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「プロスペクト理論」など、心理学・行動経済学からマーケティング事例を解剖すると

「広告のオファーを変更したら、引き上げ率がアップした」「定期顧客への特典をサプライズで贈ったら、継続率が改善した」
通販におけるさまざまな改善事例を、このブログでは紹介してきました。

これらの改善事例を、心理学や行動経済学のフィルタを通して再び洞察してみると、どのような原理が浮かび上がるでしょうか?
「一貫性の原理」や「プロスペクト理論」から、解き明かしていきます。

LINEで解約抑止を自動化している通販企業の事例をまとめました。
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定期コースの解約防止に、効果的な「一貫性の原理」

A「初回お試し価格7日分/980円」

B「定期コース加入で、初回本商品半額」

 

と、広告のオファーをテストした事例を、「「定期CPO」が最も良い、広告の訴求・オファーは?」では紹介しています。

 

CPRで見るとAのオファーが良かったのですが、引き上げ率や定期CPOで考えるとBの方が効率が良かったという結果に。

オファーにおいては、“レスポンス”と“引き上げ”が相反しやすいのは、少し前の発刊となりますが、「通販ニュースレター」第5号でも解説したとおり。

そこで、ヒントになるのが「一貫性の原理」です。

 

「一貫性の原理」とは、自分自身の行動や発言、価値観などについて、一貫したものとしたいという心理が働く現象のことです。

 

「自分がすでにしたことと一貫していたい(そして、一貫していると見てもらいたい)という欲求によるものなのです。

ひとたび決定を下したり、ある立場を取ると、そのコミットメントと一貫した行動を取るように、個人的にも対人的にも圧力がかかります。

そのような圧力によって、私たちは前の決定を正当化するように行動します。」
「影響力の武器」ロバート・B・チャルディーニ

 

この一貫性の原理を活用して、

「定期コースを続けて、健康を保つ」

「トライアル商品を購入するのは、本商品の購入を真剣に検討しているから」

と自ら立場をとるような小さな行動をとってもらうように誘導します。


それによって、お客様は無意識のうちに継続的に買うことを正当化するべく、行動するようになるのです。
 
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コールセンターの会話で、気づかれずにお客様のコミットメントを引き出す

 

「「安いオファーだと、定期誘導率が下がる・・」を解決するために」で紹介した、2回目の定期移行率を10%以上改善した事例が、象徴的でしょう。
広告では、定期コースへの加入を前提に、初回は大幅な割引価格で販売していたのですが、2回目の定期コース移行率が低いのが課題でした。
そこで、初回の受注時にコールセンターで、定期コースでの購入を確認するスクリプトを入れたところ、たったそれだけの工夫で定期離脱防止の効果が生まれたのです。

 

別の事例では、特にシニアのお客様が、定期コースへ入会したことを忘れてしまい、解約率が高いことに悩まされていました。
コールセンターで、オペレーターが受注内容を一つひとつお客様に確認して、「受注内容チェックシート」に記入するというプロセスを踏んだところ、解約率が大幅に改善したのです。

 

これも、記憶が強化されたというのはもちろん、お客様自らが確認事項に答えることで、意識付けがされたのが原因かもしれません。

 

今回はコールセンターでの活用法を紹介しましたが、一貫性の原理にもとづくコミットメントを引き出すためには、他にも「お客様の声を投稿してもらう」や「アンケートで製品の好きなところを回答してもらう」「お友達に紹介して薦めてもらう」などがあります。

 

お客様に、「商品を愛用している」「これからも続けたい」と宣言してもらう、それに沿った行動をしてもらう、そのための方法がないか?

ぜひ読者の皆様も考えていただけるとヒントが見つかるかもしれません。
 
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手札を1枚ずつ切ってお客様の背中を押してあげる

 

購入を迷っているお客様へのトークを紹介したことがありました。

 

「お客様、実は、このお電話でご注文いただきますと、定期初回はさらに500円お値引きさせていただきますよ!」
「大丈夫です!さらに、こちらの定期コースにはお約束回数はございませんので、○○様ののペースで無理なく続けていただけますよ」

 

ちょっとした特典でも、一度に伝えるのではなく、お客様との会話のなかで、手札を1枚ずつ順番に切っていくのが原則。

これがお客様の背中を押してあげる効果があり、受注につながりやすいことが知られています。
「ザッツ・ノット・オール・テクニック」と言って、テレビ通販でも使われるのはおなじみですが、この経験則をもっと活用するためにヒトの心を動かすための「原理原則」をたどっていくと、「プロスペクト理論」に行き着きます。

 

プロスペクト理論とは、人間が既知の確率を伴う選択肢の間で、どのように意思決定をするかを説明する理論です。

 

ヒトは、基準値よりプラスの領域では危機回避的になり、基準値よりマイナスの領域では、危険追求的になること。
また、プラス・マイナスの絶対値が大きくなるほどその傾向が強まること。

ヒトは、それが同額であれば、基準値よりプラスであった満足度より、マイナスであった悔しさの方が大きいこと、などが知られています。
 
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「プロスペクト原理」を応用して、特典の嬉しさを増やすテクニック

 

このように記述すると難解に聞こえますが、通販での実践につながる1つの法則を紹介すると、「得になること」は、同じものを1回でいっぺんにもらうより、3回に分けてもらった方が、嬉しさは増すのです。
(逆に、損することは、一度に聞いた方が苦痛が少なくなります。)

 

「3万ドルのボーナスはうれしいが、1万ドルのボーナスの3倍のうれしさではない。

つまり、3万ドルを1回にまとめてもらうより、1万ドルのボーナスを3回別々に(すべて予想外のときに、少しずつ聞を空けて)もらう方が、ずっと喜ぴが大きいのだ。

ボーナスを3回もらえば、3回喜べる。こうした予想外の収入の金額が実際にいくらかは、思うほど重要でもなく、足し算されるものでもない。」
(「プライスレス必ず得する行動経済学の法則」ウィリアム・パウンドストーン)

 

「決済方法を変えるだけで、定期継続率が1.5倍以上に」で紹介している、定期コースの節目にプレゼント特典をつける時のテクニックも、この原理に則していると言えるでしょう。

 

3回目の定期お届けでプレゼント特典を付ける場合に、2回目お届け時の梱包物で「次回はプレゼントがあります。」と告知してあげますが、プレゼントが何かは秘密にしておきます。

 

そうすると、お客様にとっては2回目ではプレゼントの”お楽しみ感”、3回目では“具体的なモノをもらった喜び”と、1つのプレゼントで2回も喜ばせることができます。

 

また、「「割引」vs「おまけ」、レスポンスが高かったのは?」で紹介した、「ワンプラスワン」と呼ばれる演出手法も、この原理を応用しています。

 

パターンA「1個2,000円ですが、2個ご購入で今ならもう1つプレゼント」

とオファーを見せることで、

 

パターンB「通常1個2,000円のものが、今なら3つ購入で33%オフ!6,000円→3,990円」

と告知するより、費用対効果が135%にも改善したのです。

 

ダイレクトマーケティングにおける個別の改善事例も、このように心理学や行動経済学などの観点から洞察してみることで、お客様の心のなかで働いているメカニズムが浮かび上がります。

原理原則から理解すれば、成功事例を別の局面にも応用しやすくなるでしょう。

 

実践と理論の往復、あなたもぜひ考えてみてください。
 
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