LINE公式アカウントで獲得した友だちにアプローチして、2ステップで新規購入につながる成功事例が出てきました。ポイントは、友だちの興味関心や属性、行動データによってメッセージを出し分けること。コスメなどD2C企業で効果が出た施策の事例や、効果が出やすいブランド・商材の特徴などを解説します。

LINE公式アカウントの友だちを、新規顧客に転換する
D2C企業でLINE公式アカウントの活用というと、既存顧客に向けてリピート購入のための活用事例が大半でした。わかりやすい例としては、新商品の発売やキャンペーン、限定セールなどの一斉配信です。
実際弊社でも、
- アップセルや定期継続のステップ配信
- 休眠顧客向けに定期コース復活のシナリオ配信※1
- お試し顧客へ定期購入の誘導※2
といった既存顧客向けの事例が主でした。
新規獲得にトライするケースもありましたが、友だち獲得後の購入までのシナリオを描けない、そのため購入につながりにくかったことが原因として考えられます。
しかし今回、LINEのメッセージを “パーソナライズ化” することで、新規顧客の獲得にも活用できるとわかってきました。
コスメ系の商材を中心に事例が出てきていて、獲得件数としては、友だち10,000人のアカウントの場合、「月100件」ほど。友だち数が多いアカウントでは、月500件といった事例が出てきました。これからさらに伸びしろが大きくなる手応えをつかんでいます。
※1 LINEのID連携で定期継続率1.5倍も!D2Cで効果が出たCRM施策3選
※2 お試し客へLINEのステップ配信で、定期引き上げ率を高める方法
メッセージ配信の、“パーソナライズ”とは?
LINE公式アカウントから新規獲得をするために重要なのが、メッセージを出し分けること。セグメントの仕方は様々ですが、友だちの興味関心や年齢・性別など属性、あるいはサイト閲覧履歴など行動データなどによってパーソナライズが可能です。
具体的な施策の例を説明します。
施策1:悩みや興味に応じて商品をレコメンド
1つ目は、悩みごとにユーザーをセグメントして商品を紹介する方法です。友だち登録をした直後はユーザーの意欲が最も高く、メッセージを見てもらえる確率や反応率も高い傾向にあります。そのため、ウェルカムメッセージ(あいさつメッセージ)を活用して「アンケート」や「診断コンテンツ」を配信。今の悩みや興味があることを答えてもらい、その内容に応じて商品をおすすめします。

診断コンテンツの具体例
たとえばコスメの場合、「シワが増えた」と答えた人には、シワ改善のオールインワンや、「毛穴が気になる」と答えた人には洗顔商材をレコメンド。それ以降のメッセージも、アンケートで取得したデータにもとづいて配信します。
このように悩みごとにセグメントして運用することで、「一律の宣伝」ではなく、“私に合ったオススメ” と感じてもらいやすくなり、好意的な印象につながります。すべてのユーザーに同じ商品を配信する場合と比べて、ブロック率が下がる傾向にあり、CVRも1.4倍ほどにまで高まる事例が出てきました。
施策2:閲覧ページなど、行動データによって出しわけ
続いて、ユーザーの閲覧したページごとにメッセージを出し分けることでも効果が出るとわかってきました。
たとえば、商品Aに興味を持っているユーザーには、商品Bではなく最初からAをおすすめした方が購入につながることはイメージしやすいかと思います。そこで、自社WEBサイトとLINE公式アカウントのデータを連携できるツールを導入して、「商品詳細ページを閲覧したユーザーには、その商品をおすすめするメッセージを1時間後に配信する」というシナリオを組みました。
この配信は、サイトを訪れたユーザーの閲覧情報に合わせて広告(バナー) を自動生成する「動的リマーケティング広告」と同様の仕組みです。
ITP対応が始まる前は、リターゲティング広告の配信をしている企業も多くいましたが、現在では効率が落ちてきた傾向にあります。
そこでLINE活用に目を向けたところ、LINEからメッセージを送った方が、バナーで追いかけるより、CTR・CVRともに圧倒的に高い結果になりました。リタゲのCPAと比較すると、5分の1程度で獲得できるようになっています。
CTR | CVR(LP遷移後) | CPA | |
---|---|---|---|
WEB広告(リタゲ配信) | 0.5-5% | 5-10% | 5,000円 |
LINE公式アカウント | 10-20% | 0.1-5% | 1,000円 |
また連携したデータをもとに、カートから離脱したユーザーには「カゴ落ちメール」と同じ役割のメッセージを送るといった方法でも効果が出ています。
施策3:購入意欲によって、「オファー推し」や「ベネフィット訴求」など
また、施策2で紹介した方法は、送るタイミングによって訴求を変更することで、よりパーソナライズの精度を高めることが可能です。
たとえば、商品Aの詳細ページを閲覧したユーザーの場合、「1時間前」と「1週間前」では、前者の方が購入意欲は圧倒的に高いといえます。そこで以下のようにカスタマイズしていくのをおすすめします。
ページを閲覧した1時間後は、「初回半額」「◯◯限定」といったオファー推しの訴求を配信。続いて1週間後には、商品の機能やベネフィットを配信して、購入意欲を高めることを目指します。
それでも購入しなかったユーザーには、商品AだけではなくBやCなど複数の商品を組み合わせて使う訴求をすることで、購入メリットを様々な角度から伝えていきます。
このように、閲覧したタイミングによってもユーザーの購入意欲は変わるため、その時々に合ったメッセージを送ることで、徐々にニーズを高めていく売り込みが可能になってきました。
コスメやアパレルなど、多品種かつ“お悩み解決”ではない商品に合う
ただ、これらの手法がD2Cの全ての企業やブランドに当てはまるか?というとそうではありません。ご支援をするなかで、効果が出やすい商材、逆におすすめしにくい商材の特徴がわかってきたのでまとめました。
特徴1:SKUが多いブランド
一番わかりやすい特徴は、SKUが多いこと。
お客様の悩み・関心に応じてメッセージを出し分けるには、複数の商品が必要になります。一方、健康食品でよくみられる「単一商品がメインのブランド」や、複数商品を扱っていても「クロスセルしにくい商材」の場合、アプローチの方向性が限られるため、効果を発揮しづらくなります。
逆に、コスメやアパレル、多くのSKUを持つ商品はLINEでのパーソナライズ配信が有効です。そのほか旅行や求人サイトなども訴求内容の選択肢が多く、同様の手法が通用するといえます。
特徴2:欲求や憧れを喚起する商品
もう1つの特徴は、緊急性が低い “お悩み解決” 型の商品以外でも売れやすいことです。
LINEでは『友だち登録』という浅いハードルから入って、定期的に情報を受け取るので徐々に商品理解を深めて購入意欲を喚起するといったことができます。
また、商材カテゴリーや素材、成分などの認知度が高くなかったとしても、1回の広告で目を引く必要がある場合と比べると、LINEでの定期接触は時間をかけて理解してもらいやすい方法です。このように、購入意欲が顕在化するまでに時間がかかる商品でも、LINEを活用すると売れるとわかってきました。

従来の広告で売れやすい商品と、ナーチャリングが有効な商品
現時点では、短期的なCPAだけで見ると広告からダイレクトにCVを獲得したほうが費用対効果が良い場合が多くなります。
一方、SKUが多い・ニーズ喚起にリードタイムがかかるといった特徴に当てはまるブランドや商品であれば、LINE公式アカウントからのCV獲得にチャレンジする価値はあると考えています。特にWEB広告のCPAが高騰しているといった企業様は、新たな施策として効果が期待できるのではないでしょうか。
「LINEからの友だち獲得」については、次回の記事でも詳しく解説します!