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サブスクリプションの失敗事例は?日本企業が撤退した事業5つと、ビジネスモデルの要因

ストック型の売上で、安定的な収益を見込めるのが魅力のサブスリプションの事業モデル。ただし収益性が成り立つには、「原価率」や「会員数」、「LTV(ライフタイムバリュー)」などの指標が適正である必要があります。大手企業から中小・ベンチャーまで、日本企業でサブスクリプションの事業を始めたものの、撤退や中止、あるいは事業譲渡などで開始時のサービスを終了した5つの事例を調べました。

事例1:牛角「食べ放題PASS」は、人気すぎて客席が埋まり販売終了

大手企業の撤退事例、1つ目が焼肉チェーン「牛角」を運営するレインズインターナショナルが販売していた「食べ放題PASS」です。
 
このサービスは、2019年11月に首都圏の3店舗限定でスタート。
月額11,000円で、通常3480円の「牛角コース」が食べ放題になるという、お得感のある価格
が、人気を博していました。
 

画像は日経ビジネスより転載
 
では、なぜ販売を終了したのでしょう?

年明けからSNS上で話題になるやネットメディアやテレビ番組でも取り上げられるようになり、購入者が殺到。対象の3店舗は予約で席が埋まってしまい、PASSがあっても店に入れない状態になってしまったのだという

(exciteニュース「牛角「食べ放題PASS」販売終了が物語る飲食店サブスクの限界」より)
 
飲食店で「食べ放題」や「通い放題」などを月額制で提供する場合は、
 
・席数という物理的なスペースを占有してしまい、通常の売上の機会ロスが発生
・食材など原価がかかるため、一定回数以上通う顧客は採算割れに
 
といった要因も踏まえて、ビジネスモデルが成り立つか?をしっかり検証する必要がありますね。
 
ただし、同サービスは店舗を限定しての試験的な販売という位置付け。
2020年3月からは、7種のプランを用意して再度一部の店舗で試験販売を始めたということで、同社にとってもトライ&エラーをしている段階なのでしょう。
 
 

事例2:カミソリの定期購入サービスは、新規顧客の獲得につまづき・・

 
2つ目の事例は、男性用カミソリの定期購入サービス「Tokyo Shave Club」です。
 
カミソリの替え刃を毎月配送するサービスで、スタートアップ企業のOpenUpが2013年12月に開始。
月800円(送料無料)で6枚刃の替え刃3個が届く、プレミアムプランなど3種類の価格帯で提供していました。
 

画像はプレスリリース(PRタイムズ)より
 
ところが、2018年5月にはサービス終了を発表。
その原因は、新規顧客の獲得につまづいたことだったそうです。
 

このサービスは米国で成功を収めたカミソリの定期購入サービス「Dollar Shave Club」(DSC)のビジネスモデルを日本に持ち込んだものだった。(中略)
12年にサービスを開始。4年で会員数300万人超、売上高も200億円を超え、16年7月にユニリーバが10億ドルで買収している。

(日経クロストレンド「月額制サービス「思わぬ盲点」 撤退企業が明かす成否の分け目」より)
 
ということで期待された「Tokyo Shave Club」ですが、日本では市場環境の違いに苦しみます。
 
・カミソリの購入環境の違い(米国では、店舗で買いづらい)
・プロモーションの不発(米国では、競合を批判したYoutubeがバズる)
 
などもあって、定期購入するユーザーが集まらなかったそうです。
 
月額1,000円から数千円、あるいは数百円など単価が高くない商品の場合、採算が成り立つためには、一定の顧客数が必要です。
特にECやレンタルなどモノを提供するサービスの場合は、物流やシステムなどインフラ面の負荷もかかりがち。
 
したがって、新規顧客を計画したペースで獲得できるか?が事業が立ち上がるか否かの鍵を握ります。
 
 

事例3:日本酒のサブスクECは、会員の解約が“想定外”

 
3つ目が、今度はベンチャー企業が提供していた日本酒の定期購入型EC、「SAKELIFE」です。
 
同サービスを始めたのは、2013年に創業したベンチャー企業、Clear株式会社。日本酒に特化した事業を展開しています。
 
月額3,150円で4合瓶が届く「ほろ酔いコース」と、月額5,250円で1升瓶が届く「ぐい呑みコース」の2種類。
「創業500年に老舗居酒屋店主の目利きで、顧客の好みに合わせて厳選した日本酒を届ける。」
というコンセプトが、「日本酒に興味はあっても選び方が分からない」という顧客のニーズを捉えたそうです。
 

画像は食彩lifeより転載

 
着実に会員数を伸ばし、利益も出ていたものの、別の会社に事業を譲渡します。
「事業を大きくスケールさせるには向かなかった」とのことで、その理由で意外だったのは・・
 

誤算だったのは、契約後2年前後で会員が“卒業”していくことだった
「自分の好みの日本酒が分かってきた」「自分で選べる自信がついた」といった感謝の言葉を残していることから、サービスへの不満からの解約ではなかった。

(「サブスクリプション2.0」日経クロストレンドより)
 
 
現在は、事業譲渡先の他社が、別名称でサービスを手がけているそうです。
 
サブスクリプションの事業モデルで収益が成り立つための鍵が、一度購入した顧客が、長期的に継続して購入してくれること。
特に、新規顧客の獲得(広告)やシステムの整備などに、先行投資が発生するケースでは、LTV(ライフタイムバリュー)と呼ばれる、顧客当たりの長期間での売上をいかに伸ばせるか?がポイントです。
 
事業開始時の想定以上に解約が発生して、リピートしてくれない場合は、顧客数を広げても投資を回収できず赤字になってしまい、採算が成り立たなくなってしまいます。
 
 

事例4:ZOZOTOWN「おまかせ定期便」、事業モデルの継続が困難の理由は?

 
4つ目の事例が、ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」が2018年に始めた、「おまかせ定期便」です。
 
おまかせ定期便は、「サイズ」や「服の好み」などアンケートに答えると、ZOZOTOWNの取り扱う50万点以上のアイテムが選んで送られる、というサービス。
1~3カ月ごとに、服や靴など5〜10点が届きます。
 
サービス自体の利用料金は、送料200円(税込)のみ。
好みに合った商品は購入して、不要なアイテムは無料で返送
できます。
 

画像はプレスリリース(公式サイト)より転載
 
「服を選ぶのが面倒なので助かる」「自分では選ばないものを選んでくれて幅が広がった」など好評の声も多かったようですが、2019年3月にはサービスを停止。
 
その理由は同社によると、「既存会員の購入率が低かった」ため事業モデルとして成り立つのが難しいと判断したそうです。
 

おまかせ定期便を機にZOZOTOWNに新規入会したお客様は、購入率も高く非常に好評だったが、普段からZOZOで買い物されていた既存会員は購入率が低かった。
送料以外完全無料というサービスの特性上、誰でも簡単にサービスを利用いただけるため、人に洋服を選んでもらうことを必要としていないお客様のご利用も多かったようだ。

(IT media NEWS「好評の声もあったが……ZOZO「おまかせ定期便」終了のワケ」より)
 
Stitch Fix」という米国企業をベンチマークに分析したブログ記事が参考になったのですが、「洋服をレコメンドする」というビジネスモデルは、コストがかかる事業モデルのようです。
 
「提案した商品を、顧客が気に入って購入してくれるか?」が、売上が立つか否かの肝。
Stitch Fixでは、この提案の精度を高めるために、「AIの活用」や「スタイリストが商品をセレクト」、「返品時にフィードバックを貰う」といった仕組みを構築しているそうです。
 
そのためには、データサイエンティスト・スタイリスト等の雇用に固定費を投資する必要があります。
さらに、物流・決済などのオペレーションコストも、会員が増えるごとにかさんでいきます。
 
特にZOZO「おまかせ定期便」は、基本料金が「送料200円(税込)のみ」という安価な価格設定。
既存顧客の購入率が想定以下だったということで、収益性を確保できなかったのでしょう。
 
ITシステムに初期投資が必要なサービスや、物流・決済・CSなどオペレーションコストがかかりがちな業態では、その分を回収できる収益モデルを作れるか?損益分岐点を超えられる目処が立つか?が、事業の継続/撤退の分水嶺となります。
 
 

事例5:AOKIのスーツレンタルは、既存事業との“カニバリ”も!?

 
最後に紹介するのが、「紳士服のアオキ」で有名なAOKIホールディングが提供していた、スーツレンタルサービス「suitsbox」です。
 
「suitsbox」は、”スーツ離れ”が進む20-30代の若者世代をターゲットに、2018年にリリース
 
月7,800円のエコノミープランでは、スーツ・シャツ・ネクタイ各1セットが毎月送られてきて、新しいボックスが届いたら前に届いたアイテムは返却します。
「プロがコーディネートを選んでくれる」「季節に合ったスーツを着れる」などが人気だったようです。
 

画像はプレスリリース(PRタイムズ)より転載
 
ところがリリースからわずか半年後の2018年12月、「中期的な黒字化が見込めない」としてサービスを終了。
その要因は、顧客ターゲットの”想定外”にありました。
 

「スーツ離れが進む若年層の利用を想定していたが、実際には店舗で購入している40代などの中核顧客が多く、カニバリが起きてしまった」(業界関係者)。
リアル店舗などの「レガシー」のしがらみがネックになった格好だ。

(「週刊ダイヤモンド」2019年2月2日号より)
 
自社のネット通販サイトとの相互送客など期待していたシナジーも見られず、また豊富な品揃えを求めるユーザーの声に応えられなかったこと(「週刊東洋経済」2019年1月26日号より)、も背景にあったとのこと。
さらに「システム構築費やサービス運用コストがかさみ黒字化が見込めない」(日経クロストレンド「(続報)AOKIサブスク撤退の裏に4つの想定外」より)ことから、撤退に至ったそうです。
 
似通った商材を販売ではなくサブスクリプションで展開する場合、仮に新規事業が成長しても、既存事業の売上を”食ってしまう”形となり、会社全体としては売上増加には結びつかない恐れも。
特に新規事業の立ち上がりが見えない段階や、利益を出している稼ぎ頭の既存事業の“政治力”が組織内で強い場合は、カニバリゼーションが大きく問題になりがちです。
 
 

まとめ:業態やビジネスモデルごとに“失敗の予行演習”を

 
この記事で紹介した5つの事例では、以下のように撤退の要因となるビジネスモデル上の原因をそれぞれ紹介しました。
 
・新規顧客の獲得数が伸びない
・顧客のLTVが想定以下だった
・原価やオペレーションなど採算割れ
・ITシステムなど固定費の投資がかさむ
・社内の別事業とのカニバリゼーション
 
サブスクリプションは、安定的なストック収入が得られるという大きなメリットの反面、「短期的には、売上を成長させづらい」「費用のコントロールが難しい」といったデメリットもあります。
 
撤退の原因は、業態やビジネスモデルによってもさまざまです。
あなたの企業や事業に当てはめてみたとき、今回のケースが“失敗の予行演習”をしていくうえで、少しでもご参考になれば幸いです。