縦型動画広告とは、縦画面のままスマートフォンで再生できる動画広告です。視聴率が上がりやすい点がメリットであり、主な配信先にTikTokやInstagramなどがあります。縦型動画広告の概要や市場規模、作成時のポイントを解説します。
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縦型動画広告とは
はじめに、縦型動画広告の概要や市場規模、注目されている背景を解説します。
縦型動画広告の概要
縦型動画広告とは、スマートフォンの向きを変えずに縦画面で再生できる動画広告です。9:16の比率で作成され、スマートフォンの縦画面にフルスクリーンで表示されます。
縦型動画広告の市場規模
サイバーエージェントとデジタルインファクトによる共同調査によると、2023年における縦型動画広告の市場規模は526億円であり、前年比で+56.3%の拡大となりました。2027年までには、以下のとおり順調な拡大が予測されています。
参照:サイバーエージェント「サイバーエージェント、2023年国内動画広告の市場調査を発表」
縦型動画広告が注目される背景
市場規模が拡大していることからわかるとおり、近年は縦型動画広告に対する注目度が高まっています。
その理由として、SNSや動画配信サイトにおいて、縦型ショート動画の視聴時間が急速に増えていることが挙げられます。スマートフォンの普及に加え、通信環境がさらに整い、外出先や通勤中など様々な環境で動画を見るユーザーが増えています。
マクロミルの「縦型動画メディア 利用実態調査」によると、週に1回以上縦型動画を見る人は58.8%です。横型動画が79.6%のため、全体利用率は若干劣るものの、移動中や休憩時間など合間での視聴は横型動画が10%ほどなのに対してInstagramリールやTikTokでは24%ほどで視聴場面は増えているといえます。
こうしたユーザーのニーズや環境の変化に応じて、縦型動画広告に対する需要も拡大しているといえるでしょう。また、プラットフォーム側も縦型動画視聴者増加の波に乗ろうと、機能の改善や縦型動画を制作しやすいフォーマットを提供するなど活発になっています。
その他クリエイティブ制作でAI活用が進むなど広告主の負荷が軽減されることなどもあり、市場規模は今後も急速に拡大すると推測できます。
出典:「縦型動画メディア 利用実態調査」マクロミル調べ
「第5回スマートフォンの動画視聴実態調査」
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縦型動画広告のメリット
縦型動画広告で期待できる3つのメリットを解説します。
視聴率が上がる
スマートフォンは基本的に縦に持って利用するため、横型の動画の場合には視聴するために横にする手間が発生します。一方で縦型動画はデバイスを横向きにする必要がないため、見始める際にストレスを感じにくく、広告の場合でも同様の効果があるでしょう。
また、縦型動画広告の多くは数秒〜数十秒程度と短いため、途中で離脱されるリスクも低いでしょう。
ながら見にならない
ながら見されない点も縦型動画広告ならではのメリットです。ながら見されない理由は2つあります。
1つ目の理由は、没入感の高さです。縦型動画は、タップすると基本的に全画面表示になります。動画がフルスクリーンで表示されるため、動画に集中してもらいやすいです。
2つ目の理由は、常に操作が必要という点です。たとえば一部のSNSでは、次の動画を見るためにスワイプする必要があります。常に操作を必要とするため、ながら見をしにくくなり、動画広告の内容に集中してもらうことが可能です。
ながら視聴されないことで、動画広告で紹介している商品・サービスの魅力が目と耳の両方から入ってくるため、購入につながりやすくなるでしょう。
広告配信で有利になる場合がある
縦型動画広告の活用により、活用しない場合と比べて広告配信で有利になるケースがあります。
たとえばInstagramなどのSNSでは、縦型動画広告しか流せない配信面があるため、静止画と縦型動画の両方を配信することで、広告の露出を増やせます。また、弊社の実績では「静止画+動画」の方が「静止画のみ」の配信よりも高い効果を得られた事例があり、静止画だけでなく縦型動画を同時に配信することで、CV獲得がしやすくなる可能性があると考えています。
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縦型動画広告の主な配信先
縦型動画広告の主な配信先は4種類あります。それぞれの概要と特徴は以下のとおりです。
配信先 | 特徴 |
---|---|
YouTube | ・動画広告の長さは最大60秒 ・月間ユーザー数7,120 万人超 ・幅広いターゲット層にアプローチ可能 ・平均視聴回数の増加が期待できる ・機械学習の精度が高い |
TikTok | ・動画広告の長さは最大60秒 ・若年層へのアプローチに向いている(近年は35歳以上のユーザーも増えている) ・Pangleにも動画広告を配信できる ※Pangleは、モバイルゲームやアプリへの広告配信が可能なプラットフォーム ・匿名ユーザーが多く、ターゲティングや機械学習の精度は今後に期待 |
・動画広告の長さは最大90秒 ・月間ユーザー数約3,300万人(2019年時点) ・機械学習の精度が高い ・広告の審査基準が厳しい | |
LINE VOOM | ・動画広告の長さは最大60秒 ・月間ユーザー数 約6,800万人 |
以下では、各配信先の特徴をくわしく解説します。
YouTube
1つ目はYouTubeです。YouTubeでは、縦型動画を最大60秒にわたって視聴・公開できる「YouTubeショート」というサービスを使って、広告を配信できます。
月間ユーザー数(18歳以上)は7,120 万人超です(2023年5月時点)。そのうち、45 歳から64 歳のユーザーが2,680 万人以上を占めているため、幅広いターゲット層へのアプローチに適しています。また、2023 年 7 月の調査時点において、1 日あたりYouTubeショートの平均視聴回数は前年比 110% 以上の増加と大きく成長しており、今後の成長が期待できる媒体です。
メリットとして、Google広告の機械学習の精度が高いため、コンバージョンなどの成果が高くなりやすい点が挙げられます。ただし、AIによる最適化の機能を最大限活用するには、アカウント設計の最適化や運用のノウハウを必要とする点には注意が必要です。
出典:Google「YouTube 視聴はより多様に、YouTube の最新動向と利用実態」
TikTok
2つ目はTikTokです。TikTokでは、最大60秒の動画広告を投稿できます(一般動画は最長10分)。
ダンスや歌、美容など幅広いジャンルの動画が投稿されており、国内月間アクティブユーザー数(MAU)は直近2年間で2倍まで増加し、現在は2,800万人※1となっています。最近は35歳以上のユーザー比率が高まっているものの、依然としてメインユーザー層は10〜20代です。そのため、特に若者層向けのマーケティングに適していると言えます。
また、TikTok本体だけでなく、MAU5,100万人を有するプラットフォーム「Pangle」にも動画広告を配信できる点も魅力です。
ただし、TikTokユーザーの多くは匿名であるため、年齢や性別といったデモグラフィックデータに基づくターゲティングや機械学習の精度はあまり高くない点に注意が必要です。
※1 出典:https://dentsu-ho.com/articles/8821よりAppAnnie調べ
3つ目はInstagramです。Instagramでは、「リール」や「ストーリーズ」という機能を活用することで、最大90秒の縦型動画広告を配信可能です。
国内では2019年の時点で既に約3,300万人というMAUであったため、2024年現在ではさらに大幅に増加していると考えられます。特にリール機能に関しては、ユーザーがInstagramに費やす時間のうち、20%を占めているというデータもあるほど成長を見せています。
Instagramならではの強みとして、精度の高いAIによる広告配信が挙げられます。機械学習の精度が高いため、ユーザーに対してコンバージョンしやすいタイミングで縦型動画広告が配信されます。
また、審査基準が厳しく、ユーザーに不快感を与えるような過激な広告が規制されている点も特徴的です。
LINE VOOM
4つ目はLINE VOOMです。LINE VOOMとは、LINEが提供している動画共有サービスです。一般ユーザーが投稿したショート動画の間に、最大60秒の縦型動画広告を配信できます。
2019年8月時点で月間ユーザー数(月1回以上LINE VOOMを訪問した人数)は6,800万人以上です。また、そのうち4,900万人以上は、月に1回以上LINE VOOM上の広告に接触しているというデータもあるため、リーチ数の多さに期待できます。
ただし、毎日LINE VOOMを見る人は1.6%と少ないため、少ないアプローチ頻度でコンバージョンにつなげるには工夫が求められます。
出典:LINEヤフー for Business「LINE広告配信面」
Lステップ公式ブログ「LINE公式アカウント登録者1,000人を対象にした利用実態調査2023」
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縦型動画広告を作る際のポイント
弊社が長年支援してきた経験をもとに、効果の高い縦型動画広告を作成するポイントを4点お伝えします。
ユーザー目線の動画にする
1つ目のポイントは、ユーザー目線で見たときに広告感の少ない縦型動画広告を作成することです。
企業目線で広告を作成すると、「広告か…スキップしよう」と視聴されないことが多くなってしまいます。たとえば、「△△人限定!」といった広告色の強い文言は冒頭でないほうが受け入れてもらいやすくなります。一方でユーザー目線の動画にすると、他の動画と比べて広告感が薄くなるため、動画がスキップされてしまう可能性が少なくなります。
具体的な動画の作り方には、「悩み解決型(PASONA)」と「アテンション型(AIDCA)」の2パターンがあります。どちらのパターンで制作する場合でも、SNSユーザーやインフルエンサーが投稿しているような、違和感のない表現を用いることが重要です。
各パターンの具体的な作り方については、以下の記事で詳しく解説しています。
冒頭3秒で注目を集める
2つ目のポイントは、冒頭の3秒で注目を集めることです。
TikTokをはじめとしたSNSでは、広告と認識した動画をすぐにスキップする層が少なくありません。そのため、最初の3秒間で広告っぽさを出さずに、「続きを見てみたい」と思われるように作ることが重要です。
その際に意識した方がよいのが、「自分ごと化」です。この動画は自分に関係があることを言っているかも、という期待感があることによって、続きを見てもらえる可能性が高まります。
スキンケア商品を例にすると、「肌荒れに悩んでいる人に教えたい対策3選!」といった呼びかけを行うことで、見込み客に対して「自分ごと」として広告の内容を認識してもらえます。動画広告に集中してもらうことで、商品の良さが伝わったユーザーからのCVを期待できるでしょう。
動画の終わりに「今買う理由」を明示する
3つ目のポイントは、動画の最後に「今買うべき理由」をはっきり伝えることです。
前述のとおり、縦型動画広告の最終的な目的は「CVの獲得」です。ですが、動画内で「今買うべき理由」を伝えないと、CVの獲得は難しいでしょう。
理由は、動画を見終わってから時間が経過するほど、商品の購買意欲は低下していくためです。「後で購入すればいいや」と思われないように、動画視聴後すぐに購入してもらうような働きかけが重要です。
具体的には、「この動画を見た人はラッキー」などというフレーズと共に、割引価格を限定的に提示すると、CVRが高まりやすくなります。ただし景表法に抵触しないようにチェックが必要です。
既存の横型動画をそのまま転用しない
4つ目のポイントは、既存の横型動画をそのまま縦型動画広告として転用しないことです。
既存の横型動画を縦型動画広告にそのまま出稿すると、動画自体のサイズは小さくなり、上下の余ったスペースは黒く表示されてしまうため、縦型動画の強みである没入感や高い視認性が失われます。視聴率やエンゲージメント率などが悪化するおそれがあるため、既存の横型動画をベースに用いる場合は縦型動画広告として最適な形に編集してから活用することが重要です。
実際にTikTok For Businessの調査でも、横型動画をそのまま活用する場合と比べて、縦型動画として編集したものの方が、6秒視聴率やエンゲージメント率の指標が圧倒的に高い結果となっています。
出典:TikTok for Business「「TikTok広告クリエイティブTips」公開 〜横型動画を縦型に編集することで、効果を最大化〜」より
ちなみに、編集パターンはさまざま考えられますが、「縦型に切り出す方法」が最も効果的です。前述した調査では、「①縦型に切り出し」、「②横型の段積み(2段または3段)」、「③横型(別素材を上下に配置)」という3パターンが検証されています。
出典:「TikTok広告クリエイティブTips」公開 〜横型動画を縦型に編集することで、効果を最大化〜より
横型動画をそのまま使用した場合と比較して、②や③の6秒視聴率は約150〜200%、エンゲージメント率は約370〜430%の水準でした。一方で①の6秒視聴率は391%、エンゲージメント率は923%という高い水準であり、②や③と比較して効果の高い編集パターンであることがわかるでしょう。
詳しい調査結果やデータは、以下の記事で解説されています。
参考記事:TikTok for Business「「TikTok広告クリエイティブTips」公開 〜横型動画を縦型に編集することで、効果を最大化〜」
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縦型動画広告の成功事例
最後に、縦型動画広告を導入したことで、獲得件数やCPAが大幅に改善した事例を紹介します。
ある美容系の商材を取り扱っていた企業では、記事LPへの誘導に、メインで静止画のバナー画像を配信していました。しかし、CPAの高騰やクリック率の低下が起きていたため、静止画バナーのみの運用から、縦型動画広告の配信をメインにした上で静止画バナーとの併用にシフトしました。その結果、獲得件数は3.4倍増加、CPAはおよそ20%低下しました。
この結果が出た要因には、クリエイティブと配信面の2つの観点があると考えています。
クリエイティブの観点では、動画にすることで「商品を使用する前後の変化」や「商品の使用方法」がわかりやすくなります。
配信面の観点では、前述のように縦型動画しか流せない配信面があるので、静止画のみではアプローチできなかったユーザーへ広告が届いた影響も大きいでしょう。
他にも、食品や化粧品、サプリメントなど、さまざまな商材で縦型動画広告に出稿したことろ、CPAやCV件数改善が見られました。
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縦型動画広告のまとめ
縦型動画広告にすることで、視聴率が上がりやすくなったり、広告配信で有利になるメリットがあります。さらにスマートフォンの普及や通信環境の整備に伴い、縦型動画広告の市場は急成長を遂げています。
顧客の新規獲得の新たな手段として、ぜひ縦型動画広告の活用を検討してみてはいかがでしょうか。
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