通販でクレジットカード決済を選択するお客様のLTVが高い傾向は、広く知られています。
ではこの傾向にもとづいて、すべてのお客様にクレジットカードでのお支払いを薦めることが、「正解」なのでしょうか?
ある健康食品通販企業の購入データから、決済方法ごとのLTVを分析したところ、LTVが高いお客様に共通する意外な事実が分かりました。
目次
「クレジットカード決済=LTVが高い」の通説を、検証してみました
「クレジットカード決済が、LTVを伸ばすために有効」という傾向は、ご存じの方も多いでしょう。
(お客様が「支払っている」という感覚を忘れがちになるのかもしれません。)
当研究所でも、その通説を検証してみました。
データベース上で、顧客をLTVごとに6つのグループに分類します。
- 50,000円~
- 40,000円~49.999円
- 30,000円~39.999円
- 20,000円~29.999円
- 10,000円~19.999円
- 10,000円未満
クレジットカード決済をしたお客様の比率は、「F. 10,000円未満」では、【30%弱】に対して、「A. 50,000円以上」では、【約55%】にものぼりました。
つまり、LTVが高くなるほど、クレジットカード決済の構成比が如実に高まっていたのです。
ですが今回ご紹介したいのは、それだけではありません。
500円のお試し商品を買うために、わざわざクレジットカードを使うか?
Webを主力メディアにしている通販企業様では2ステップ(=低価格なお試し商品の購入後に、定期購入を勧める手法)が多く採用されています。
ここで質問です!
【質問】
2ステップ・プロモーションを採用している企業では、500円のお試し商品を初めて買うお客様は、クレジットカードで注文するでしょうか?
【答え】
大多数がクレジットカード決済を選択しません!
多くのお客様は、たとえば「代金引換決済」(代引き)など、クレジットカード以外の決済方法を選びます。
では、代引きで注文したお客様が、定期購入も始めたとき、クレジットカードは使わないのでしょうか?
この答えも「No」です。
当研究所の結論=「LTVが最も高いお客様は、○○○です」
お試し商品は「代引き」で支払い、定期購入開始時にクレジットカード決済に変更する。
実は、このようなお客様の比率が高いのです。
ある健康食品販売企業様では、定期購入開始時に決済方法を変更するお客様が【約7割】を占める、というデータもあるほどです。
それでは、LTVが高いのは以下のどちらのお客様でしょうか?
・A: お試し商品の購入時に、クレジットカード決済を選ぶ
・B: 定期購入の開始時から、クレジットカード決済を選ぶ
ある通販企業様のデータをサンプルに出した、当研究所の結論をご紹介します。
お試し商品購入時に「コンビニ後払い決済」を選択して、その後の定期購入開始時に「クレジットカード決済」を選ぶ。
このような経路をたどるお客様が、最もLTVが高いのです。
「数字」を改善施策に落とし込むとき、迷い込んでしまうこと
改善施策を立てるにあたって、現象を正しく理解することが重要です。
「LTVが高いお客様は、クレジットカード決済を選択していることが多いようだ」
この現象からは、どのような施策が考えられるでしょうか?
・お試し商品購入を、クレジットカード決済に制限する
・購入フォームで、クレジットカード決済だけ目立たせる
・定期引上げ施策で、クレジットカード決済に誘引するキャンペーンを実施する
・定期購入中のお客様に、クレジットカード決済を勧める
・クレジットカード決済を選択した定期顧客を、手厚くフォローする etc
このように、さまざまな施策案が思い浮かびますが、最適な施策はどれでしょうか?
前提として書いた現象だけでは、施策案に優先順位をつけ、絞りこむのは困難です。
では、ここまで分かっていたら、どうでしょうか?
「LTVが高いお客様は、化粧品A(=特定の商品)の定期コース開始時にクレジットカード決済を選択していることが多いようだ」
クレジットカード決済を嫌がり、代引きを選んだお客様も・・
クレジットカード決済の有無が、LTVに影響を与えるといっても、その度合いは、特定の因子によって大きく異なります。
たとえば、決済の「タイミング」によって。
この場合、定期コース引上げ時に決済手法をクレジットカード決済に切り替えるように促すことが、優先順位として高くなります。
また商材によっても、影響度の高い商材と、低い商材があります。
したがって、全てのお試し商品購入時にクレジットカード決済を選択してもらう必要はないのです。
このように、複数の因子による影響度合いを考慮に入れたうえで、以下の施策を行いました。
【施策】
お試し商品購入時にクレジットカード決済を嫌がり、代引き決済を選んだお客様に、「クレジットカード決済が便利ですよ」という内容のメールを送付する
すると、送付対象者の約5%が、決済方法をクレジットカードに変更したという成果もあがっています。
「数字」を出して、おしまい?利益につながる「情報」を出せている?
目の前の数字に、一喜一憂する。
通販に関わる方であれば、誰しもが心当たりがあるのではないでしょうか?
(かくいう私も、ドキリとします。)
ただ算出した数字を目の前にしたとき、
「本当に正しいのか?」
「異常値はないのか?」
「条件は網羅できているのか?」
これらを立ち止まって考え、検証していくと、「数字」は「情報」へ、すなわち明快な解とともに、改善施策へ紐付けられる情報へと昇華します。
「数字」を出して、おしまい。
もし、そうなってしまっている方が周りにいれば、そこから一歩踏み込んで、
「具体的な施策をイメージして、データを分析すること」
「数字から導き出された施策案に、優先順位をつけること」を
オススメしてみてあげてください。
利益につながる「情報」が、きっと生まれてくるはずです。
LTVを高めるために、一番簡単にできること
新規顧客の獲得コストは、通販業界全体として高騰してきています。
獲得効率コストの効率化ももちろん大事ですが、今後ますます重要になるのは、「LTV」です。
LTVを高めて売上を作っていくために、今、一番簡単にできる事は、自社の顧客データベースを改めて検証して、「通販ならではの深い数字」を導き出すことと思います。
お客様の属性によってLTVに違いが出ることは、事実として分かってきています。
まずは、思い込みの枠から外れて、お客様の属性ごとにLTVを比較してみましょう。
今回深く取り上げた「決済方法」からいかがでしょうか?
そして数字を出した後に、立ち止まって考えてみてください。
それはただの「数字」ではないか?
「情報」になっているか?
もし「情報」になっているのであれば、それらは経験豊かな通販担当者様のヒラメキと組み合わさり、利益を生む改善施策へ紐付けることが、きっとできるはずです。