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D2C事業のマーケティングや広告で、押さえたい5つの手法・トレンド

D2C事業をスタートする時、売上を立てるため肝になるのがマーケティング。

「インスタライブで売れるらしい」「あの会社はYouTube広告で成功している」など、さまざまな手法やテクニックが語られますが、商材やビジネスモデルによって“正解”はそれぞれです。

一方、D2C事業にチャレンジするなら「これだけは押さえておきたい」新しいマーケティングの手法やトレンドもあります。

日本企業の活用事例とともに、5つのポイントにまとめました。

 

ポイント1:「プロダクト・マーケット・フィット」を実現しているか?

 

D2C事業をゼロからスタートするなら、真っ先に目指したいのが、「プロダクト・マーケット・フィット(Product Market Fit/PMF)」。
 

顧客の悩みや課題を、商品は解決できているか?

ニーズや願望に、応えられているか?です。

 

プロダクト・マーケット・フィットを実現できているD2Cブランドは、「ユーザーが口コミで新しいユーザーを連れくるので、広告費をかけなくても事業を成長させられる」と、日本のD2C企業の先駆けとして有名な、FABRIC TOKYOの森雄一郎氏は語ります。

 

一方、そもそも商品が顧客のニーズと噛み合っていないと、どれだけマーケティングに投資をしても、テストをしても、成果は上がりにくいもの。
「広告費をかけても、新規顧客の獲得効率が悪い」「初回購入まではしてもらっても、顧客満足度が低くリピートしてくれない」といったことになってしまいます。

 

では、プロダクト・マーケット・フィットをどうすれば実現できるのか?
そのためには、たとえばIT製品の分野では「リーンスタートアップ」と呼ばれる方法論が確立していますが、D2Cのようなものづくりですぐ簡単にできて有効なのが、「顧客の声を聞く」ことです。

 

たとえば「菌ケア」を掲げたサプリメントを販売する「KINS」。

 

2020年には売上が約10倍にアップ、「2021年末までに月商1億円達成」を目指して急成長中ですが、創業当初にマーケティングの方針を転換。
広告主体ではなく、インスタライブやオフラインのセミナーを開催するなど、顧客との対話に徹底的に時間をかけたそうです。

 

こちらでサプリを使用したユーザーから「全然治らない」と言われて、「ああそうですか」で済ますわけにはいかない。
じゃあ、今度はその人たちに合うような物を作ろう。あるいはお客さまが求めているものが市販されてないから自分たちで作ろう。
実際に作ってみたら「すごくよかった」という人と「私は駄目です」という人に分かれた。
じゃあその駄目だという人たちのためにまた別のものを作ろう…
こんなPDCAをひたすら回してきたことが、解約率が低い点につながっていると思います。

(「顧客をつかんで離さないD2Cの教科書」角間実 より)

 

「とにかくユーザーの情報をリアルタイムで聞き、それに対してひたすら答え続けるというサイクルを愚直に続け」たことが、「1年後の継続率が約50%」という解約率(チャーンレート)の低さにつながりました。

 

このように顧客に満足してもらえるものづくりに注力した結果、インフルエンサーの発信やInstagramの公式アカウントの投稿など、口コミ・SNSで「顧客が顧客を呼ぶ」を実現。
定期購入メインの売り方で、1ヶ月で2,000人の新規ユーザーを獲得するまでに成長しました。

 

KINS公式サイト
同社WEBサイトより

 

さらに2020年には3億円の資金調達も完了し、「2021年末までに月商1億円達成」を目指して、オーガニックメインの販促に広告投資も加え、成長に向けアクセルを踏んでいます。

 

この事例からも分かるように、商品を買い使ってくれた顧客と対話しながら、商品やマーケティングを改善していくことは、成長の土台を作るために重要。

 

・電話や対面、オンラインイベントなどでインタビューをする
・購入時のWEBフォームやメール、LINEでアンケートをとる

 

といった方法で、購入動機や商品の使用シーン、使い続けての変化などを聞いていきます。

 

このようなプロセスを踏み解像度を高く顧客を理解したうえで、得られた気づきを商品やCS、販促などのチームにフィードバック。
商品やマーケティングに反映して、改善をしていくのです。

 
 
 

ポイント2:広告を打つ前に、「ユニットエコノミクス」で収益性のめどは立っているか?

 

商品が顧客のニーズをつかめるようになったら、続いて課題になるのが「事業が収益性を確保できるか?」。

収益性を測る“物差し”として有効なのが、「ユニットエコノミクス」の考え方。

具体的には、顧客1人あたりがもたらす収益(LTV)や、新規獲得にかかるマーケティング費用(CPA)です。

 

たとえば食品分野のサブスク型ECで成長中の「ベースフード(BASE FOOD)」。

約4億円の資金調達」もして、マーケティングにも積極的に投資していますが、顧客獲得コスト(CPA)とお客様が将来払ってくれるお金(LTV)の2つをKPIにしていると、代表の橋本 舜氏も話します。

 

現在弊社は、からだにいい、おいしい、かんたんを追及しています。

それによって顧客獲得コストがさらに下がり、ライフタイムバリューはさらに上がると考えてます。

購入方法が簡単になればCPAはさらに下がりますし、おいしい食べ方が多様にあれば継続して購入頂き、LTVは上がります。

(「BASE FOODは、完全栄養パスタ「BASE PASTA」から主食にイノベーションを起こしていく(ICC FUKUOKA 2018)」より)

 

完全食BASEFOOD

完全食 BASE FOOD(ベースフード)

 

ユニットエコノミクスの特徴は、売上や費用を1人あたりの金額に分解して、算出すること。

 

・CPA(顧客獲得単価):1人当たりの顧客獲得単価のこと。顧客獲得費用(広告費など)÷新規顧客数で出す
LTV(生涯顧客価値):“Lifetime Value”(ライフタイムバリュー)の略。1人の顧客が生涯にわたって、どれだけ自社の商品・サービスを購入するかを示した数値のこと。

 

この2つを重要な指標(KPI)としてトラッキングしたうえで、収益性が成り立つ事業モデルを組んでいくのです。

 

もしCPAやLTVを意識せずに広告を打った場合、「マーケティング投資をした金額が、売上で回収できない」といった事態が起こっても、気付きにくくなってしまいます。

 

D2Cの特性は、顧客一人ひとりと直接に取引ができること、そしてデジタルで取引履歴が記録されること。

したがって、「どの商品を買って、何円の売上が発生したか?」の購入データを顧客単位で追えるのです。

 

そのマーケティング施策は、事業計画を達成するために採算が合うのか?
CPAとLTVに分解して、算盤をはじいてみてください。

 
 
 

ポイント3:「サブスクリプション」はじめ、リピート購入の仕組みはできているか?

 

このユニットエコノミクスを成り立たせるため、強力な武器になりうるのが「サブスクリプション」、定期購入の仕組みです。

 

D2Cで安定的に売上を確保するために大事なのが、ブランドに共感して購入した顧客に、繰り返し買ってもらうこと。
LTVを高めるための仕組みづくりです。

 

「いつリピートしてもらえるか?」「同じ商品を買ってもらうか?別の商品をおすすめするか?」など、具体的な方法は商材のタイプや価格によって異なりますが、消耗品を販売するなら検討したいのが、サブスクリプション方式です。

初回購入時から定期購入を前提に買ってもらえれば、リピート率が圧倒的に高まると知られているからです。

 

たとえばメンズ化粧品で急成長、「20億円以上の資金調達」や「木村拓哉氏を起用したTVCM」などで注目を集めるバルクオムは、自社ECサイトからの定期購入を主体とした、サブスクリプション型のビジネスモデルで成長してきたそうです。
 

オンライン売上の6割を、サブスクリプション会員様に支えていただいています。
アクティブな会員数については非公開ですが、累計で20万人以上がサブスクリプションサービスに加入しています。年間の平均注文回数は、6.5回です。

(「『世界No.1メンズスキンケアブランドに』。売上2倍成長のバルクオムが見据えるグローバル戦略とは【野口社長インタビュー】」より)
 
バルクオム公式サイト
同社WEBサイトより
 

化粧品の他にも、サプリメントや食品など消耗品を扱うD2Cブランドは、サブスクリプションを組み込む場合が多いようです。

 

メインプロダクトが消耗品ではない場合も、たとえばフィットネス用のバイクやランニングマシンを販売する米国の「Peloton(ペロトン )」は、機器を購入した顧客に月額39ドル(約4,000円)などでフィットネス動画の視聴や会員同士のSNSコミュニティへの参加などができる月額サービスを展開。

ハードウェアにサブスクリプションを組み込むビジネスモデルで、1,000億円近くの年商を上げているそうです。

 

自社の商品に、サブスクリプションを組み込めないか?

D2C事業で安定的に売上を確保したいマーケターは、ぜひ考えてみてください。

 
 
 

ポイント4:“インスタ映え”が一過性のブームではないと、理解しているか?

 

“ユニットエコノミクス”や“サブスクリプション”では、「広告などにお金をかけて、新規顧客を獲得する」という考え方でしたが、成功しているD2Cブランドに多いのは、SNSを活用するなど広告以外のオーガニックな集客チャネルも持っていること。

 

なかでも女性向けのブランドでは、Instagramを徹底的に使いこみ、販促チャネルに育てている企業が多いようです。

 

たとえば「創業から3年間で2021年には月商1億円超へ」と急成長中の、“小柄女性向け”アパレルブランドのCOHINAは、フォロワー数17万人(2021年2月時点)を突破したInstagramをフル活用

自社スタッフが出演するインスタライブ配信を365日間開催して、顧客からの悩み相談に対応するなど、ユーザーとのコミュニケーションを積極的に取っています。

 

インスタライブ上で届いた意見から商品化に至った例もあり、フォントやカラーバリエーションを顧客とデザインしたサーマルTシャツは30分で完売した。
ブランドを立ち上げた頃はライブの視聴者が1人という時もあったが、現在のIGTVのアーカイヴは1本あたり1万人ほどが視聴している。

(「身長155cm以下の女性向けD2Cブランド「COHINA」が好調、インスタライブで顧客と服作り」より)

 

こうした地道な対話もあってか、「リピート率は50%とアパレル業界の平均を上回る高水準」。

NPS(=「まわりの人にも勧めたいと思うか?」を指し示すスコアのことで、顧客ロイヤルティのKPIとして活用される)も高い数値だそうです。

 

COHINA公式サイト
同社WEBサイトより
 

・自社のスタッフやなかには社長自身が、動画やオンラインイベントに出演して商品の使い方を実演したり、ブランドの理念を語りかける
・商品を使った顧客が、SNSで商品を使用した体験や感想を発信する
・顧客同士がつながれる、コミュニティを用意する

 

などSNS上で商品やブランドが広がっていく過程はさまざまですが、その背景にあるのは購買の意思決定にあたって企業発の広告よりは、「口コミ・レビューやSNS投稿など、個人の声の影響力が強まった」という10年来の地殻変動。

 

芸能人や専門家などインフルエンサーが、TwitterやYouTube、Instagramで紹介するだけで、「商品が数千件も売れる」といった現象は、その代表例です。この他にも、

 

・企業やインフルエンサーによる、オンラインの実演販売で爆売れする「ライブ・コマース
・商品開発ストーリーなど過程を見える化することが、共感や信頼を生む「プロセス・エコノミー

 

といったように、「インスタ映え」や「SNSで売れる」が一過性のブームではなく、世の中の大きな変化を反映していることを、押さえられるとよいでしょう。

 
 
 

ポイント5:店舗を出すなら、「OMO」のもと設計できるか?

 

日本のD2C企業でも増えているのが、ECサイトなどオンラインだけの販売ではなく、リアル店舗の開設です。

 

・百貨店やショッピングセンター、あるいは路面店で常設の店舗を開く
・期間限定の「ポップアップストア」を、テナントの区画を一時的に借りて出店する

 

といったように商品を手に取って買い物ができる場を用意しますが、デジタル化が進む今、ECメインで成長した企業が、なぜオフラインに乗り出すのでしょうか?

 

たとえばオーダーメイドスーツの販売で「約13.5億円の資金調達」など成長路線をたどる「FABRIC TOKYO」は、サービス開始当初はオンラインのみでの販売でした。

しかし、売上に伸び悩んだ時期があり、テストとしてポップアップショップを出したところ、客単価の上昇やECでのリピート率の拡大、顧客獲得コストの低下など想定以上の効果があったそうです。

 

リアルを介した顧客は、店舗で買わなくても、会社帰りなどで何度か来店した後に、後日ECで購買してくれることがありました。
また、その顧客からのロコミで来店が増えたり、ECのリピートが増えたり、オンラインのみでは少なかった高単価のスーツの販売数の増加があったり、さらにはCVRが向上した結果として顧客獲得コストの低減がなされたりと、事業上のプラスになる効果ばかりが目立ちました。

(「リテール・デジタルトランスフォーメーション D2C戦略が小売を変革する」三嶋憲一郎 )
 

この事例のように、店舗の開設の効果は必ずしも店舗での売上アップだけではありません。
「ブランドを知ってもらう」「店員さんと会話する」「商品を手に取って体験してもらう」など、デジタルだけでは完結しにくい顧客体験を補完する役割をオフラインの店舗に持たせているのです。

 
FABRICTOKYO公式サイト
オーダースーツはFABRIC TOKYO(ファブリックトウキョウ)
 

従来の店舗販売メインのブランドとは異なるのは、「売らないお店」すらあること。

たとえば米国のEverLaneでは、店舗に商品を並べてありますが、その場で買って商品を受け取ることはできず、欲しい顧客はECストアで決済して配送されることになっているほどです。

 

こうした従来とは異なる店舗の活用は、「OMO(Online Merges with Offline)」という潮流から捉えると、理解しやすいでしょう。
スマホなどでオンラインへの常時接続が一般的になった社会では、オンラインとオフラインの境界は曖昧になり、融合していきます。

 

D2Cは、デジタルのECストアやSNSアカウントが主役で、リアルはそれを補完する位置付け。

何がなんでもデジタル完結を目指すのではなく、かといって従来型の店舗メインのSPA(製造小売業)とも異なる、デジタルとリアルの融合した顧客体験を目指すD2Cが増えている背景です。

 


 

この記事では、「1. プロダクト・マーケット・フィット」「2. ユニットエコノミクス」「3. サブスクリプション」「4. SNS経済」「5. OMO」と、2021年現在マーケティングの世界で話題に上がりやすいという視点から、D2Cのマーケティングを解説しました。

 

D2C事業をこれから始める、あるいはマーケティングを見直すといった時の思考の切り口として、ご紹介した手法やトレンドがお役に立てればと考えております。