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サブスクリプションビジネスのKPI5選!上場企業の決算をチェック

サブスクリプションのビジネスモデルで売上や利益を予測していくために重要なのが、KPIを理解すること。

しかし「MRR」や「LTV」など見慣れない略称に、慣れない方は戸惑うかもしれません。

ビジネスモデルを理解するうえで押さえておきたい5つの主要な指標を、日本の上場企業の決算資料で活用されている事例も合わせて、解説します。

指標1:MRR(月間定期収益)やARR(年間定期収益)は、継続的な売上

 
サブスクリプションのビジネスモデルのメリットは、売上が安定して継続的に生まれること。
この売上を予測・管理していくために活用される指標が、MRR(Monthly Recurring Revenue)、「月間定期収益」です。
 
企業の売上のうち、サブスクリプションモデルで継続的に発生している売上を指します。
 
毎月3,900円で提供しているサービスに、有料ユーザー20,000人が登録しているとします。
この時のMRRは、シンプルに考えると以下のように計算できます。
 

3,900円×20,000人=7,800万円

 
サブスクリプション事業を展開する上場企業のうち、たとえば株式会社ユーザベースは、グループ全体の重要共通KPIとして、2020年からMRRを採用。
 
同社の運営する、ソーシャル経済メディア「NewsPicks」や経済情報プラットフォーム「SPEEDA」など、4つの事業を合計したMRRが、2020年12月期時点で8.4億円に達したと開示しています。
 
2020年12月期 決算説明資料より
2020年12月期 決算説明資料より
 
サブスクリプション契約をする顧客が、突然一気に解約することは考えにくいので、来月以降もこの金額の付近で前後すると予想できます。
すなわちMRRは“岩盤”の収入源、将来も安定して見込める売上です。
 
上記の例では、年間換算で100億円近い売上が継続的に発生すると計算できます
 
ちなみに、似たような指標としてARR(Annual Recurring Revenue)、「年間定期収益」もあります。
MRRが「月間」に対して、ARRは「年間」。
 
課金・支払いのサイクルが年単位か月単位かなどによって、それぞれ定義や計算式は異なりますが、「ARRはMRRの約12倍」とまずはシンプルに覚えておけば良いでしょう。
 
 
 

指標2:ARPUは、ユーザー1人あたりの平均売上金額

 
前章で見た継続的な売上を、ユーザー1人あたりに分解した指標が、ARPU(Average Revenue Per User)。
ユーザー1人あたりの平均売上金額です。
「平均単価」などとも言われます。
 
ある月額定額制のサービスで、ユーザー数が50,000人、MRR(月間定期収益)が1億円だとします。
この時ARPUは、
 

1億円÷50,000人=2,000円

 
です。
 
食品の定期宅配型ECを主な事業とするオイシックス・ラ・大地株式会社も、ARPUをブランド別に公開。
2021年3月期の決算では、同社の主力ブランド「Oisix」のARPUが13,042円と、前年同期比で111%にアップしたと発表しています。
 
2021年3月期決算資料より
2021年3月期決算資料より
 
ARPUの推移を追っていくと、売上全体が増加している場合でも、「ユーザー数の伸びに支えられているのか?」それとも、「1人あたりの売上も成長しているのか?」が分かります
そのうえでユーザー1人あたりの収益性を高めるために、「グレードの高いプランの比率を増やすには?」や「アップセルやクロスセルなど、どう仕掛けていけばよいか?」といった施策を考え、その効果を検証する基礎データになるのです。
 
 
 

指標3:解約率(チャーンレート)で、ユーザーの継続状況をチェック

 
続いての指標が「解約率」、チャーンレート(Churn Rate)とも呼ばれます。
顧客全体のうち、解約した顧客の割合を示します。
 
たとえば7月1日時点の顧客数が10,000人の時、7月中に200人の顧客が解約したとします。
その場合の解約率は、以下のように計算します。
 

200人÷10,000人=2%

 
この解約率が、どの程度の数字で推移するのか?
勤怠管理などSaaS型クラウドツール「TeamSpirit」を提供する、株式会社チームスピリットの決算資料から見てみましょう。
 
ユーザー数にあたる「ライセンス数」ベースでの解約率、上段の「Gross月次解約率」は、0.5%で推移しているのが分かります。
 
2021年8月期第2四半期決算資料より
2021年8月期第2四半期決算資料より
 
この解約率が分かれば、「既存顧客がどの程度の割合で減っていくのか?」「新規顧客を獲得しなければ、MRRがどれくらいのペースで落ちていくのか?」などが予測できます
解約率を低く抑えるために、「既存顧客のリテンションをどうしていけば良いか?」「事業を成長させるためにはどの程度のペースで新規顧客を獲得していくべきか?」を議論する出発点となるのです。
 
ちなみに、既存ユーザーは解約することもありますが、上位サービスへの乗り換えや追加サービスの契約などで利用金額が高まるケースもあります。
それらを加味して、「既存ユーザーからの売上がどの程度増減しているか?」を測ったのが、チームスピリット社の決算資料の下段にある「Net月次解約率」。
 
直近の四半期では-0.44%となり、既存ユーザーからの売上が増えていると分かります。
このように既存ユーザーからの解約による売上減少分を、アップセル・クロスセルなどによる増加分で上回っている状態を、「ネガティブチャーン」とも言います。
 
 
 

指標4:CACは、新規ユーザー1人あたりの獲得費用

 
1~3では「売上全体がどのように推移するか?」という視点からの指標でしたが、4と5では「売上や費用をユーザー1人あたりに分解すると?」という視点から、数字を見ていきます。
「ユニットエコノミクス」とも呼ばれる考え方
です。
 
サブスクリプションの事業にとって重要なのが、新規ユーザーの獲得。
その費用対効果を表すのが、CAC(Customer Acquisition Cost)です。
 
たとえば広告費100万円をかけて、100人の新規ユーザーを獲得できました。
この時CACは、
 

100万円÷100人=10,000円

 
です。
CACの相場は業界や商材によってそれぞれですし、広告市場での競争に直結するのもあってか、開示している企業は多くありませんでした。
 
そのなかで開示していたのは、インターネット専門で生命保険や医療保険などを提供する、ライフネット生命保険株式会社です。
 
2020年度決算説明資料より
2020年度決算説明資料より
 
生命保険はひとたび契約すると、毎月一定額の保険料を支払う、サブスクリプション型の収益モデルと言えるでしょう。
その契約を新規で獲得するためにかかる1件あたりのマーケティングコスト(全ての営業費用)は、2020年は66,737円
 
オンラインでの集客には、コロナ禍がプラスに作用したのでしょう。
2019年のCAC、75,970円からは10%以上低減して、効率よく新規契約者を獲得できるようになったと分かります。
 
CACを管理していくと、「ユーザーを獲得していくために、どれだけ費用をかけているか?」「投資した分を回収するためには、どの程度の売上を上げる必要があるのか?」が分かります
 
なお、同じようにマーケティングの効率性を測る指標として、「CPA」(Cost Per Acquisition)や「CPO」(Cost Per Order)なども使われます。
実務で活用する時には、その定義をぜひ確認してみてください。
 

 
 
 

指標5:LTVは、1ユーザーあたりの長期間の収益を示す

 
5つ目の指標が、LTV(Life Time Value)です。
一定期間に1人のユーザーから発生する収益を平均した金額です。
 
たとえば月額5,000円のサービスを1年間続けると、60,000円です。
もちろん解約するユーザーも一定割合でいるので、ユーザー1人あたりの売上が入会から1年以内で平均30,000円、1年後~2年以内に15,000円、2年後から3年以内で10,000円となりました。
この時LTVを3年間の期間をとって計算すると、以下となります。
 

30,000円+15,000円+10,000円=55,000円

 
CACと同じくLTVも開示している企業は多くありませんが、同じくライフネット生命保険株式会社が開示していました。
LTVとして、保有契約1件当たり年換算保険料×平均保険期間×粗利率を計算して、305,451
円という数字
を出しています。(指標4の図表を参照)
 
LTVを算出すると、「ユーザー獲得にかけた投資(CAC)を回収できているか?」や「どの時点で損益分岐点を超えて、どれだけの利益が生まれるか?」などを分析できます。
 

 
LTVとCACの比率は、商材やビジネスモデルによっても異なりますが、目安として「LTV/CAC>3」、すなわち「LTVがCACの3倍以上はあるのが望ましい」とも言われます。
 
HR(人事)分野でSaaS型システム「カオナビ」を提供するカオナビ株式会社は、LTV/CACを決算資料で開示。
平均してLTVがCACの4倍以上を確保していると、事業モデルの健全性をアピールしています。
 
2021年3月期 第4四半期 決算説明資料より
2021年3月期 第4四半期 決算説明資料より
 
商品やサービスの加入者が一時的に集まっているだけでなく、「ユーザーから長期的に支持されているか?」や「価値を感じてもらい、料金を支払い続けてもらっているか?」をチェックしていくうえでも、モニタリングしていきたい指標です。
 


 
サブスクリプションのビジネスモデルで活用される主要な指標を、これまで5つピックアップしてお伝えしました。
今回ご紹介したほかにも、Quick Ratio(MRR成長率)やRPM(定期利益率)、GEI(成長効率性指標)、Burn Rate(資本燃焼率)などさまざまなKPIが、サブスクリプションのビジネスモデルでは使われています。
 
今回の記事では詳しく紹介できませんでしたが、多数のKPIをロジックツリー形式で並べた「KPIツリー」を見ると、それぞれのKPIの関係性について整理しやすいかもしれません。
私が探していた限りでは、この記事のツリーが分かりやすかったので、ご興味ある方はご覧になってみてください。