニケーションを見直すことにしました。
 
初回購入理由と継続する要因の違い
 
 
-それはハッとする気づきですね!他にも事例があればお聞かせください。
 
よくあるファンイベントの例として、「ロイヤル顧客など、“ファン度”の高いお客様を招待して、お客様同士で交流してもらう」というコンセプトで開催することがありますね。
 
これをオンラインコミュニティに適用しようとしても、ファン化の促進以前に継続的な運営自体も難しくなるケースが多いようです。
 
コアなファンであっても決まったユーザーばかりが活動する場になってしまうと、場が硬直してタコツボ化※が起こります。すると、コミュニティが閑散とし、新たなユーザーが参加しにくい場になるばかりか、ファン化が困難になってしまいます。
※自身の意見・意図に合う小規模な集団を守り、意図に沿わない他者を排除しようとする状況
 
逆に、コアファンとライト層のように全く異なるセグメントが交流することで、コミュニティが活性化して参加者の購入率が上がったケースがありました。
さらに言えば、コアファンとライト層が相互にコミュニケーションすることでファン化するのは、ライト層だけではありません。コアなファンも、ライトなファンと交流することによって多様な価値観に触れることができ、自分自身の価値観や仲間の存在を自覚することで、ファン化がさらに促進されます。
 
購入履歴や価値観などが違うユーザー同士のコミュニケーションが活発になると、コミュニティにも売上にも良い影響をもたらすということが分かったんです。
 
 

リアルな行動データから、共感を与えるメッセージを探る

 
-顧客の動きを追っていくことで得た知見を、どうすれば売上に転換できるのですか?
 
既存顧客のLTVアップという意味で大きいのは、ファン化の理由が特定できるようになることです。
 
ファンコミュニティの特徴として、10,000人以上の行動ログデータを解析できるとお話ししました。
当社の特許技術を使って、コミュニティの中から、購買やロイヤルティが上がった顧客を特定し、彼らが反応を示した発言だけを抽出して集計します。科学的な手法で抽出したファンになった方に影響を与えた要素は、売上向上につながる共感ポイントを示しています。
 
たとえば「年間購入回数が増えたお客様」といった条件で顧客群を抽出。そのお客様がどんなテーマに関心があるのか?何の話題に反応したか?などを追っていきます。
 
それによって、「どのようなコミュニケーションが、LTVの向上に寄与しているか?」がより解像度高く見えてくるんです。
 
 
-なるほど、ファン化の理由を理解するためのデータが得られるということですか?
 
そうなんです。一般的なD2Cビジネスでは、事業者側から見えるのは購入や問い合わせの履歴ですね。
ファン化の過程を設計するには、どうしても“想像”に頼ることが多くなります
 
でも、コミュニティだと日々のログインや投稿、コメントやいいね!などのデータから、より立体的にお客様の気持ちの変化がつかめます。
 
 
-うまくいった事例があれば、教えてもらえますか?
 
美容商材の事例では、購入歴の長いお客様が、ご自身が愛用している様子をコミュニティで発信してくださっていました。
 
“先輩”の投稿に呼応する形で、購入歴が浅かった“後輩”がリピートしたり、まだ買ったことのない未顧客が新規購入をしたりしている。
そんな傾向が、コミュニティの行動データと、顧客データベース上の実売データをIDで紐付けて解析した結果、わかってきました。
 
 
-コミュニティでの施策には、どう落とし込めるのでしょう?
 
このようにLTVの高まったお客様の特徴をつかめれば、それが発生するように意図的にコミュニケーションを工夫することができます。
 
たとえば、「購入履歴の長いお客様の投稿を見ることで、新規顧客がF2転換しやすくなる」とわかれば、該当する投稿がされた時、対象となるお客様に投稿のプッシュ通知を出します。
あるいは「商品の使い方についてのトピックが、継続率アップに有効」ならば、運営側がそのテーマで投稿を募集する、といった施策もできます。
 
 
-すごいですね!でも全体のLTVが上がるほどのインパクトはあるのでしょうか?
 
もちろんコミュニティに参加する顧客は一部です。
ですので、コミュニティ内の施策だけでは、「こうすればLTVが高まる」とわかっても、インパクトも限られます。
 
でも、「このようなコミュニケーションをとれば、LTVが高まる」と再現性高く見えてくれば、それは他の施策にも展開できます。
先ほどの“体験談”や“使い方”については、メルマガや会報誌、あるいはSNSやリアルイベントなどでも応用できますね。
 
コミュニティ施策を続けられている企業様は、お客様の気持ちや行動の変化をつかむ実験場としての意義も感じられているようです。
 
 

お客様の声から、“売れる言葉”が見つかる

 
-商品開発や広告クリエイティブにも活かせる、とお聞きしました。詳しくお聞かせいただけますか?
 
そうなんです、お客様同士のコメントにあった言葉に、売れるキャッチコピーが眠っていることがあるんです。
 
たとえば、ある化粧品についてのコミュニティではお客様が使用シーンを投稿した際に、その使い方がキャッチーに表現されていました。その表現に他のお客様も同調するなど話題になっていました。
 
キャンペーン訴求でユーザーの発言を活用
 
 
-インパクトがある言葉だったんですね!
 
はい、そこでこの商品のキャンペーンを実施するときに、新しい訴求メッセージを開発する必要があるという話になり、その表現をキャッチコピーに活用されました。
既存顧客向けにチラシを配布したところ、単価の高いまとめ買いながらも、想定より高いレスポンスが記録されたそうです。
 
このようにお客様の使われていた言葉から、“売れる言葉”や“当たる訴求”が見つかったり、なかにはニーズを汲み上げて新商品の開発につながる事例もあります。
 
あるクライアント様が、「コミュニティは宝の山」とおっしゃっていたのを聞いて嬉しくて。
商品開発でも販促でも、アイデアが煮詰まった時に立ち返るのは、お客様の気持ちですからね。
 
 
-お客様の気持ちを知るために、1対1のデプスインタビューをする企業も増えてきていますね。
 
おっしゃるとおりです。コミュニティも、デプスインタビューと近い機能を担っているかもしれません。
 
売れる理由を紐解くために大事なのは、単なる商品への感想ではなく、「お客様の生活シーンのなかで、商品がどのように使われているか?」「お客様が何の用途でどのような価値を感じてくださっているのか?」といったお客様の文脈のなかでの商品の位置付けです。
お客様一人ひとりとお話をする、できればご自宅まで足を運んで観察できれば、見えてくるものもあるはずです。
 
しかし、限られた時間のなか一人ひとりとのコミュニケーションを重ねるのは、ハードルも高いですね。
そこにコミュニティが役立ちます。
 
わざわざインタビューや座談会をしなくても、必要な時に多数の生データから探せますし、突っ込んで確かめたい時は気軽に投稿して質問もできます。
「お客様との距離が近くなる」というお声も、よくいただきます。
 
 
-最後に、D2C企業がファンコミュニティ施策に取り組む意義を教えてもらえますか?
 
D2C企業様から施策開始前に多くいただくご相談が、「顧客にコミュニティに参加してもらい、ファン化を促したい。LTVを高めたい」というものです。
もちろんそれらの実現に向けては一歩一歩取り組んでいくのですが、一緒に施策を進めるなかで、価値を感じられるポイントが移っていくことが多いようです。
 
「購入履歴からだけではわからない、お客様のインサイトが解像度高く見えてくる。」
「それによって、マーケティングファネル全体のなかで、LTVを高める施策を打ちやすくなる」
といったお声をよくいただきます。
 
ファンコミュニティは、お客様をしっかりと理解して、お客様に寄り添った施策を打つことに、長期的な目線で取り組んでいきたい企業様にとってはきっと価値があるはずです。
 
“事業貢献していける分野”という手応えを、私たちも日に日に強く感じています。

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