通販業界の中でも高い利益率が注目されている単品リピート通販。
同じ商品を繰り返し購入してもらうことで利益を上げるのが特徴です。このビジネスモデルを成功させるために必要なのは?5つポイントとともに解説していきます。
通販事業の現場で使われているKPIを新任担当者でも分かるようにまとめました。
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単品リピート通販とは?「1ブランドを繰り返し購入」が特徴
まず単品通販とは、主に1種類の商品を販売する通信販売のビジネスモデルです。
もちろん商品が1つだけのこともありますが、1ブランド複数商品を販売する場合も単品通販と呼ばれます。
単品通販では、毎月使われる化粧品や健康食品などが多く取り扱われています。
化粧品の企業ではオルビスや再春館製薬所、健康食品ではサントリーウエルネスや世田谷自然食品などが有名です。
商品が1ブランドだけなので、1回だけでなく繰り返し購入(リピート)してもらうことが重要です。このことから、単品リピート通販とも呼ばれるようになりました。
多くの商品を扱う総合通販との違いを比較しながら、その特徴をみていきましょう。
総合通販との違いで比べると・・?
総合通販の代表格、Amazonを例にとってみましょう。
Amazonでは本から家電、アパレルや食料品・雑貨小物まで、あらゆる商品を購入できます。しかし、顧客の多くは同じ商品を購入することはほとんどありません。
一方で単品リピート通販では、主に化粧品や健康食品といった毎月使う商品を販売しています。一人の顧客が気に入った同じ商品を、くり返し購入しているのが特徴です。
また商品の多くは自社ブランドのオリジナル商品。
店舗での販売はなく自社通販のみで販売しているというのも、総合通販にはあまりみられないことです。
総合通販・単品リピート通販の比較
ビジネスモデルとしてのメリットとデメリット
単品リピート通販のデメリットをあげるなら、新規顧客獲得のマーケティングの難易度が高いことです。
はじめは商品名を知る人も少ない状態から、お客様を呼び込まなくてはならないためCPA(顧客の獲得単価)は高くなりがちです。
逆にオリジナル商品を顧客に直接販売するため、価格競争に巻き込まれにくく利益率を確保しやすいのがメリットです。
参考記事:単品リピート通販とは?ビジネスモデルと企業売上ランキング(2017年度)
通販事業の現場で使われているKPIを新任担当者でも分かるようにまとめました。
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ビジネスモデルを理解するために知りたい、5つの考え方
単品リピート通販の商材に、健康食品や化粧品が多いのはなぜでしょうか。
それは商品を気に入れば、習慣として長く愛用くださるお客様が見込めるためです。
単発購入の顧客を多く集めるより、長く購入を続けていただけるお客様を集めることで事業を安定的に成長させることができます。
単品リピート通販の事業成長に欠かせないポイントを5つにまとめました。
ポイント1:初回購入時点では「赤字」!店舗がない分、広告費を先行投資
店舗を持たない通販ビジネスでは、自社のECサイトが店舗にも販売員にもなります。
そのサイトへお客様を呼び込むために、広告は大きな役割を果たします。
安価で商品を試せる「モニター施策」や「初めてのお客様限定」で価格を抑えた商品を用意するなど、ハードル低く商品を手に取って実感してもらうためのマーケティング戦略をとる企業もあります。
なぜなら広告から得られるのは売上だけでなく、新規顧客のリストもだからです。
顧客リストが集まればメールやDMの他、アプリからのプッシュ通知などあらゆる手段で商品を販売できます。
通販ビジネスのスタート時期は、特に「顧客を仕入れる」ための広告投資が重要です。
そのため顧客の初回購入時点では、広告費が売上を上回り赤字からのスタートになります。
ポイント2:リピート購入で損益分岐点を超えたら、投資回収
顧客を仕入れるための広告投資。赤字スタートからどうすれば収益化ができるのでしょう。
重要になるのが、リピート購入してもらうこと。
まずは広告で顧客リストを集めて、繰り返し長く購入いただくことで初回の赤字を徐々に解消し黒字へと転換させていきます。
「新規獲得からリピート購入」という流れができてくると、売上は顧客リストの増加に伴い積みあがっていきます。リピート購入後は継続して購入していただくなどでお客様一人あたりのLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を高めて、事業を安定成長させていきます。
本来LTVは「顧客生涯価値」ですので一人のお客様との取引が終わるまでをさしますが、
単品リピート通販では購入サイクルが短いこともあり、期間を1年間としてみることが一般的です。
投資からスタートした事業が黒字に転換したら、これまでの投資を回収しさらに事業を拡大させるためのマーケティングに拍車をかけていきます。
リピート通販の売上イメージ
ポイント3:売上を安定させるための鍵が、定期購入の仕組み
リピート購入が大事とはわかっても、実際には継続して注文いただくには難しいことも。
たとえば、お客様の側からすると「うっかり、注文し忘れてそのままになっている」、「毎回注文するのは面倒くさい」ということもあるでしょう。
企業側としては、リピート購入を促すDMやアウトバウンドにはコストも発生します。
そこで生み出されたのが「定期購入」の仕組みです。
毎月購入してもらえるお客様を獲得することで、安定した売上を確保できるようになります。また、お客様にとっても毎月注文しなくても自動的に商品が手元に届くメリットがあります。
企業側もビジネスでは外的な要因により、売上予測を立てることが困難な場合もあります。
しかし、定期購入の仕組みがあると未来の売上の予測も立てやすく、安定的に事業を成長させやすいでしょう。
定期購入の有無による売上推移イメージ
ポイント4:クロスセル・アップセルで、さらにLTVを高める
事業拡大のスピードを上げるためにはクロスセルやアップセルを活用していくことが重要です。
本商品をリピート購入しているお客様へ、関連商品をプラスする(クロスセル)または高価格帯商品にスイッチする(アップセル)で、LTVを高める仕組みを構築していきます。
化粧品企業では、ブランドで複数商材を揃え、ライン使いをおすすめするクロスセルが盛んです。
また、健康食品企業では有効成分の増量や、複数機能追加によるコスパ訴求でアップセルに成功している事例がみられます。
クロスセル例
・クレンジングを購入したお客様に、化粧水や乳液などのライン購入
・美容液購入のお客様に、さらに美白パックをすすめる
アップセル例
・有効成分を増量した、グレードアップ商品へ乗り換えのおすすめ
・3ヶ月分の「まとめ買い」で〇%お値引き
・送料無料 お得な「増量タイプ」
自社商品の使い切りのタイミングや顧客属性から、商品同梱・DM発送・アウトバウンド・アプリプッシュなど、接触方法やタイミング・訴求を検討されるとよいでしょう。
さらに詳しくごお知りになりたい方は、こちらの記事もあわせてお読みください。
クロスセル活用戦略は、商品ごとに異なる -化粧品・健康食品通販の事例から-
ポイント5:仕組みができれば、広告費を投入した分だけの成長
収益を伸ばしていくために、シンプルに粗利をみる方法を紹介します。
( LTV ー CPA ) × 顧客数 = 粗利益
LTVがCPAを上回っている健全な状態であれば、顧客数が増えれば増えるほど利益が見込めます。これまでの施策を駆使して事業を安定化できたタイミングで、獲得効率(CPA)を合わせられているときには、広告費を積極的に投入して事業拡大の舵を切っていくことが得策です。
通販事業の現場で使われているKPIを新任担当者でも分かるようにまとめました。
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“サブスク”や”Saas”でも共通する、「ユニットエコノミクス」の考え方
これまで解説してきた単品リピート通販のビジネスモデル、その特長をまとめると・・
・売上や費用を、顧客1人あたりの数字にまで分解すること
・1人あたりの売上(LTV)-費用を最大化すること
・費用のなかでも新規顧客獲得コスト(CPA)を、リピート購入で回収するのが肝であること
いわば顧客を「仕入れ」、丁寧にフォローしてリピート購入してもらい、黒字転換する。
顧客1人ひとりの収益性に注目する考え方は、今さまざまな業態で広まっています。
「サブスク」や「SaaS」などが注目を浴びているのは、ご存知でしょう。
ユニットエコノミクスと親和性のある業態
これらも単品リピート通販と同じように、先行投資によってユーザーを獲得して、継続的な利用を前提に売上を積み上げるビジネスモデル。
ITビジネスやベンチャー投資などの界隈でも、「ユニット・エコノミクス」という言葉を聞く機会が、この2,3年間で増えました。
ユニットエコノミクスとは、顧客1人当たりの採算性を表す指標です。
顧客1人の生涯価値(LTV)から顧客1人当たりの獲得コスト(CAC)を引き、プラスになっていればユニットエコノミクスは健全と言えます。
「今さら聞けない『ユニットエコノミクス』とは?投資家が重視する評価指標を解説」より
これまで一般的だったのは、「売上-原価-販管費=営業利益」を事業全体で捉える図式。
単年度でのP/L(損益計算書)を重視するのが、ビジネスモデルの基本でした。
ところが、「初期は赤字を掘って先行投資しても、顧客・ユーザー規模を拡大する」という攻め方が有効な、サブスクやSaaSなどの業態の存在感が増すと、従来のP/Lだけでは事業の健全性をモニターするのが難しくなりました。
そこで、「この事業は、投資を回収して成長できる見込みがあるのか?」をはかるために重要になったのが、ユニット・エコノミクスです。
(逆に言えばこの考え方を使いこなせば、短期的なP/Lに囚われず、B/S(貸借対照表)を意識した長期視点での経営ができるようになる、とも言えるでしょう。)
現時点で把握している限りでは、このユニット・エコノミクスを日本で最も精緻に把握して、伸ばしていく仕組みを整えてきたのが、単品リピート通販業界です。
サブスクやSaaSのように今勃興しつつある業態でも、まだ見ぬ未来のビジネスにおいても、単品リピート通販で培われた知見は、きっと大いに参考になるはずと信じております。
通販事業の現場で使われているKPIを新任担当者でも分かるようにまとめました。
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