日本企業の多くは、「良質なシーズは持っているのに、なかなかそれを収益や利益につなげることができていない」と言われています。
例えば、アップル社のスマートフォンiPhoneには、多くの日本製の部品が使われています。しかし多くの利益を得ているのは、アップル社でありiPhoneを組み立てている台湾メーカーです。日本企業は利益を取りこぼしているといえます。
シーズがなければビジネスは展開できませんが、シーズだけでは市場のトップランナーにはなれないのです。
通販事業の現場で使われているKPIを新任担当者でも分かるようにまとめました。
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シーズ発想とニーズ発想の違い
「Seeds(シーズ)」は「種」という意味です。企業が持っているすべての人・モノ・金は、ビジネスの種です。
これは「企業が持つすべてのものがビジネスになる」という意味なのですが、同時に「企業はシーズを使ってビジネスを展開している」とも言えるのです。
シーズを洗い出す
なぜ優良なシーズを持ちながらそれをビジネスに活用できないのでしょうか。
その理由のひとつはとても単純なことです。
「企業が自社のシーズを把握しきれていない」という問題があるのです。
まずは社内のシーズをすべて書き出してみましょう。
例えばある企業でシーズを洗い出したところ、これだけ見つかったとします。
この企業はこれらのシーズを用いて経営を黒字化させているので
「シーズを有効活用している」といえます。
しかし、シーズでビジネスをするということは、さらに一歩前に進む必要があるのです。
これらのシーズを使って新しいビジネスを生み出すことは可能なのです。そのためには「いまあるシーズで新しいビジネスを生み出せないか」という発想が欠かせません。
シーズの質が高い割に儲けることができていない企業は、
次のような発想を持つことが必要かもしれません。
・自社が保有するシーズの価値を再評価する
・現状のシーズをバージョンアップしようと考える
・シーズで新しいビジネスを生み出すという「別次元の発想」を持つ
自社のシーズの価値の見つけ方
自社が保有するシーズがすべて新ビジネスを生み出すわけではありません。よって、社内のシーズをすべて洗い出したら、次は「価値があるかどうか」を分析することになります。
シーズの価値は、次の3つの視点で分類していってください。
・他社にはないシーズか
・消費者が驚くシーズか
・価格競争力があるシーズか
この3つの条件に1つでも当てはまるシーズは、すべてビジネスの種になりますので、後は土壌を耕して肥料をまいて水を与えるだけです。
つまりマーケティングをするだけです。
ニーズ発想を支えるシーズ分析
次にシーズとニーズの違いを見てみます。
「このシーズをビジネスにできないか」と考えるのがシーズ発想だとしたら、ニーズ発想は「世の中は○○を求めている。我が社はその○○に応えることができるのではないか」という考え方です。
消費者や社会のニーズは、市場アンケート、ユーザーアンケート、モニタリング調査、広告の反応、試供品の配布などで把握できます。もちろん社員1人ひとりの「情報アンテナ」も重要です。
ただニーズ発想でビジネスをつくろうとしても、自社のシーズ分析ができていないと、「世の中は△△を求めているけど、我が社には無理だよね」となってしまいます。本当はその会社に「△△」をつくりだせる力があったとしても、です。
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国土交通省がICT企業を支援?
国土交通省がICT(情報技術コミュニケーション)企業のシーズを掘り起こす事業を展開しています。ICT企業と下水道事業をマッチングさせようというのです。
「下水道事業における課題(ニーズ)とICT(シーズ)のマッチング」(国土交通省)
課題が山積している下水道事業をどうする?
国土交通省は、日本の下水道事業には次の8つの課題があると分析しています。
・日常的な維持管理ができていない
・中長期の改築・更新の目途が立たない
・経営がうまくいっていない
・有効利用できていない部分がある
・災害時の対応が不十分
・職員の技術力が低下している
・職員間の情報共有ができていない
・住民の理解が得られていない
下水道事業は市町村などの自治体が行っているわけですが、これだけ多くの課題を抱えているのです。下水道は住民の日々の生活に欠かせないインフラですので、国交省としても市町村を助けて課題解決に乗り出さなければならないと考えたのでしょう。
ICTのソリューションを活用した解決法を提案
国交省が考えた「下水道ソリューション」は、ICT企業のシーズをうまく活用することでした。
例えば同省は「維持管理の業務に下水道台帳が活用できていない」という課題には「モバイルやタブレットの活用」「クラウドコンピューティングの導入」を提案しています。
また「異常が発生したときの対応がばらばら」という課題には「インターネットに接続したセンサーを取り付けて情報を集める必要がある」と提案しています。
「モバイル」「タブレット」「クラウド」「ネット接続型センサー」は、いずれもICT企業のシーズです。
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シーズでソリューションビジネスを
国交省の事例は、いわば国が「下水道事業をしている市町村とICT企業のお見合い」を設定した形ですが、本来はICT企業が自ら自治体に営業をかけて、自社のシーズを売り込まなければならないはずです。
この事例からも、日本企業がシーズを活用し切れていない実態が分かると思います。
シーズによるソリューションは、大きなビジネスに化ける可能性があります。
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シーズを活用している企業の事例
それでは次に、自社に眠っていたシーズを活用して新たなビジネスの展開に成功した事例を紹介します。
電車の車体マッピング
電車は「人とものを運ぶもの」です。鉄道会社のシーズは電車であり、そのシーズを活用したビジネスモデルは物流です。
ところがある鉄道会社が、電車の外装に広告を印刷したフィルム貼り付ける「ラッピング電車」を開発しました。列車は街中を走って人々の目に止まるので「動く広告媒体」になるわけです。
シーズの活用により広告事業という新たな収益源を生んだのです。
携帯販売店が生命保険を売る
携帯の販売店は、都心部にも地方にも出店しています。総務省によるとその店舗数は1万6千店以上に及び、販売員は10万人に達します。
スマートフォンの黎明期には爆発的に増加する新規契約に対応するため、これだけの店舗規模が必要でしたが、スマホの普及が進んだことにより遊休資産となる可能性があります。
しかし店舗も販売員も優秀なシーズです。そこで携帯販売会社の中には、携帯販売店で生命保険を売る業務を始めたところもあるのです。
「消費者保護ルールの見直しについて~携帯電話販売代理店の意見」(総務省)
コンビニが銀行になり本格派コーヒーも売る
コンビニが銀行を始めたり、本格派コーヒーを始めたりするのも、シーズ発想のビジネスといえます。
・何万店ものコンビニ店舗は銀行の支店より多い
・何万店ものコンビニ店舗は喫茶店の数より多い
こうしたシーズの価値を見付けることができたので、新規事業に乗り出すことができたのです。
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特許とシーズとビジネス
もうひとつ、企業のシーズとして注目したいのは特許です。
「パテントプール」や「パテントトロール」という言葉をご存知でしょうか。アメリカからの「黒船」として、日本企業に恐れられているグループの名称です。
パテントは特許という意味です。パテントプールやパテントトロールは、特許を持つ企業から特許を買い取り、その特許を使っている別の企業に特許の使用料を請求するのです。
「特許紛争、専門家が裁定 特許庁が新制度創設へ」(日本経済新聞、2017/4/5)
特許紛争、防戦から攻めへ
日本の特許庁も「国内で異業種間紛争が始まっている」と危惧しています。
かつて特許紛争といえば、同業者間の争いでした。「ライバル企業が当社の技術を盗んで当社と同じ商売しているのは許せない」という訴えです。
ところがあらゆるものがインターネットにつながる「IoTの時代」になり、「IT企業と自動車メーカーの争い」や「IT企業と家電メーカーの争い」になっているというのです。
日本企業は特許を使ったビジネスで防戦に立たされることが多いのですが、日本企業も特許をたくさん持っているのですから、「特許というシーズで稼ぐ」戦略が今後ますます重要になるかもしれません。
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まとめ
優良なシーズを眠らせたままにしておくことは、まさに宝の持ち腐れです。特に人手不足時代を迎えた日本経済では、人材というシーズの活用法が企業の大きな課題になるでしょう。
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