4Pとは、Product(製品)Price(価格)Place(流通)Promotion(販売促進)の4つからなるマーケティング戦略で使用するフレームワークのことです。意味や考え方、4Cとの違いまで詳しく解説します。
4P分析以外にも、D2C事業を運営する上ではKPIの理解が重要です。
D2C事業の現場で使われているKPIを新任担当者でも分かるようにまとめました。
⇒解説資料はこちら
マーケティングの4Pとは?
4Pとは、顧客に購入してもらうためのマーケティング戦略を4つの視点から考えるフレームワークのことで、4P分析やマーケティング・ミックスとも呼ばれています。
Product(製品) | どのような商品・サービスを提供するか ブランド名やパッケージ、アフターサービスも検討する |
---|---|
Price(価格) | 商品・サービスの販売価格をいくらにするか コストや売上目標などに応じて決める |
Place(流通) | どのように届けるか 在庫管理や配送方法、販売地域の決定なども含む |
Promotion(プロモーション) | どのように知ってもらうか メディアや訴求方法を決める |
マーケティング・ミックスとは?
マーケティング・ミックスとは、マーケティングの目的を達成するために考え方を組み合わせることを指し、基本的に4Pの4つの要素でできています。
ただ、あくまで、目的のため複数の考え方を組み合わせることを「マーケティング・ミックス」と言うので、4つの要素以外の考え方を取り入れることは問題ありません。実際にマーケティング・ミックスの考え方がまとまった当初は、14の要素でできていました。
近年では、1990年代にアメリカの経済学者が企業目線の4Pではなく、顧客目線でマーケティングを考えるべきとして新しいフレームワーク「4C」を提唱しました。そのため4Cも、4Pと同様に「マーケティング・ミックス」の構成要素の1つといえます。4Cについては記事の最後で詳しく説明します。
4P分析以外にも、D2C事業を運営する上ではKPIの理解が重要です。
D2C事業の現場で使われているKPIを新任担当者でも分かるようにまとめました。
⇒解説資料はこちら
4P分析のやり方
では4Pの各要素について、具体的な考え方を見ていきましょう。
Product(製品)
「Product(製品)」とは、
- 製品・サービス
- ブランドイメージ・ネーミング
- パッケージデザイン
などのことです。
Productとは、製品・サービスそのものだけではありません。実際はブランド名、パッケージデザイン、アフターサービスまですべてを含めて商品を手に取るかや購入するかどうかを消費者は考えるため、これらもProductに含まれます。
その上で自社製品はコンセプトに沿ったものか、ブランドイメージ・ネーミングは記憶してもらいやすいか、ロゴと相性が合うか、を検討していきます。最初に消費者が目にするパッケージデザインは、コンセプトが明確に反映されているか、好感が持てるか、便利な梱包であるかなどを考えていきましょう。
Price(価格)
「Price(価格)」とは製品・サービスの販売価格です。
価格を決めるには、以下の4つの方法があります。
1. 生産コストに加えて一定の利益が出るよう価格設定をする
2. 目標とするROI(Return On Investment)※1が達成できるように価格設定する
3. 顧客が買ってもいいと考える「売れる価格帯」を参考に価格設定する
4. 競合の価格に基づいて価格設定する
※1 投資収益率もしくは投資利益率を示します
上記のいずれかの方法で値付けをする際は、顧客の心理的な印象も考慮するとよいでしょう。
たとえば、日用品であれば、1,000円のところを998円にしてお得感を出したり、高級品ならあえて本来の値段よりも高めに設定することでプレミア感を演出できます。
価格は競合他社との差別化にもつながり、製品・サービスの購買を左右する重要な要素ですが、変更が難しいため慎重に決定する必要があります。
Promotion(販売促進)
「Promotion(販売促進)」は大きく、2種類に分けられます。
- 「メディア」戦略
- 「広告表現」戦略
メディア戦略では、「どの媒体(メディア)でターゲットに届けるか」を考えます。
具体的には
- テレビCMや新聞をはじめとしたマスメディア
- インターネットでのニュースリリースやWEB広告
- チラシ・DMの配布
- SNSのアカウント運用やインフルエンサー施策
- 店頭のポップや陳列の方法
- イベントや店頭でのコミュニケーション
などがあります。
これらの中から適切な形で知ってもらえるメディアは何かを検討していきます。
広告表現戦略では、「商品コンセプトが消費者に刺さるようなメッセージ」を設計します。
まずは、その商品ならではの特性を端的に伝えて興味を引くことが重要です。次に実際に届く場面からターゲットの悩みや大事にしていることを想定します。最後に、ターゲットに刺さるメッセージは何かを考え、視覚や聴覚の体験に落とし込んでいきます。
各メディアについて知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
<参考>
インフォマーシャルとは?費用と特徴・コマーシャルとの違い
紙媒体ってまだ効果あるの?メリットや種類・紙広告の活用法
Instagramのインフルエンサー活用で失敗しない!D2C企業の成功事例と注意点
Place(流通)
「Place(流通)」では製品・サービスを消費者までどのように届けるかを考えます。
主に以下の3つの役割にわかれます。
①販売‥店舗やWebサイトなど、売る場所
②コミュニケーション‥テレビやメール、電話など顧客へ接触したり、顧客がこちらに相談をするための伝達手段
③物流‥商品の輸送や保管、在庫管理など、商品が届くまでの経路
商品が売れるまでには、店舗の手配やWebサイトの整備、商品の配送、顧客とのコミュニケーションチャネルの整備など多くのオペレーションが発生します。これらを、専門性が高い流通業者に担ってもらうことで効率的に販売することができます。
最終的に重要になるのは「販売」に関わる部分です。ターゲットが購入しやすい場所はどこなのかを見極めることが販売拡大の鍵になります。
ここからは、4Pをさらに効果的に使いこなすために知っておきたい、マーケティング戦略全体の流れを説明します。
4P分析以外にも、D2C事業を運営する上ではKPIの理解が重要です。
D2C事業の現場で使われているKPIを新任担当者でも分かるようにまとめました。
⇒解説資料はこちら
マーケティング戦略全体の流れと4Pの役割
効果的に4Pを使いこなすためにマーケティング戦略の流れと、その中で4Pがどのような役割を担うのかを確認しておきましょう。
マーケティングは大きく3つにわけられます。
- 環境の分析
- 戦略の立案
- 施策の立案
これらを具体的なフレームワークに落とし込むと、以下のような流れになります。
それぞれどのようなことを行うのか説明します。
1)マーケティング環境分析
マーケティングを行う環境を内部・外部の両方から分析し、自社が強みを活かせる市場(機会)はどこにあるのかを見つける。
2)セグメンテーション
適切な施策を打つために、1)で見つけた自社が強みを活かせる市場を、年齢や性別、住んでいる国、個人の価値観などにもとづいてさらに小さなグループにわける。
3)ターゲティング
細分化されたグループの中で、自社の強みを活かすことができるグループを定める。
4)ポジショニング
ターゲティングで狙うと決めた市場にすでにいる競合とどのように差別化するのか、価格・品質の2軸で分析して自社の狙うべき立ち位置を決定する。
5)4P(マーケティング・ミックス)
4Pのフレームワークを用いて具体的に「どのように」ターゲットにアプローチするのかを決める。
6)マーケティング戦略の実行・評価
4Pで決めた施策を実行。その結果を振り返り、場合によってはマーケティング戦略の再考を行う。
4P分析以外にも、D2C事業を運営する上ではKPIの理解が重要です。
D2C事業の現場で使われているKPIを新任担当者でも分かるようにまとめました。
⇒解説資料はこちら
4P分析を効果的に行うためのポイント
4P分析は商品を『どのように』売るかを考えるためのものです。そのため、4P分析を行う前に 『誰に』『何を』売るのかを明確にする必要があります。
これらを明確にするために、重要なポイントを2つ解説します。
1. 顧客理解を深める
2. 差別化ポイントを見極める
1. 顧客理解を深める
まずは、前述したマーケティング環境分析を使って「自社が強みを活かせる市場はどこか」を洗い出します。
次に、「サービス・商品を届けたいユーザー像」(通称:ペルソナ) に落とし込み、「『誰に』売るのかを」に明確にしていきます。ペルソナを作成する際は、実在している人物のように、性別、年齢、居住地域、職業、家族構成、趣味趣向、などの詳細な情報を設定します。
ペルソナを設定することで、
- 顧客はどのような問題を抱えていて
- どんな商品を欲しているのか
- その商品はどのような特徴を持っているのか
が見えてくるようになり、次に検討すべき『何を』が考えやすくなります。
2. 差別化ポイントを見極める
『誰に』が定義できたら、自社商品の差別化ポイントを見つけていきましょう。ここでは『何を』売るのか、商品の特徴を定めていきます。
顧客は、自社の商品だけではなく、競合商品と比較して良し悪しを判断します。その際、顧客が重要視しているのは、「商品を買うことによって、自分が抱えている悩みや、こうなりたいという欲求を叶えることができるのか」です。
つまり、顧客の欲求に対して「自社の商品なら、競合商品よりこのような点が勝っているので、あなたの欲求を満たせます」ということを言えるようにする必要があります。
差別化ポイントを設定して、自社が売る商品の特徴を明確にすることで、「『どのように』顧客に購入してもらうか」を考えやすくなります。
最後に<実践編>として、具体的な商品を挙げて4Pの考え方をご紹介します。
4Pの考え方<実践編>
実際の考え方を、自社がPCを作る企業と仮定して説明してみます。「誰に」と「何を」は以下のように設定しました。
「誰に」(ペルソナ)
春山翔太
32歳
都内在住の独身男性。
代々木のデザイン会社にグラフィックデザイナーとして勤務。
1人暮らし用のマンションに住んでおり、部屋をモノトーン基調のインテリアでまとめている。
趣味は最新の家電製品探し。
友人とのやり取りではLINE、Instagramを使用することが多い。
「何を」(自社商品の差別化ポイント)
統一感のあるインテリアに馴染む、デザイン性の高いPC。
上記の「誰に」「何を」をもとに、「どのように」に当たる4P分析を行うと以下のようになりました。
Product | 世界最薄 シンプルでシックなデザイン 高品質 万全のサポート体制 |
---|---|
Price | 原価10万円 相場より高めの15万円 |
Promotion | 「先進的」「ハイセンス」ブランドイメージを発信 マスメディアや大規模リリースイベントの実施 SNSでもブランドイメージ広告を配信 |
Place | ブランドイメージを守るため、自社ECと直営店のみの販売で売り場を限定 |
他社よりも高品質かつデザイン性の高い商品であることを売りとしているため、原価・定価ともにあえて相場よりも高めに設定。
プロモーション内容は、商品イメージと一致した質の高いコンテンツの発信や、注目度が高いメディアへの露出や大規模イベントを中心に行いブランド価値を高めていくことにしました。
流通先はサポートが充実した自社ECと、実物を確認できる直営店舗のみの販売とし、ブランドイメージを損なわない購買体験を作り出していきます。
重要な点は、どのような人がその商品を使っているのか、または欲しているかを、イメージできることです。細かすぎるペルソナ設定に囚われて、チャンスを狭めないように注意しましょう。
このように「誰に」と「何を」を明確にすることによって、「どのように」にあたる4P分析を効果的に行うことができます。
ここまで4Pを深掘りして説明してきましたが、プロダクトアウトの考え方であるため、”4Pは古い” という声もあります。 そこで最近は、顧客目線の考え方「4C」も取り入れるケースが増えてきました。次の章で詳しくお伝えします。
4P分析以外にも、D2C事業を運営する上ではKPIの理解が重要です。
D2C事業の現場で使われているKPIを新任担当者でも分かるようにまとめました。
⇒解説資料はこちら
4Cとは?4Pとの違い
売り手の視点に立つ4Pに対して、4Cとは買い手側の視点で考えるフレームワークのことです。Productであれば、「どのような商品を売るか」に対して、4Cの場合「顧客にとってどのような価値があるか」と考えます。
4Pと4Cは以下のように分析項目が対になっています。
両方の視点から製品・サービスの価値やメリットを捉えることで、より的確な施策を立案することができるため、4C分析は、4P分析と併せて活用することが望ましいです。
4つのCの考え方
4Cの各要素について、具体的にご紹介します。
顧客価値 -Customer Value-
顧客価値とは、製品・サービスに対して顧客が見出す価値を示します。品質や性能、デザインだけでなく、ブランドイメージや使いやすさなどあらゆる要素が含まれます。
費用 -Cost-
製品・サービスを得るために顧客が支払える費用、購入するまでの手間や利用するための移動時間も含めます。顧客がどれだけのコストをかけて良いと考えているのかは、適正な価格設定に欠かせない要素といえるでしょう。
利便性 -Convenience-
ここでの「利便性」とは、製品・サービスそのものの使いやすさではなく、入手・購入のしやすさを示します。例えば、販売店舗は誰でもアクセスしやすい場所にあるのか、Webサイトは購入までスムーズに行えるようになっているのか、あるいは様々な決済方法が用意されているのかなど、製品・サービスの購入が顧客にとって容易であるかどうかを検討しましょう。
コミュニケーション -Communication-
オフラインかオンラインかを問わず、顧客とのコミュニケーションすべてを示します。イベントを開催したりSNSで情報発信や交流を行ったりと、コミュニケーションの方法はさまざまです。そしてどのような方法を取るかによって、顧客からの印象や親しみやすさ、関係の深さなどは異なります。顧客目線から望ましい手法を検討し、円滑なコミュニケーションの実現を目指しましょう。
4Pは売り手側のフレームワークですが、対となる買い手側のフレームワークである4Cも併せて活用することで、的確な施策が打ち出しやすくなります。ここで解説した内容が、マーケティング戦略立案の御役に立てれば幸いです。
4P分析以外にも、D2C事業を運営する上ではKPIの理解が重要です。
D2C事業の現場で使われているKPIを新任担当者でも分かるようにまとめました。
⇒解説資料はこちら