近年拡大しているサブスクリプションには、今までになかった体験を消費者に提供するサービスが数多く存在します。
そのような中で、海外で先行し日本でも浸透してきたのが、定額で企業がセレクトした商品が送られてくるサブスクリプションボックスです。
今回はこのサブスクリプションボックスに注目し、サービスの概要と海外や日本で人気が出ている事例を紹介します。

目次
サブスクリプションとは
サブスクリプションボックスの説明に入る前に、まずサブスクリプションについて説明します。
サブスクリプションは、使われる場面で意味が異なることがありますが、商品やサービスを定額で一定期間利用でき、それに対して継続的な課金が発生するビジネスモデルです。
この定義から、サブスクリプションの特徴は次の3点であることが分かります。
- 一定期間の商品・サービスの利用
- 定額の支払い
- 継続的な課金
サブスクリプションビジネスは、多様な業界で拡大しており、市場規模は2020年度で約8,760億円と推計されています。※
たとえば以下のようなサービスが消費者に提供されています。
- 音楽・動画などのデジタルコンテンツ配信
- 服・ファッションのレンタル
- IT・ソフトウェア
- 教育関連サービス
- 住居関連サービス
このように、近年多くのサブスクリプションが市場に登場してきています。
ここでは、具体的なサービスを例にサブスクリプションについて解説していきます。
※ 『サブスクリプションサービス市場に関する調査を実施(2021年) | ニュース・トピックス | 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所』
使い放題プランはサブスクリプションの条件?
音楽・動画などのデジタルコンテンツ配信において「使い放題」のプランがよく見られますが、すべてのサブスクリプションサービスで提供されているわけではありません。
Netflix、Amazon prime video、Disney+などの動画配信サービスでは「見放題」プランを提案していますし、Apple Musicなどの音楽配信サービスでは「聴き放題」プランなど、無制限に利用できるプランを消費者に提供しています。
一方で、物理的なモノを届けるサービスである服・ファッションのレンタルサービスなどでは「月3着まで」といった回数制限を設けるなど、利用できる回数や量を制限するプランもあります。
定期購入や定期宅配はサブスクリプション?
新聞・雑誌や食品、ウォーターサーバーなどを定期的に届ける「定期購入」「定期宅配」のビジネスモデルでは、商品の定期的な購入と一定期間の商品・サービスの利用をするためサブスクリプションの一種といえます。
携帯電話や電気・ガス・水道はサブスクリプション?
携帯電話や電気・ガス・水道といったように、継続的な料金が発生するものの、使用した量などによって課金される従量課金である場合は、サブスクリプションの特長である「定額の支払い」と異なるため、原則的には当てはまりません。
サブスクリプションボックスって何?
サブスクリプションボックスとは、企業側がセレクトしたコスメ、食品、日用品、ファッションアイテムなどの商品を月額制で定期的に消費者に届けるサービスで、アメリカを中心に非常に人気があり過去10年間で急速に普及しています。
アメリカでは、サブスクリプションボックスの市場拡大とともに、取扱商品の種類が多様化しています。たとえば、定番のコスメ、食品、日用品、ファッションアイテムの他にも、子供向けの玩具やカミソリ刃などが提供されています。
アメリカで拡大したサブスクリプションボックスのビジネスは、グローバルに広がり、日本市場でも見られるようになってきています。
アメリカからサブスクリプションボックスが広がった背景
アメリカでサブスクリプションボックスが拡大した背景には、アメリカ国土の広大さがあります。
日本と比較すると、アメリカの消費者は自宅から実店舗までの距離が離れていることが多く、頻繁に足を運ぶことが困難な点があげられます。
日常的に使うコスメや食品、日用品が定期的に自宅に届けられるブスクリプションボックスは、アメリカの消費者にとって非常に魅力的なサービスです。
さらに、近隣のショッピングモールでは欲しいモノを手に入れることができないケースもあり、消費者の価値観に合ったお気に入りの商品を探すことが難しい点もあげられます。
サブスクリプションボックスは、このようなアメリカの消費者のニーズを満たす解決策として市場を拡大しています。
サブスクリプションボックスの特徴
サブスクリプションボックスの特徴は、消費者に体験をもたらす点にあります。
たとえば、ファッションアイテムを届けるサブスクリプションボックスでは、消費者は自分のスタイルを見つけるために企業のサイトに用意された質問に答え、AIとスタイリストが質問の回答を参考に、消費者に適した服を選んで自宅に送ります。
消費者は気に入った服だけを購入して、残りは返送します。
お気に入りアイテムを探して百貨店や小売店などの実店舗をショッピングする体験を、サブスクリプションボックスを通して自宅で体験できるというシステムです。
サブスクリプションボックスの目的
企業がサブスクリプションボックスを展開するメリットは、消費者に届けた複数の商品やサービスの中から、どれかを気に入って新たに購入につながり、そこで顧客データを得ることにあります。
これによって得られる消費者のメリットは、
- 商品やサービスとのミスマッチを減らせる
- 自分では探すことが困難な商品に出会うことができる
の2点です。
つまり、サブスクリプションボックスの目的は「商品やサービスとのミスマッチを減らしつつ自分では探すことが困難な商品との出会いの場を作ることで、継続率の最大化を図っている」と言えます。
サブスクリプションボックスを選ぶ際に消費者が見るポイント
日常的に使うコスメ、食品、日用品が定期的に自宅に届くサブスクリプションボックスは、アメリカの消費者にとって非常に魅力的であるといえますが、日本の消費者にとってはどうでしょうか。
日本は、アメリカと比べて国土は狭く、ショッピングモールやスーパー、コンビニエンスストアが全国にあり、地方都市には百貨店やファッションビルがあります。
つまり、日本の消費者は、単に定期的に自宅に届くだけのサブスクリプションボックスには魅力を感じにくいと想定されます。
この章では、消費者がサブスクリプションボックスビジネスをどんなポイントで選び購入するのかを解説します。
お得かどうか
消費者がサブスクリプションボックスを選ぶ際に見るポイントに、お得かどうかという点があります。
消費者がサブスクリプションボックスにお得感を覚える価格設定・商品設計をすることは極めて重要です。
たとえば、コスメを選ぶ消費者は、自分に合うコスメを見つけるためには実際に使って試してみる必要があります。
コスメなどのサンプルを届けるサブスクリプションボックスは、数多くのサンプルが届くため、コスメを購入して試すよりも、価格的に割安に気に入ったコスメを探すことができ、消費者にとってお得感のあるビジネスだといえるでしょう。
また、サブスクリプションボックスでは、セールや割引クーポン、プレゼント企画、限定商品などを設定している場合が多く、消費者がお得感を覚える施策を実施しています。
悩みを解決できるかどうか
消費者はサブスクリプションボックスで、自分の持っている悩みを解決できるかどうかを見ています。
たとえば、自分が気に入った服を着たいと思っているものの、買い物にいく時間がない、近くに店舗がない、流行りの服が分からないといった悩みがあるかもしれません。
このような悩みを持ちながら、自分が見つけられていない商品と手軽に出会いたい、といった思いを抱えている消費者を満足させるには、、トレンドを熟知したファッションコーディネーターや、好みの異なる消費者が気に入るような豊富な品ぞろえをするなどの工夫が必要です。
またプロモーションとして、Facebook、Instagram、TwitterなどのSNSを通じて、オススメのファッションアイテムを消費者向けに発信することも、消費者の悩みを解消することに対して有効でしょう。
便利かどうか
消費者は、サブスクリプションボックスを使うことが便利かどうかを見ています。
日常的に使うコスメや食品、日用品が定期的に自宅に届くことは、消費者にとって便利ですが、前述したように日本の消費者にとってはさほど魅力的ではありません。
そのため、消費者に体験をもたらす強いインパクトが必要となります。
たとえば、食品のサブスクリプションボックスでは、日本の消費者に食の安全とおいしい食事体験をもたらすために、無農薬で安全な旬の野菜を日本全国から集めて、レシピとともに定期的に自宅に届けるサービスが人気です。
また、サブスクリプションボックスブランドのWEBサイトが、欲しい情報がすぐに手に入る構造になっているかなどもポイントになります。
実際に購入する場合には、支払方法が多様である点も消費者にとって必要な便利さです。
サブスクリプションボックスの海外事例
この章では、海外で人気があるサブスクリプションボックスの事例を紹介します。
また、サブスクリプションボックスのプロモーションで重要なSNSでのファン獲得やメディアミックスの観点から、それぞれのサブスクリプションボックスにおけるSNSの活用法も解説します。
GLOSSYBOX
GLOSSYBOXは、グローバルに展開する海外のサブスクリプションボックスの代表的ブランドとして今回ピックアップしました。
ニューヨークやパリ、ミラノ、東京など世界10か国でビジネスを展開し人気を博しています。
GLOSSYBOXのサブスクリプションボックスには、トップブランドのメイクアップ、ヘアケア、スキンケア製品のサンプルが入っており、消費者はそれらを試して気に入った製品を購入することができます。
美容関連で新しい発見をするという体験を消費者に提案している代表的なサブスクリプションボックスといえるでしょう。
また、支払方法はVISAやマスターカード、アメリカン・エキスプレス、ダイナースクラブ、ディスカバーカード、PayPal、sezzleなどに対応するなど、利便性が高くなっています。
GLOSSYBOXのプロモーションでは、FacebookやInstagram、Twitter、Pinterest、YouTubeといったSNSを活用して、サンプルを実際に使用している動画や画像を数多く発信して、ファン獲得をしています。
NORDSTROM TRUNK CLUB
NORDSTROM TRUNK CLUBは、アメリカを代表する大手百貨店であるNORDSTROMが運営するファッションアイテムをメインにしたサブスクリプションボックスです。
消費者がサブスクリプションボックスを撰ぶポイントであるお得感、悩み解決を満たすブランドとして今回ピックアップしました。
NORDSTROM TRUNK CLUBのサブスクリプションボックスは、衣料を届けるだけのサービスではなく、消費者一人ひとりにパーソナライズされたアイテムを届けるパーソナルスタイリングを訴求したサービスです。
消費者個々のスタイルを理解するための質問をWEBサイトに設置し、その回答に合わせてNORDSTROMのトップブランドの中からさまざまなスタイルとサイズをチョイスしたサブスクリプションボックスを消費者に届けています。
消費者は購入する前にアイテムを試着して気に入ったアイテム以外は返品できるので、オンラインで購入した商品のサイズや色味、スタイルが合わないといった悩みを解決できます。
またWEBサイトでは、予算の範囲内で消費者のニーズに合うさまざまなサイズとスタイルが提供できることを押し出しているため、お得感を演出しているといえるでしょう。
NORDSTROM TRUNK CLUBのWEBサイトはPCだけでなくスマートフォンのアプリに対応しており、プロモーションでは、Facebook、Instagram、Twitter、Pinterest、YouTubeといったSNSを活用して、季節に合わせたファッション情報やNORDSTROMのアイテムを着用したコーディネートを発信し、ファン獲得をしています。
Just the Right Book
Just the Right Bookは、消費者の好みに合った理想的な本を毎月届けるサブスクリプションボックスです。
実店舗の書店として30年以上の実績をもつ「RJ Julia」が、本に関する専門家であるスタッフの知識と経験を活用して運営する、新たなビジネスモデルである点に注目して今回ピックアップしました。
Just the Right Bookのサブスクリプションボックスは、消費者の好みに応じて、AIが選定した本を毎月配達するサービスです。
届けられた本のフィードバックを消費者から得ることで、パーソナライズの精度を少しずつ向上させていくシステムなので利用すればするほど好みの本に出会うことができます。
自分の好みの本が毎月送られてくることで、飽きることなく継続されやすいのが特徴です。
また、Just the Right Bookには、友人や家族にサブスクリプションボックスを贈る「Claim a Gift」というサービスがあります。
プレゼントという形で既存顧客が自主的にサービスを広めてくれるため、広告出稿せずとも継続的に新規顧客を獲得できる仕組みを作っています。
プロモーションでは、Facebook、Instagram、TwitterといったSNSを活用して、おすすめの本の紹介や本が届けられるおしゃれな包装の画像を発信し、本が自宅に届くイメージを想像させることでファン獲得をしています。
サブスクリプションボックスの日本事例
この章では、日本で人気のあるサブスクリプションボックスの事例を紹介します。
各事例にはピックアップした理由を記載しました。また、サブスクリプションボックスのプロモーションでは、SNSでのファン獲得やメディアミックスの最適化こそが重要であるという観点から、それぞれのサブスクリプションボックスにおけるSNSの活用法も解説します。
エアークローゼット
ファッションアイテムのレンタルに特化した新感覚のサブスクリプションボックスである点に注目して、今回ピックアップしました。
エアークローゼットは、ファッションレンタルでは国内最大級のブランドであり、WEBサイトで簡単にユーザー登録するだけで、スタイリストが選定した洋服をレンタルすることができます。
スタイリストのピックアップで洋服が送られてくるため、自身で選ぶ時間がなくても自分好みの洋服を見つけることができる点が特徴です。
また、購入ではなくレンタルのため、
- 購入するより多くの洋服が楽しめる点
- 飽きてしまったアイテムは返却できるため場所をとらない点
などが、消費者から支持指示される理由です。
さらに、ファッションアイテムが気に入ったら会員価格で購入することもできます。
エアークローゼットのサブスクリプションボックスは、ファッションブランド各社と消費者を相互につなぐ役割を担うビジネスモデルであるといえるでしょう。
プロモーションでは、Facebook、Instagram、TwitterといったSNSを活用して、50万人以上の会員を獲得しています。
Sparklebox
Sparkleboxは、ジュエリーのサブスクリプションボックスで、消費者に3,300円からの月額制で2,000種類のジュエリーが借り放題のプランを提供しています。
購入することなく様々な種類のジュエリーから選ぶことができるお得感と、店に行かなくても自宅に届く利便性が特徴です。
どんなジュエリーが似合うか分からないといった悩みに対して、消費者にさまざまなジュエリーを身に着けられる体験を提供している点に注目して今回ピックアップしました。
Sparkleboxの扱うジュエリーは、本物の貴石を使ったアイテムから、ファッション性を重視したアイテムまでTPOに合わせたバリエーションが豊富です。
サブスクリプションボックスであることで、
- 忙しい人でもジュエリー選びを楽しむ時間を持てる点
- 消費者のニーズに合わせた料金設定がある点
も選ばれる理由です。
プランは、交換は無制限、1回1~3点のお届けで、1回あたりの上限額に合わせて、
- スタンダード(月額:3,300円、上限額:合計10万円)
- レギュラー(月額:6,380円、上限額:合計30万円)
- プレミアム(月額:10,780円、上限額:合計100万円)
- ロイヤル(月額:20,680円、上限額:合計200万円)
と設定され、多様なライフスタイルに対応しています。
プロモーションでは、Facebook、Instagram、Twitter、LINEといったSNSを活用しています。特にInstagramでは、ジュエリーの美しい画像を投稿し、Instagramユーザーの目を引くことでファン獲得をしています。
BLOOMBOX
BLOOMBOXは、毎月1,650円からの月額制で、消費者に適していると思われるサンプルコスメを4~5つセレクトして毎月届けるサブスクリプションボックスです。
BLOOMBOXは、
- 購入しなくても自宅にいながら、たくさんのコスメのサンプルを試せるお得感があること
- 自分に合ったコスメが分からないという悩みを解決できること
に注目して今回ピックアップしました。
BLOOMBOXでは、コスメの好みを登録してもらうことで、できる限り要望に沿うようにサンプルが届けられるので、消費者一人ひとりの美容に関する悩みを解決できることが特徴です。
月額料金は毎月1,650円の1か月プランからスタートして、気に入ったら6か月ブラン、12か月プランと期間を伸ばすことができます。また、一括払いに対する割引もあり、お得感があります。
プロモーションでは、Facebook、TwitterといったSNSを活用しています。Instagramでは、ハッシュタグ投稿を消費者に呼びかけ、Instagram検索に消費者の口コミを多く表示させることで商品に対して親近感を持たせる施策を行っています。
サブスクリプションボックスの特徴は、消費者にモノを購入することによる満足感ではなく、消費者が「お得感」「悩みが解決できる」「便利」と感じられる体験をもたらすことが成功のポイントです。
今回紹介した海外・日本の人気事例でサブスクリプションボックスの特徴と成功のポイントが、貴社の事業の一助になれば幸いです。