コスメやサプリなどを扱う企業が多いD2C業界で、Instagramの公式アカウント運用に力を入れる企業が増えてきています。
どのような商品やブランドが、インスタで売れているのか?売上への貢献や、アカウントを育てるためにかかる費用は?取り組む上で欠かせないポイントを紹介しています。
2022年の展望も最新事例をもとにまとめました。
公式アカウントから、広告を活用せず直接CVを伸ばす事例も
ハッシュタグ検索やアカウント検索といった情報収集ツールとして立場を確立してきているInstagramですが、まだブランディングやPRのためのチャネルといった印象も。
そのため、新規顧客獲得に直結する「数字」を求められるD2C企業ではInstagramは取り組みにくいと二の足を踏むケースや、トライしたものの継続が難しかったというケースがあります。
しかしそんななかでも、地道に運用することで直接CVに貢献する事例も出てきました。
たとえばある健康食品を販売する企業は、約3年間にわたり毎週定期的に投稿することでCVにつながる公式アカウントを育成。
- 社員が紹介する美味しい飲み方
- 商品を使ったレシピ
- 健康へのサポート効果
などの定期的な投稿以外にも、商材と相性の良さそうなインフルエンサーを起用してPR投稿を実施。
フォロワーからのいいね!・コメントや保存数などが増加し、エンゲージメント率が向上しました。
地道にアカウントを育てた結果、フォロワー数約5,000人を獲得、Instagramから月に200〜300件ほどの直接CVが発生するまでに成長しました。
1万人に到達しないまでも、ファンを中心とした施策を行うInstagramから獲得した顧客はLTVが高い傾向があり、効率の良い顧客獲得につながっています。
新規獲得数全体で見ると、まだまだ広告からの獲得比率が高くなりますが、広告費の発生しない安定した獲得チャネルを作ることができました。
以下は、公式の定期的な投稿やPR投稿を行いアカウントを運用した場合の、フォロワー数と年間CV数のイメージ例です。
このような手法以外でも、Instagramから月に数百件や数千件のCVを獲得できるケースもあります。
- 多額のプロモーション費用を投資して、アフィリエイトや多数のPR投稿の実施
- インフルエンサー自身が立ち上げたブランドをPR
などです。
ただし莫大な広告予算をかけたり、ブランド設立者自身が多くのファンを持っているなど通常の運用では補うことが難しいことも。
今回は、このような条件がない一般的なアカウントでも実績を作ることができた事例です。
Instagram運用に投資する、D2C企業が増えてきた理由
前章では効果について説明してきましたが、一定のCVを生むアカウントを育てるには、運用のための工数や費用は必要になります。
たとえば、投稿を内製化する場合は運用するスタッフの工数、外注する場合は運用委託の費用を想定しなければなりません。
もしインフルエンサーを活用したPR投稿も視野に入れているのであれば、50万円/月を短くとも半年以上はかけることをおすすめしています。
ここ数年で、Instagramは「映え」のメディアから情報収集のプラットフォームになり、指名検索の増加やハッシュタグ検索での上位表示などプラスに働く側面もあります。
ただ得られる効果は「認知度アップ」や「口コミの発生」「ロイヤルティの向上」など、間接的な貢献にとどまってしまう企業が多いのが現状です。
しかし、あくまで役割の中心は、
- 認知度のアップや口コミの増加といったPR効果
- フォロワーや既存顧客との結びつきを強めるためなどの関係維持
など、CV獲得に直結するケースは少なく、1つの施策の直接的な貢献は見えにくいもの。
それでも、直接的な販売効果を求めることの多いD2C業界で注力する企業が増えている背景には、取り巻く環境とInstagramの機能に変化がみられるからです。
顧客との関わり方や接点の多様性が求められるように
1つ目の理由は、検索プラットフォームの変化。
買い物をする時にGoogleではなく、InstagramやTwitterなどSNSで検索して、口コミや使用シーンを確かめるという行動が、若年層から広がっています。
2つ目は、WEB広告への依存の懸念。
オーガニックで獲得できると新規獲得先依存のリスクヘッジになります。
特にこの1年間では、運用型広告のCookie利用の制限が正式に発表されたことで、SNS活用や自社リストを持つ必要性を感じる企業が増えてきました。
3つ目は、ファン作りの重要性。
WEB広告が普及する反面、信憑性を疑う方も増えています。
その中で、購買への影響度が上がっているのが身近な友人や家族の口コミ・信頼できる人から発信される情報です。
SNS上で顧客やユーザーと交流をはかりブランドのファンになってもらえれば発信・拡散をしてくれることも。
口コミなどのUGCコンテンツはCV獲得に繋がる重要な資産へとなっていきます。
ショップ機能も強化、SNS経由での購入は当たり前になる?
Instagramが多数のユーザーに活用されつつある今、日常的な検索のプラットフォームとしての利用は増え続けています。
そのため「商品名を検索したが何も出てこなかった」ことで、商品やブランドがユーザーにとって「存在しない」ことになる恐れも。
全くInstagramに取り組んでいないという企業は、自社にあったやり方で取り組めるとよいのではないでしょうか。
また、Instagramは認知・ブランディングに大きく影響するようになっていますが、CVにつながる動きも強化されています。
- ストーリーズへのリンク貼付を一般ユーザーへ解放
- キャプションにショップページに遷移できる「ショップタグ」の登場
- ウィッシュリスト機能の追加
などの購入につながる導線が増加
SNSから買い物をするという流れが、若年層だけでなく中高年層に今以上に広がっていく将来も見えてきています。
最近では、アカウント育成が今まで以上にCV獲得に影響を及ぼすという意識が企業様のなかに芽生えてきており、直接CVにつながるSNSとして、公式アカウントを育てるD2C企業が増えてきています。
2022年、インスタで売れる商品やブランドは?
しかし現時点では、Instagramの施策があらゆる商材やブランドで効果が出る訳ではありません。
自社に「ハマるか」「ユーザーに支持されるか」には、いくつかの条件があります。
2022年の売れ筋を判断するうえでのポイントは、
- 顧客層の年代や性別
- 商材とのマッチング
- 価格やオファー
です。
ポイント1:メインの顧客層が、40代以下×女性
Instagramのユーザーのボリュームゾーンは、10-30代の女性、次に40代、50代と続きます。
D2C企業に限らずプロモーションに力を入れているブランドは、20-40代女性を主要なターゲットとしているケースが多く見られます。
50代以上がメインターゲットの場合は、Instagramを利用しているユーザー数が少なくアプローチできる母数が限られるため、最適なメディアとはいえません。
着々と中高年層のユーザー数は増えてきていますが、現時点ではターゲット層が40代までの商材が向いていると考えています。
最近は男性のユーザー数が増えてきていることもあり、男性向け商材のプロモーションの実施事例を目にするようになりました。
ただ、弊社の実績では現時点では女性をメインターゲットにした商材のほうがCV獲得しやすい傾向です。
ポイント2:目新しい成分や、独自の訴求ポイントのある商材
私どもが運用する中で見えてきた成功パターンとしては
- 新しい素材や成分を使用
- 競合の露出が少ないカテゴリー
- 独自の訴求ポイントや尖ったメッセージを出せる
など。
「トレンドの先駆け」のイメージがあるインスタグラマーに “目新しい情報” として発信してもらえる強みを持った商材は、効果が出やすくなります。
まだ広く知られていない場合でも、認知度が低い特別な成分が入っていたり、使い方や切り口が新しい手法であれば、紹介してもらえる可能性が高まります。
プロダクトライフサイクルの「導入期」にあたり、広告の反応が出づらい商材でもチャンスがあるのが魅力です。
知名度が低い新製品を購入する消費者は限られ、オンライン上での購入となるとさらにハードルがあがります。
しかし、インフルエンサーの投稿により具体的な使用イメージを持ってもらったり、公式アカウントを通して商品理解を深められれば購入につながりやすくなり、認知拡大にもつながります。
インスタグラムに向いている商材/向いていない商材
向いている商材 | 向かない商材 |
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たとえば最近では、新しい成分を使ったスキンケア商品や、健康志向の人をターゲットにしたダイエット系栄養ドリンク、などのアカウントがインフルエンサーのPR投稿も活用しながら、フォロワー数あるいはいいね!数を伸ばしています。
商材の特性によって、どのような訴求で発信をするかは異なります。
たとえば「栄養価の高いスーパーフードを成分としているサプリ」ならば、食事や栄養という切り口で「デリスタグラマー」にPR投稿をしてもらうなど。
趣味嗜好が近いフォロワーにアプローチするには、商材とインフルエンサーの相性を見極めることも重要です。
また、訴求ポイントを多く用意できるとプロモーションの幅も広がります。
ポイント3:オファーは「定期縛りなし」など、ハードルを低めに
Instagram上の買い物で発生しやすいのは、インフルエンサーの投稿をタイムラインを見た時やハッシュタグ検索した際に、直感的に良い!と思っての「衝動買い」。
そのため、瞬時に購入の判断をしてもらえるように入り口のハードルはできるだけ下げ、価格から買いやすい印象を与えられるとCVが発生しやすくなります。
具体的には、
- 本商品だけではなくお試しも用意
- 初回から定期購入の場合は“縛り”は無し
など。
価格も、「500円」や「980円」など1,000円以下の場合は売れやすい傾向です。
オファーを低く設定すると継続意思が高くないユーザー層が多くなり、「リピート率や引き上げ率が低くなってしまうのでは?」というのが、気になるところかと思います。
しかし、Instagramの運用をご支援している企業から、LTVは他メディアより良いケースも多いというお声をいただいております。
これは、商材と親和性の高いインフルエンサーの起用により、LTVも高まりやすいためと考えています。
1〜3に当てはまり、公式アカウントの運用を本格的にされていないD2C企業があれば、2022年にぜひ始めてみてください。
次は運用をはじめた方のお役に立てるよう「自社に合ったインフルエンサーの選び方」や「公式アカウントの投稿から販売につなげるコツ」など、お届けしていきます。