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大企業のサブスク新規事業、収益化してる?赤字続き?トヨタ・ソニー・ネスレの決算から売上など探る

大企業でも、サブスクリプションに新規事業として取り組む事例が増えています。「先行投資フェーズで赤字」という事業から、数百億円なかには数千億円規模といった売上までビジネスが育っているケースも。トヨタ自動車・ソニー・ネスレ日本と大企業3社の決算から、実態をリサーチしました。

 
 
 

事例1:トヨタ「KINTO」は、59億円の営業赤字

 
1つ目の事例は、トヨタ自動車の始めた自動車のサブスク事業、「KINTO」(キント)です。
 
KINTOに加入したユーザーは、トヨタの新車を月々2万円台からなど定額で利用できます。
 
自動車保険などもセットの料金で、また販売店まで行かなくてもWEBで申込が完結するなど、手軽にクルマに乗れるようになるのが特長です。
トヨタ自動車が100%子会社として、別法人(株式会社KINTO)を作って運営しています。
 
2019年7月にサービスを開始してから、しばらくは新規ユーザーの獲得に苦戦していたそう。
20年3月末時点では3,150件だったユーザー数ですが、20年12月には累計で約1万2300件にまでユーザー数を伸ばしています。
 
では、事業全体の収支はどうでしょうか?
官報で公開されていた、現時点で最新の決算を調べました。
 

第1期(2018年1月~3月) 第2期(2019年4月~3月) 第3期(2020年4月~3月)
売上高 58千円 339,515千円 3,296,000千円
費用 352,846千円 5,919,724千円 9,962,000千円
営業利益 -352,787千円 -5,580,209千円 -6,666,000千円

(出典:「グラフ有▷KINTOの売上高と業績推移 財務諸表の内訳を分析 | グラフで決算|投資、分析、金融、就職転職に役立つ」より)
 
第3期では、売上は約33億円に増加し、前年度の約10倍へと大幅成長したものの、
66.7億円の営業赤字のようです。
 
自動車のサブスクリプション事業には、車体の購入のほかマーケティングやシステムへの投資など初期コストがかかります。
現在は、サービスを充実させてユーザーを増やすための先行投資期間という位置付けなのでしょう。
 
たとえば1万人までユーザーを増やしても、仮に月間平均単価を50,000円とすると、年間売上は単純計算で約60億円。
一方、トヨタ自動車の売上は、27兆2,145億円(2021年3月期)です。
 
「クルマを買わずに利用する」という消費行動が社会的に普及して、ユーザーが100万人単位まで増えた時、自動車の販売というメイン事業に比するような規模の事業に育っていくのかもしれません。
 
 
 

事例2:ネスレ日本は、定期便会員数が100万人に

 
2つ目の事例は、ネスレ日本株式会社の展開する、「ネスカフェ」です。
 
ネスカフェでは、高品質のコーヒーを1杯から抽出できるコーヒー・マシンを提供。
マシン購入者は、専用カプセルを継続的に購入していきます。
いわゆる「消耗品」方式に当てはまる、サブスクリプションのビジネスモデルです。
 
一般家庭向けには、マシンを無料でレンタルして、定期的に購入したカプセルが届くサービスを提供しています。
 
またオフィス向けには、「ネスカフェ・アンバサダー」という言葉は、聞いたことがある方も多いかもしれません。
オフィス向けにマシンを無料でレンタルして、1杯20円からコーヒーを手軽に飲めるというサービスです。
 
この「ネスカフェ アンバサダー」は、2012年にサービスをスタートして以来、4年で日本国内の登録数を約28万件まで伸ばし、現在の登録数は49万人(2021年3月時点)を突破しているそうです。
 
ネスレが提供する定期便サービス全体の利用者は、合計で100万件を超えるというデータが開示(2019年3月発表)されています。
 


 
定期便サービスの利用者は、49万人(2021年3月時点)を突破しており、「2020年までに50万人に拡大する」と発表した2014年の目標にほぼ達しています
 
このようなネスプレッソ事業の成長も貢献したのか、Eコマース比率も2016年8月の12%から、3年間で20%(2019年3月発表)にアップ。
ネスレ日本の売上(2018年12月期)は約2,020億円なので、約400億円がEコマース売上と推定されます。
 
オフィス向けや家庭向けなどサブスクリプション関連事業の売上は開示されていないので分かりませんし、オフィス向け(ネスカフェアンバサダー)がEコマースに含まれるのかも資料を見る限りでは分かりません。
しかし、家庭向け・オフィス向け合わせたサブスクリプション事業の売上が、少なく見積もっても100億円以上は発生していると推測しています。
 
 
 

事例3:ソニー「PS Plus」は、推定年商4,000億円前後

 
3つ目の事例は、ソニー株式会社のゲーム事業におけるオンライン定額サービス、「PS Plus(Play Station Plus)」です。
 
PS Plusは、ソニーの販売するゲーム機「プレイステーション」に、加入者限定で特別特典がつくサービスです。
人気タイトルを追加料金なしで遊べる「フリープレイ」や、世界のプレイヤーと対戦や協力プレイを楽しめる「オンラインマルチプレイ」を、月額850円(3ヶ月2,150円、12ヶ月だと5,143円)で提供しています。
 
2010年にスタートしてから会員数を順調に伸ばし、2020年12月末時点で4,800万人に。
月額850円を単純に掛けると、年商は約4,600億円という計算です。
(年度途中の入会や、3ヶ月・6ヶ月コースでの会員も一部いるので、上記よりは少なく4,000億円前後と推定)
 
「ゲーム事業売上高の約6割を占める」(週刊東洋経済 2019年7月6日号より)までに成長しました。
 

週刊東洋経済 2019年7月6日号より


 
ゲーム事業は、ゲームタイトルの流行やハードの移り変わりなど不確定要因にも左右され、利益変動の波が激しい業態でした。
PS Plusの収益化で、ハード(ゲーム機)の販売という“売り切り型”から、定額収入メインのビジネスモデルへと転換して利益を安定成長路線に乗せた、成功事例です。
 
 
 

大企業で求められる規模まで、売上をスケールするには?

 
今回は紹介しきれませんでしたが、キリンやパナソニック、ダイソン、資生堂など、さまざまな大企業がサブスク型のビジネスを新規事業として始めています。
 
その他サブスク型の新規事業

社名 説明 説明
キリンホールディングス株式会社 ホームタップ 工場直送のビールを家庭で楽しめる、ビールサーバーを提供
パナソニック株式会社 Panasonic Store Plus パナソニックの家電を定額で使用可能
ダイソン株式会社 Dyson Technology+ ダイソンの家電を自宅で利用できる
株式会社資生堂 Optune 利用者それぞれの肌質にあったにオリジナルの保湿液が利用可能

 
「商品が話題を呼んだ」「ユーザー数を伸ばしている」など、いわゆる「プロダクト・マーケット・フィット」で達成したと言える事例は、増えてきた印象です。
 
たとえばキリンのホームタップ事業は、2017年のサービス開始とともに人気となり、「アクセスが一気に押し寄せ、会員枠に対して150倍近いお申込みがあった」というほど。
新規会員募集を一時停止するも、再開後に会員数が順調に増加。。段階的に会員数の上限を上げながら、2021年8月には10万人に到達しました。当初は2021年内と掲げていた10万人目標を前倒し達成し、年度内15万人に上方修正しています。
 
「ホームタップ」は毎月3~4種のビールを楽しむことができるサービスで、月額基本料金は3,190円(税込)です。現在の会員数を10万人として単純計算すると、年商は38億円を超えます。
 
しかし、大企業にとって「主力事業の1つ」と言えるまで売上がスケールしたり、利益を出しているケースは、なかなかないようです。
 
たとえば売上の規模感が年商数千億円〜1兆円超などの大企業にとって、決算にインパクトを与えられるような数字としては、「100億円以上」などが求められるでしょう。
 
この記事では、売上規模別に大企業のサブスクリプション事業の事例を紹介しました。
 
・10億円〜:トヨタ自動車「KINTO」
・100億円〜:ネスレ日本「ネスカフェ」
・1,000億円〜:ソニー「PS Plus」
 
他にも調べてみましたが、インパクトのある事例は見つけられませんでした。
 
サブスクリプションは事業モデルの性質上、短期間で売上を急速に伸ばすのは難しいものの、獲得した新規ユーザーが解約せず定着すれば、長期的に安定収入を見込めるようになります。
売上規模を拡大していくうえでのベンチマークとして、今回ご紹介した内容が役立てば嬉しく思っております。

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