年商23億円の化粧品会社をモデルにしたケーススタディの5回にわたる連載、今回は第3回目です。(前回は、第2回「「RFM分析」の使い方を間違えると」を参照)
成長期の通販会社の現場で、実際に起こりがちな事例を想定。
売上減少に陥ったキララ商品が年商30億円も見える成長路線に戻るまでの過程を、ストーリー形式でお伝えします。
目次
「常連客」「普通客」「休眠客」「離脱客」「新規客」の5パターンに分類
森崎はスクリーンに、クライアントへのプレゼン用資料を映して、説明を再開する。
「1年前にスタバで見せた図は覚えているか?<常連客><普通客><休眠客><離脱客><新規客>の5つに顧客を分類するんだ。」
<新規客>から始まった顧客は、その後、積極的な購入が見られた場合、<普通客>→<常連客>へと育成される。
また、積極的な購入が見られなくなった場合、<休眠客>→<離脱客>へと進んでいく流れが、レーザーポインタで強調される。
「徳田がこの1年間取り組んでいたのは、この図でいうと<普通客>や<常連客>からの売上をいかに最大化するか?ということだと思う。
たしかにこの施策も重要なんだが、この普通客・常連客は全顧客リストのなかで、さっき何%あったか?」
顧客分類別の顧客数グラフを徳田が見返したところ、常連客が8%、普通客が10%と、合わせて18%しかいなかった。
この18%だけに頼って売上を伸ばそうとしてきた、この1年間の自分を振り返ると、その視野の狭さが少し恥ずかしくなった。
新規客→普通客や普通客→常連客など、一貫したシナリオでCRMを設計
「たとえば、1回だけトライアル製品を買っただけの<新規客>は、まだ会社や商品のことがわからない不安な状態だろう。」
<普通客>へと引き上げるには、商品への同梱物の活用法が重要になる。
作り手の写真を登場させたり、製品への想いを訴えたり、などエモーショナルな側面から訴求する会社もあれば、2回目購入の割引チケットを入れて、お得感を出すという手法もある。
トライアル使用期間終了後には、DMを送ってお薦め商品を解説する、というパターンが化粧品ではよく見られるし、一方健康食品ではアウトバウンドが盛んに行われている。
一方、<休眠客>を<普通客>へと目覚めさせるシナリオとしては、呼び起こしのアウトバウンドをかける、圧着ハガキを使ってDMを低コストで頻繁に送り、ニーズが復活したときを狙う、という手法もとられている。
普通客を常連客に引き上げるためには、単純にカタログを送るだけではなく、クロスセルのために他商品をお薦めするのも有効だ。
また、常連客を維持するためには、豪華な見栄えのDMや手書きのお礼状を送るなどして、特別感を持たせるようにする。
「とはいっても、これらは個別の施策としてはいろんな人が言ってるし、おまえもそれぞれ一度くらいは聞いたことがあるだろう。」
さまざまな通販会社でこれらの施策は行われているがもったいないのはバラバラに行われていることだと、少し険しい表情を浮かべながら森崎は言った。
半年ごとに、各セグメントごとの顧客数・売上などを定点観測
「さっき見せたように、半年間で顧客セグメントごとの顧客数・売上などを比較するんだ。
「離脱客は何人減っているか?」「常連客からの売上がどれくらい増えているか?」など顧客の動きを追っていくことによって、DMなど個別のキャンペーンだけでなく、リピート促進施策のトータルの効果を検証することができる。」
RFM分析のように、ある一時点で顧客を区切ってセグメンテーションするのではなく、一定期間はセグメントを固定して、「定点観測」で動きを追っていくのが、この戦略的顧客セグメントの肝になる。
「抽象的な表現だが」と前置きしながら、森崎は話した。
「単にその時々で点で区切って顧客を見るのではなく、お客様の動きを追いかけながら育成シナリオを描き、それをデータベースに基づいて予測・検証すること」
これが、戦略的顧客セグメントのポイントだという。(続く)
※本ケーススタディは、スタービューデータ株式会社 室屋彰氏に企画協力をいただいて、株式会社ファインドスターで制作致しました。